犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

金正浩

2008-10-11 10:06:45 | 韓国雑学

 韓国に行くと財布が厚くなる。

 急に金持ちになるはずもなく,たんに1万円を両替すると,10枚になっちゃうからです。

 韓国の最高額紙幣はいまのところ10000ウォン。これは韓国の人たちも不便に感じているのでしょう,高額紙幣発行の話は前からあり,やっと実現することになっていました。

 ところが…。

10
万ウォン札発行計画ストップ(朝鮮日報→リンク

その理由は「独島がない」ことなのだそうです。

 韓国政府が来年初めに予定していた10万ウォン(約7400円)札発行計画を暫定的に中断することが7日、明らかになった。10万ウォン札の裏面には、朝鮮時代に金正浩(キム・ジョンホ)が作製した「大東輿地図」が印刷されることになっていたが、この地図には独島(日本名:竹島)が描かれていないため、これを描き入れるかどうかをめぐり激しい論争が起きているためだ。

 大東輿地図というのは,朝鮮時代末,金正浩(キム・ジョンホ)という民間人が作った全国地図。一人で全国をくまなく周り,当時としては相当な精度の地図をつくりあげたもの。現存している地図は,文化財になっている。

 ところが,そうした文化財について,

「新紙幣に印刷される大東輿地図には独島を描き入れるべき」,つまり文化財を改竄しろというとんでもない意見が出ている。

 ま,そんなことを言う人もいるでしょう。

 でも,政府はそれを一蹴するどころか「3カ月以上も論争が続いて」いて,「政府としては、どうにもしがたい状況だと判断、図柄問題についてはっきりとした結論が出るまで10万ウォン札の発行計画を暫定的に中断することを韓国銀行側に要請」しちゃったというから,驚くほかありません。

 ところで,この金正浩なる人物,韓国では偉人扱いで,小学校4年生か5年生の国語の教科書に,「伝記」が載っていました。
10数年前の話ですから,今はどうかわかりません。それを読んで私も興味をもち,少し調べたのですが,その結果わかったことは「生没年さえ不詳で,ほとんど資料がなく,その生涯は謎につつまれている」ということ。

 ネットの百科事典をみても,記述は簡略(→リンク)。

「彼の著作活動は19世紀朝鮮の国土情報を集大成し構築し体系化したという点で国土情報化の重要性を提示し実践した先覚者だった。彼の死亡については,「大東輿地図」を大院君に捧げたところその精密さに驚いた朝鮮の大臣たちが国家機密を漏洩したという罪にきせられ獄死したという説がある。しかし彼が作った地図と地理書が保存されていること,彼の後援者だった実学者チェ・ハンギと,高官を歴任したシン・ホンなどが連座させられたという記録もない点などから,信憑性は低い。」

 伝記では,上の話が「実話」とされているのはもちろんのこと,「娘といっしょに全国をかけずりまわって測量する話」まで生き生きと創作されており,伝記作家の想像力に舌を巻きました。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10年振りのウォン安 | トップ | ノーベル賞 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (だばだ)
2008-10-13 03:59:48
はじめまして

>その理由は「独島がない」ことなのだそうです。

思わず微笑んでしまいました。
意地悪く茶化して、「ムー大陸が無いからこの地図は認められない」とか?

日本で言えば、伊能忠敬を筆頭に、間宮林蔵や松浦武四郎とか、出自なり資料なりが、ある程度残っていてこそ研究・賞賛・批判の対象になるんでしょうけど

でも解放以前の歴史を韓国の方に問うて、都合が悪くなれば「日帝による搾取…」って始まっちゃうんでしょうし。ん~もどかしいデス
返信する
記録 (犬鍋)
2008-10-13 10:27:53
コメントありがとうございます。

朝鮮時代に関する資料は,ほとんど朝鮮王朝実録のみで,きちんと調べようとすると,結局日本の資料になってしまう。
韓国の学者たちにとっても,「もどかしい」ことでしょう。

チャングムに関しても,「実録」にほんの数行の記載があるだけで,あれだけのドラマができあがっている。

これによれば,

ttp://www.chosun.com/culture/news/200609/200609280479.html

金正浩は,自分で測量をしたわけでなく,当時あったいろいろな地図を,書斎で切り貼りしたのではないか,という主張をする学者もいるようです。
返信する

コメントを投稿

韓国雑学」カテゴリの最新記事