きっかけはイヤーフォンのシリコンパッドが壊れたことだった。
だから、今週は毎日夜更かし。
忙しいときに限ってなかなか寝られないようになるなんて。
頭をいっぱいに使った日中を、23時に食べる夕飯をやり過ごすために、
2時間や3時間は必要だ。だから寝れない?
いや、あくまできっかけはイヤーフォンのシリコンパッド、しかも右耳だけが壊れて。
代わりを手に入れるために、深夜のお買い物はAmazon。
4つ星半がついたパイオニアの密閉型は1000円台。
クリック一つで、仕事から帰宅した同じ日にもう私のものです。
安くてでっかい黒のパイオニアちゃん。さっそく頭に乗っけて、YOU TUBEをあけて、
それほど選択肢はありません。
考えてみれば、音楽も歌も聴きませんもの、私。
必要がないといいましょうか、体に音楽が馴染まないんです。
名かけっこー高橋尚子さんは、シドニーのレース直前に好きな音楽を聴いて躍ってた。
リズムに闘争心がわき上がるらしい。
私も出始めのMP3を10年前に買ったりして単純風景の皇居ランをやり過ごそうともしたけれど、
どうも馴染みません。
耳をずっと外に向けて風の音を聞いていたほうが、リズムに乗れます。
走ることがリズムになる。
でも、リズムが体を動かしてはくれない。
体質、脳質だな。
そんなわけで、ドライブしていても、机に向かっていても、音楽がほしくなることはほぼ皆無です。
手持ちの音楽がないと、たぐり寄せるのは遠い記憶、日々から目を背けるために音楽を聴いた年の頃になりました。
山口美央子「恋は春感」、町田義人「戦死の休息」、カーティスクリークバンドのハーモニカ。
1000円そこそことはいえ、新しいパイオニアちゃんは、とてもクリアな音質で、ステレオの分離もくっきりメリハリがついていて
すっかり曲に引き込まれました。というより、あのころに。
何故それほどに、あのころ、という言葉に惹かれるのか。
良い時代だったからなのか。
寄る辺ない自分しかない年だったからなのか。
曲に合わせて問答集が駆けてくるとますます眠れなくなります。
杏里もいっちゃいましょ。眠れないんですから。
そうそう、寄る辺がなかったんですね、高度成長で何でもあって、ついでに夢と希望もあるはずで。
あるはずだからと言われて、それをつかむための努力といわれることをして、でも決して自分の夢と希望では無かったことを知ると
自分はいなくなります。
そんな無為を過ごした10代と、いまは朗らかに言えてしまうのが寄る年波なのですが、
振り返る自分がないと、時代に寄り添ってみたくなるというのに気づくのも年のせいなのでしょう。
中学生でフォークギターを弾いてたI野くんは「22歳の別れ」で、「神田川」ですから。
わかってんだか分かってないんだか、だけど確実にその曲の気分でいたのを思い出します。
1964年生まれの夜更かしは、空っぽの中身を埋めようとして、一生懸命時代という無主物にすがった
若い自分と横に並ぶ時間です。