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東京発 24日 ロイターによれば
25日から始まる大手自動車メーカーの中間決算は、主要3社の2007年3月期業績を見通す上での転換点になりそうだ。先行投資が収穫期に入るトヨタ自動車<7203.T>、回復シナリオに期待が集まる日産自動車<7201.T>、先行投資の負担が増えるホンダ<7267.T>と、主要3社の業績の方向性に違いが現れ始めたためだ。
マツダ<7261.T>は欧米での販売を増やして為替メリットを享受する一方で、業績不振の親会社フォード<F.N>の動向が懸念される。富士重工業<7270.T>は、苦戦する北米での販売奨励金の上積みがリスク要因とされる。
<トヨタ:先行投資が一巡、上ぶれの可能性あるが「テキサス・リスク」も>
上半期には、主力の北米での販売台数が前年比15%増となるなど好調だったトヨタ。いくつかのリスク要因はあるものの、下期にもこの勢いが継続しそうだ。
JPモルガン証券の中西孝樹・株式調査部長兼自動車セクターシニアアナリストは、「先行投資が一巡して、負荷が軽くなってきた。カローラやレクサスLSの投入など製品(切り替え)の循環が好転してきており、収穫期に入った」と指摘する。ゴールドマン・サックス証券の塩原邦彦・投資調査部門統括マネージング・ディレクターも「会社側予想では通期の営業利益目標を1兆9000億円としているが、2兆円越えを果たす可能性が高い」とみており、業績が上ぶれする可能性がありそうだ。
ただ、トヨタにもリスクがないわけではない。そのひとつが、下期からライトトラック「タンドラ」の生産を始める米テキサス工場だ。原油高でライトトラックの販売が低調なうえ、タンドラは米ゼネラルモーターズ(GM)<GM.N>の主力ピックアップトラックのT900と真っ向からぶつかるモデル。HSBC証券の杉浦誠司・シニアアナリストは「立ち上げコストが利益を圧迫する可能性がある」と指摘する。
今後の株価の方向性について塩原アナリストは、浮動株調整の影響と世界的な大型ブルーチップ相場で、株価はすでに大きく上昇した、と指摘。「テキサス工場の稼動で材料出尽くしと市場に受けとめられるかもしれない」と述べている。
<日産:回復シナリオでどこまで販売台数を伸ばせるか>
日産は、昨年9月までの販売拡大の反動で、販売台数の減少が続いている。下期には、セントラ、アルティマ、インフィニティG35(日本名スカイライン)といった主力車種を投入して、業績回復のシナリオを描く。
早くもサプライズの期待もある。品質保証費の減少や原材料価格上昇影響の縮小などのコスト圧縮で、中間期に「5―10%程度の減益にとどまればサプライズになる」(塩原アナリスト)。これに下期の新車投入が加わることで「第4四半期から2ケタ増益に転じる可能性がある。市場の見方も、日産が通期目標を達成するとの見方に変わってくる」と、塩原アナリストは指摘する。HSBC証券の杉浦誠司・シニアアナリストは「(下期の)新車効果による販売奨励金の減少で利益が伸びるだろう」と分析している。
株価は、販売台数の伸びに影響されるとの見方もある。実際、トヨタは9月にアメリカの販売台数で25%増を達成したことを受けて株価が上昇した。杉浦アナリストは「トヨタのケースは、実際には全面改良を控えたモデルに販売奨励金をつけて在庫を一掃したに過ぎなかった。それでも市場に好感された」と述べた。
<ホンダ:供給頭打ちで踊り場へ>
原油高の影響で、北米で小型車「シビック」などの販売が好調のホンダは、07年3月期に向けて北米での乗用車の生産能力不足と、主力車種の販売が伸び悩むライトトラックで苦戦しそうだ。
ホンダの北米生産は、ライトトラック向け工場の稼働に余裕があるものの、乗用車向け工場で生産がひっ迫しており、供給が間に合わず販売が頭打ちになってきている。このため、ホンダの業績はトヨタほどの伸びを見せず、下期になると前年同期比での成長が難しくなる可能性もある。
このためホンダは、北米の生産体制を見直して、シビックを年6万台程度、増産する計画を24日打ち出した。発売から数年を経過したオデッセイなど主力ライトトラックのための販売奨励金は高止まりしているため、杉浦アナリストは「(古い)ライトトラックを無理して売るよりも、発売から2年のシビックを増産したほうが投資コストの回収が早まるため合理的」と評価する。ただし、この増産体制が稼動するのは07年4月以降になる。
ホンダは、10年までに世界販売台数を拡大していく計画を打ち出している。そのためには、車両の開発やディーラー網の整備などに費用が必要で、利益の圧迫要因になる可能性がある。こうした先行投資が効果を表してくるのは07後半―08年ころからだと、中西アナリストは見ている。
<マツダ:為替の好影響の影にフォードのリスクも>
マツダは、新車投入による欧米の販売台数増加や為替差益の増加で、第1四半期の営業利益が前年同期比29.7%増と躍進した。塩原アナリストは「通期計画を上方修正してくる可能性が高い」と予想する。
ただし「北米での新型SUVの販売が我々の予想より若干スロー」(塩原アナリスト)なため、販売動向に注意が必要だ。親会社のフォードのリストラ策がまだ足りないとの見方もあるため、杉浦アナリストは「マツダへの悪影響があるかもしれない」とのリスクを挙げている。
<富士重工:北米で苦戦、為替リスクも限定的か>
第1・四半期決算の営業利益を前年比96億円増の108億円と大幅に増加させた富士重工だが、販売が苦戦している北米で「在庫処分のために販売奨励金を積み増すリスクがある」と杉浦アナリストは話す。すでに110円で為替をヘッジ済みのため「経常利益で下方修正する可能性がある」と中西アナリストは指摘している。
(ロイター) - 10月24日19時32分更新
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