2021年6月17日、産経新聞のネットで夫婦別姓に関する記事が掲載されていた。夫婦別姓に関して周りでは賛成論しか聞かないので、夫婦別姓に疑問を投げかけたこの記事は印象的だった。
『選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に』 八木秀次×小島新一・大阪正論室長
〇家族名が消える
小島 選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。
八木 選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。選択ができるという仕組みです。一見よさそうに思えるんですよ。
小島 自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。
八木 ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。
小島 家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。
八木 「氏名」の性格が根本的に変わるんです。氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。
小島 たまたま上の名が同じということですね。
八木 ええ。たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。
〇3つの姓から選択も
八木 別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。
すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。
複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。
小島 社会が大混乱しますね。
八木 自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。
【プロフィル】やぎ・ひでつぐ 昭和37年生まれ。早稲田大学法学部卒。同大学大学院政治学研究科博士後期課程認定退学。高崎経済大学教授などを経て麗澤大学国際学部教授。専門は憲法学。平成14年、正論新風賞受賞。
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