クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

洲崎遊廓と永井荷風~木場散歩・5

2016-04-30 | クリン江戸散歩

 すさき(洲崎)神社の入り口で、とつぜん・チットが、

永井かふう(荷風)の本を

取り出して、

こう 

言いました。


 「ここから、東陽町方面にかけては、昔、有名な洲崎遊廓ってのが

あったらしいのよ

ここらで働く男たちが

行きつけて、

一時は、吉原と肩を並べるほど

盛況だったらしいわ


 荷風が『深川の唄』で、こう書いてるの。・・・」


「夏中洲崎の遊廓に 

 燈籠の催しのあった時分、

 夜おそく舟で通った景色をも、

 自分は一生忘れない。

 苫のかげから漏れる鈍い火影が、

 酒に酔って喧嘩している裸体の船頭を照らす。

 川沿いの小家の裏窓から、いやらしい姿をした女が、

 ほりものをした男と酒を呑んでいるのが見える。

 水門の忍返しから老木の松が、水の上に枝を延ばした庭構え、

 燈影しずかな料理屋の二階から 

 芸者の歌う唄が聞える。

 

 月が出る。

 

  倉庫の屋根のかげになって、片側は真っ暗な河岸縁

 を

 新内のながしが通る。

 水の光で明るく見える板橋の上を 

 提灯つけた車が走る。

 それらの景色をば

 言い知れず美しく悲しく・・」




 「戦後は、『洲崎パラダイス』に名前をかえて

栄えたみたい

今はもう、

当時の建物ひとつふたつしか

のこってないみたいだけど、

ちょっと、

行ってみない?」 (チット)


 「ダメ 今日はこれから、こてん(個展)に行くんだよ!」


(つづく)

 







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