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『ハコヅメ』を観ている。
これ、何気ない普通のコミカルなドラマかと思っていたが、どーして、どーして。
傑作である。
まっ、自分の好みに「直球ど真ん中」であるから、そう感じるのかもしれないが。
冒頭の、永野芽郁が犯人を追って商店街を走り回るシーンが、このドラマの方向性を明確に指し示している。
情けない表情で、手をプラプラさせながら走る姿。
全く警察官らしからぬ、ちょっと間違うとあざといと言われかねない仕草ではあるが、「ひよっこ警察官」という永野芽郁の役柄を、明確に印象付けている。
あれ?一体何歳になったんだっけ?
初めて見た時(『こえ恋』)から大分経っている気がするが、この初々しさは何なんだ。
それでありながら、転ぶシーンは、見事!というほどの出来栄えで転んでくれる。
開始1分ほどで、どんなドラマであるのかが、明確に伝えられている。
そして「これ、面白そうだな。」と、ちゃんと視聴者を繋ぎ止めることに成功している。
そしてその後も期待通り、このシーンというか「永野芽郁」をスタンダード(基準点)にして、ドラマが展開して行く。
永野芽郁の演技は、「こういう時にはこーゆー演技」というのが、1mmのブレもなく、ピッタリと出来ている。
特に自分の個性を主張するわけでもなく、シーン、シーンに見合った演技を淡々としているのだが、そもそもの表情が豊かで魅惑的であるのため、極端に眉をしかめたりなどしなくとも、観る者にその心情がありありと伝わる。
演出もそれに倣っている。
辞表を出そうとする瞬間にいつも邪魔が入るという、お決まりのシチュエーションだが、無理にそれで笑いを取ろうとはしない。
そこでついつい力が入ってしまうと、オーバーアクションになってしまい、コントの様になってしまいがちなのだが、「無理に笑いを取らない」と言う余裕が、観ていて気持ちの良い仕上がりになっている。
「だったら、そんなシチュエーションはいらないんじゃないの?」との指摘も、そのお決まりの要素を入れることで、コメディーであることが明確に伝わるし、そこを大袈裟に演出しないことにより、コント風のコメディが苦手な人にも「このドラマはコント風のドラマではありません」と伝えていることになる。
それに、「爆笑」すらしなかったとしても、それはそれでちゃんとその度に「にっこり」ぐらいはしている。
そして何より決定的なのは、そのお決まりのパターンを採用することにより、リズムが生まれ、ドラマがテンポ良く進んで行く。
二人のセリフがシンクロするシーンも、あえてそれを強調することなく、ひょっとしたら見逃してしまう人がいたとしても、誰もが解るような極端な演出をすることを避けている。
恐らくはそれであっても、視聴者の90%位の人は気付くはずだし、残りの10%の人のために大袈裟な演出をして、「いやいや、そんなコントみたいなことしなくても解るから」と、90%の人が興ざめしかねないリスクを避ける方を選択している。
そして終盤のちょっとホロっとさせるシーンも、そもそも視聴者を号泣させようとの極端なエピソードを入れることなく、ちょっと良い話に抑えているのも、このドラマのテイストにマッチしていて安心出来る。
永野芽郁が瞳をウルウルとさせながらも、無理に涙を流させない演出がまた、とても好印象だ。
役者に涙を流させ「はい。ここは泣くシーンなんですよ。」と視聴者に訴えるのは、視聴者をバカしているのではないか?との配慮が行き届いている。
そう言った意味からも、このドラマの主役には永野芽郁が必要不可欠であったし、永野芽郁なくしてはこんな素敵なドラマが成立しなかったかもしれない。
そして、最大のポイントは、通常シーンはフラットに進めながらも、「やる時はやる!やる時はやれるんだ!どうだーーっ!!」とばかりに、ギャグの上にギャグを何段にも重ね上げた、かつて観たことのない大爆笑のシーンが、ちゃんと入っている。
【本編ノーカット版】「ハコヅメ」絶対に笑ってはいけない“通常点検”!第2話 7/14(水)よる10時!【戸田恵梨香&永野芽郁 W主演】【日テレドラマ公式】
これ、すごいのは、各人の仕草や立ち振る舞い、セリフや突っ込みが、それぞけの劇中の登場人物のキャラクターに、ちゃんと即していることだ。
面白いギャグを思いつたからと、無理に誰かに言わせるのではなく、この人数でありながらも、ちゃんとそれぞれのキャラクターなら、そう言うよね、そうするよね、と納得させられる。
永野芽郁のこの状況をやり過ごそうとする咄嗟の行動も、これ、ちょっと思いつかないような気もするが、やってもらえば「うん、ある、ある。」と感じさせる説得力がある。
そしてこのシーン、ちゃんと永野芽郁が今の仕事に絶望する理由を裏付けるという、重要な役割を果たしている。
2話以降も期待大だ。
「通常点検」シーンは、まさか、毎回演るよね?
それに準じた「大爆笑シーン」は、毎回必ずあるよね?
ムロツヨシがちょっと気になるけど、過剰演出のコント風のドラマには、絶対趣旨替えしないよね?
と、プレッシャーを与えておこう。
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