犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

誤用論

2013-09-20 23:23:40 | 言葉

 次は、韓国で出ている日本語の教材にあった例文です。

この本は、説明が複雑ではない。

 誤用ではないけれども、ちょっと不自然な感じがしませんか。

 な形容詞(形容動詞)の否定形の例文です。「複雑だ」という「な形容詞」の否定形は「複雑ではない」で正しい。でも、ふつう日本語でこういう言い方はしないですね。

この本は、説明が簡潔だ。

とか、もっとシンプルに

この本は、説明がわかりやすい。

というんじゃないでしょうか。

 これ、韓国語に直訳すると、非常に自然な表現になります。

イチェグン ソルミョンイ ポクチャッパジアンタ

 たぶん、韓国人が韓国語で例文を考えて、それを日本語に直訳したんでしょう。

 では、これはどうでしょう。

だれかから必要のないものをもらったとき、日本人は直接「要らない」とは言わない。「結構です」と言う。

 なんか、「直接」の使い方がおかしいなあ。ふつうは、

「私がかわりに渡しておきましょうか。」
「いえ、自分で直接渡します。」

のように、人を介してではなく、自分が、というときに使うことが多いと思います。さきほどの例は、「直接」ではなく「直接的」を使って、

「要らない」という直接的な表現は使わない。

としたほうが日本語としては自然。しかし、これもまた、韓国語に翻訳すると実に自然な表現なんですね。

 韓国人がよく使う表現に、コミンハダというのがあります。コミンを漢字で書くと苦悶。でも、意味は日本語の苦悶ほどに強くなく、「悩む」と訳すことが多いです。

 ところが、韓国人は単に「考える」程度のときでも、このコミンハダを使う。
それで、日本語なら

対策を考えてみました。

とでも言うべきところを、

対策を悩んでみました。

などと言ってしまう。
このあたりになると、不自然を通り越して誤用と言っていいのではないかと思います。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スマホの猛威 | トップ | 認知言語学 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

言葉」カテゴリの最新記事