犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国便り~マクチャンとカルビサル

2008-06-01 07:47:48 | 韓国便り(帰任以後)
 出張二日目の夜は会社の人と鐘閣の焼き肉屋。

 袋小路の突き当たりにある小さなお店です。店名は書いていないのでよくわからないのですが,路地の入口にある看板には「ファンソ(黄牛?)」とある。これが店名でしょうか。

 売り物はソ・マクチャンです。大邱出身のご主人は

「ソウルで牛のマクチャンを出すのは滅多にないよ」

と自慢します。

 このマクチャン,日本の朝鮮語辞典を引くと「盲腸」とありますが,食材としてのマクチャンは違うみたい。ネイバーで検索すると,マクチャンはマチマク・チャンジャ(最後の腸)の略。豚と牛があって,豚のほうは大腸の肛門に近い部分だから文字通り「最後の腸」です。ところが牛のマクチャンは第4番目の胃のこと。このあたりは複雑です。

 さて,食べ方は,すでに茹でて火の通ったマクチャンを炭火で炙って食べるのですが,この店はタレに特徴がある。落花生をすりつぶしたものをベースにしたこってり系のタレに,お好みでチョンニャンコチュ(辛い青唐辛子)の刻んだものを入れます。

 カルビサルもおいしい。こちらはポン酢のようなあっさりしたタレでいただく。

カルビ」というのは韓国語であばら骨(肋骨)のこと。「サル」は「肉」です(→リンク)。ですからカルビサルを直訳すると「あばら肉」になります。

 ただ焼き肉屋では「カルビ」と「カルビサル」を使い分ける。たんに「カルビ」といえば「骨つき」,「カルビサル」のほうは「骨なし」です。そしてカルビは高級な「韓牛(ハンウ)」が多く,カルビサルのほうは廉価な輸入肉が多い。値段は後者がずっと安い。

 この店のカルビサルは,ごま油風味のヤンニョムで軽くあえたものが出てきます。それを炭火で焼くと独特の風味が出て,とてもおいしい。

 パンチャン(ただで出るおかず)としてポンテギが出るのも珍しい。連れの中国系日本人は,

「中国でも子どものときによく食べました」

と言ってなつかしがっています。もう一人の韓国人と競うように食べて,おかわり(無論タダ)までもらいました。

 大衆的なお店で安くてうまいということで,私のお気に入りの一つだったのですが,今回遠目に壁のメニューを見るとマクチャンが3万ウォン,カルビサルが2万4千ウォンと,いい値段をとっています。

(ずいぶん上がったなあ,前はこの半分ぐらいだったのに…)

 韓国も狂牛病の騒ぎで米国産牛肉の輸入を中止していると聞いていましたが,その影響で値上がりしたのでしょうか。

 4人でマクチャンとカルビサルをそれぞれ2人前,それにシビールとチャミスルで,計算(お勘定)します。

「6万2千ウォンですけど,6万ウォンにしときますよ」

(?? 安いぞ!)

 あらためて壁のメニューを見直すと,マクチャンもカルビサルも「2人前」の料金だったのでした。

(おかしいと思ったよ)

 牛肉の焼き肉を食って,酒を飲んで,一人1万5000ウォンというのは大満足です。

 店を出ると,鐘閣からホテルのある明洞への道がやけにものものしい。戦闘警察(機動隊)のバスが並び,制服を来た隊員たちが整然と隊列を作っています。

 そういえば,前日の夜,ミョンドンで街頭デモがあり,タクシーが拾いにくかったのを思い出しました。

(今日も何かあるのかなあ…)

 あとから知ったのですが,このところソウルでは連日「米国産牛肉輸入再開反対」のロウソク集会と街頭デモが行われていたそうです。

 特にこの日は,われわれが焼き肉屋を出てまもなく,鐘閣周辺で街頭デモ行進が行われ,市民3500人が参加した。道路を占拠したデモ隊を解散させようとした機動隊とデモ隊が衝突し,負傷者,気絶者が出た。翌朝のテレビでトップニュースでした。

 その模様の一部は,こちらの記事で映像が見られます(→リンク)。

 畜産農家よりも,危険な牛肉の流入を危惧する市民団体が中心になっているのでしょうか。学生が多いところを見ると,いわゆる反米デモの一種かもしれません。

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