これで休み時間に寝たくもないのに寝たフリしなくて良いんだ。
いやぁ、停学もなってみるもんだね。
そして相変わらずなフテブテ君とアホな話しをしながら、僕らが社会科見学に向かった先は・・
とあるパン工場。
あのう、ここ小3の社会科見学で来たんですけど。
「なぁ」と僕はフテブテ君に言った。「俺ここ小学生の時に来たわ」
「マジか。パンもらえた?」とフテブテ君。
そうして200人近い高校1年生相手に、やけにテンションの高い工場長がパンを作る過程を説明してゆく。
もちろんほぼ誰も真剣に聞いてやしない。
そんな僕らの態度を見て担任の女教師が吠える。
「ねぇ!あんたたちっ!ちゃんと工場長の話しを聞きなさいよ!!ほら!イースト菌よ!ほら見なさいよ!あんたたちィィィ!」
いちばん工場長の邪魔をしてる女教師。
そうこうしていると、遥か後ろに他の学校からの見学生が見える。
そう、たくさんの小学生たちが。
見学時間をズラしてるものの、やはり折り返して戻る時に接近してしまう。
明らかに我々の個性的な容姿を見て恐怖を抱いてる小学生たち。そして完全に警戒体勢に入る引率の先生たち。
恐怖、警戒、敵意、蔑み、そういった目で見られるのは日常茶飯事だし、もちろん自業自得だし、もうとっくに慣れてしまっているが、こういう風に団体として見られると少し恥ずかしいと思った。
そんな雰囲気のなかフテブテ君が問い掛ける。
「なあ、さっきから気になってんだけど」
まぁこうも悪人扱いされると気になるよな。
「パンもらえんのか?」
おまえもう帰れ。
もはや見世物と化して出口を目指す。
女教師が近くに来た時に聞いてみた。
「なんでパン工場なんですか。小学校で来る場所ですよ」
「小学生でパン工場なんて、むしろ早いと思うわよ。小学生でパン作ってる過程見たって、美味しそうだとかそんな客観視しかできないでしょう。でもアンタたちくらいになれば役に立つわよ。パン工場で働くときとか。」
働かないから。
そうしてようやく出口に着く。
出口では工場長が満面の笑みで生徒たちにパンを配っている。
フテブテくんもパンを貰ってはしゃいでいた。
そんな光景をなんとなしに見ていると、女教師が僕の横に立った。
「アンタ小学生の集団から見られて恥ずかしいと思ったんでしょう」
「そんなことないス」
「中途半端ね」と女教師が言った。
「中途半端?」と僕は聞き返した。
「そうよ。少なくとも他の連中は恥ずかしいなんて思ってないわ。それが正しいとは言わないけどね。ただ悪いとさえ気付かず変えない人間、悪いと知りつつ変えない人間。私は後者の方が人間として悪いと思うわ。まぁ少なくとも後悔しないように今を生きなさい。」
痛いとこをつきやがる。
半年前なら疑問にさえ思わなかった。
自分の弱さ、自分の愚かさ大人の強さ。
それを、とある先生が僕に諭してくれたのだ。
先生…
「おーい」とフテブテ君が僕の名を呼びながら近づいてくる。
「ほら」と言ってフテブテ君は僕にパンを差し出した。