無知の涙

おじさんの独り言

僕の夏休み 4

2018年07月23日 | 入院

入院3日目突入。

病院の朝は早い。朝6時に看護婦さんがやってきて、血圧と体温を計り、便通の状態を確認される。

体温はだいたい36度前後。血圧は125~130、70~80。

一回だけ、体温37度5分、血圧140というスコアを叩き出してギョッとしたけど、特に何も言われなかった。
不思議。


そろそろ退院したい。主治医が問診に来たので、仕事もあるしそろそろ退院したいんですが、と言ってみたら、まだ早いと一蹴。少なくとも今週は退院できません、とのこと。

マジですかー。こんなちょっとしたアクシデントみたいな怪我でもそんなに入院しないといけないのか。

主治医がそういう以上、こちらとしては従うしかない。ただスマホだけはなんとか家から持ってきたい。

誰か頼めるような人はいないの?と先生。

いない。ぼっちなので。

こちらも割りとしつこく食い下がり、ちょうど昼くらいに点滴の交換があるので、1時間くらいなら、と許可がおりた。

助かった。外出許可申請書をしたため、点滴が外されたと同時に病院を出る。

背中に刺さってる痛み止めは外して貰えなかったので、変なボトルが首から下がってるという出で立ちではあるが、そんなもん誰も見てないだろ。

タクシーで行っても良かったが、久しぶりに外へ出た解放感に流され電車で行くことに。

とにかく暑い。ずっとテレビを見てるしかないので、この酷暑については嫌というほど知らされているが、熱風がすごい。ガンダムの次回予告の後に必ず流れる決めセリフ「君は生き延びる事ができるか?」がマジで日常的に使われるような世界になってきたな。

自宅まで駅ひとつ、徒歩10分程度。帰り道にあるセブンでアイスコーヒーを買って、2日ぶりに自宅に戻る。

腹が痛すぎてクーラー掛けっぱなしで家を出てしまったが正解。ひんやりした部屋でアイスコーヒーを飲み、タバコを吸う。うまい、うますぎる。2日前まで当たり前にしていた日常。健康って大事としみじみ感じる。いま子供が生まれたら健康と書いて、たけやすとか付けちゃうレベル。

そんなエクストリームな妄想をしている場合ではない。あまり時間はないのだ。バッテリーが切れて死に絶えたスマホを拾い、着替えを持ち、忘れてはいけないPSビータもカバンに入れる。この入院生活の暇さを打開する肝心要の切り札。

いっそプレステ4を持っていければ怖いものなし無敵状態だが、あまり居心地良くなっても困る。足りないくらいにしておかないと。満喫してるじゃねーか!みたいに見られるのもアレだし。

そして足早に病院へ戻る。長めに歩いてみて分かったが、けっこう傷が痛む。早足で行きたいのだが、痛みに耐えかねて、ついゆっくりめのスピードになってしまう。

痛み止めを絶えず注入していてこの痛さなんだから、痛み止めしてないと相当痛いだろう。確かにまだ退院は早いのかもしれない。

汗でビショビショになった外出許可をナースステーションに出し、病室に戻る。

二人部屋だったのだか、もう一人の方が退院されたようで、一人部屋になっていた。








ぼくの夏休み 3

2018年07月22日 | 入院

小腸切除。翌日、目を覚ました僕の目の前に置かれた書類にはそう記されていた。

切除?

こう書かれると何やら小腸の全てを失ったようにもとれるが、一部切除だよね?

内装解体と内装一部解体ではだいぶ違う。


そんなことより、スマホがないことに大変困ったが、同レベルで困ったのが喫煙場所が皆無なこと。敷地内全面禁煙。

マジかよ。

吸えませんと言われて、はぁそうですか、と納得できるのなら、こんなご時世になってまで喫煙などしてない。

地下から外に抜ける通用口があったので、そこで吸ってみる。

病院のパジャマ姿で、右手は点滴のガラガラを掴み、首からは背中に刺さってる痛み止めの容器が垂れ下がっているという、どこからどう見てもザ・病人という姿で。

異様な異人。

もちろんソッコーで看護婦さんがスッ飛んで来てこっぴどく叱られる。

病人という自覚はあるんですか?と看護婦さん。ある。こんな管だらけの常人がいるものか。自覚はしている。だからタチが悪い。


とにかくこの姿では目立ちすぎる。タダでさえ必要以上に目立つのだ。

まずパジャマを何とかしなければ。汗でベタベタなのでという理由で私服を着用することに成功。

残る問題はこの点滴だな。これを引きずっている時点で何しててもアウト。

こんなのガラガラした奴が駅前の喫煙所に現れたら、なんかヤバいやつ登場しましたけど!みたいな感じで罪のない労働者諸君たちをビックリさせてしまうに違いない。

かくなる上は近めの敷地外でわりと堂々と普通に吸うしかない。

そこまでして煙草を吸いたいか、と言われるかもしれないが、何も自分の欲求を満たしたいだけでやってるわけではないのだ。

これは喫煙者を簡単に阻害し、安易に吸わせなきゃいいじゃないという手段を取る人たちへの挑戦状なのだ。遊びでやってんじゃないんだよぉっ!

でもまぁ今回はこれくらいで手を引いてやろう。あの看護婦さん超こわいし。

ああいう人をデキの悪い猿か何かみたいに怒る人を見てると、とある身内を思い出してしまう。

まだ退院日もいつになるか分からないのに、目の敵にされて看護婦さん全員から敵視されるなんてゾッとしない。もう日常やん。

俗世から切り離されて入院してるときくらい、せめて心安らかに過ごしたいものだ。








ぼくの夏休み 2

2018年07月21日 | 入院

謎だらけの診療を終え、なにか薬出すかい?と聞かれる。

それこちらがイニシアチブを取って良いものでしょうか。

とりあえず痛くて寝られないという事態は避けたいので、痛み止めをもらう。

帰宅して痛み止めを服用するが、どうにも良くなる感じはない。良くなるどころか朝を迎える頃にはだいぶ痛みが増してる。

仕方なく仕事を休み、近くの内科へ行くことに。開院したばかりで人がいなかったのですぐに診てもらえた。

診てシコリを触った瞬間に、これダッチョウだね、と先生。

ダッチョウ??俺がやります、俺がやります、いや俺がやります!どうぞどうぞ、のあれ?

完全に頭に?マークが着いてる僕に若干引きながらも親切に字にしてくれる先生。

脱腸。

一瞬、脱糞見えてしまうのは普段の環境のせいなのか・・・

更に分かりやすく図解にしてくれる。

穴があり、そこに腸が入ってしまっているシンプルな図。昨日の最先端医療より100倍分かりやすい。

で、この穴ってなに?誰にでもある穴なの?

肥満体になるとこういう穴ができたりするんだよ、と先生。

確かに太り始めて出べそになった気がしたが、よもや穴が開いていたとは。

そのマクー空間に囚われた腸が出てこない。このまま出てこないといずれ血液が流れなくなり、腸が腐って千切れて、汚物垂れ流しで感染して死亡。そんな未来予想図。い、いやすぎる。

すると、おもむろにそのマクー空間を力任せに押し始める先生。

おげぇぇぇ!

「うーん、昨日ならまだ押し戻せたんだけど、完全にキャッチされちゃってるね。こりゃダメだね」と先生。そんなポケモンみたいに。

こりゃダメだね・・・ダメだね・・ダメだこりゃ・・

俺のマクー空間を最先端医療機器で覗きながら、顔に見えるね!とかのたまってたアイツの顔が浮かぶ。

ガンジーでも伝説のスーパーサイヤ人に目覚めるレベルの怒りを感じたが、でもあの時点で何かヤバいという事は自分自身で分かってたわけだし、医者もあんな調子で全くアテにならんと分かってたんだから、そのままの足でセカンド・インパクト的なアレをすべきだったのだ。最近よく聞くやつ。

まだ時間はあったのだ。人のせいにする前に猛省すべきである。でも病院って、運要素も結構あるよね。


そして病院を移り、そのまま手術。

よくドラマで見るランプが点灯する部屋に通される。担当の方がお二人待ち構えていて挨拶される。そのまま色々な手順の説明が始まる。

あれ?なんか今生の別れみたいな感じになってきた。誰にも何の連絡もしてないけど、考えてみればこのまま一生目を覚まさない可能性もゼロではない。

そんなこと考えてるうちにベットに寝かせられ、麻酔を打たれ、アレヨアレヨと深い眠りへ。

人が死ぬときって意外とこんな呆気ない感じなのかしらん。

次の瞬間には名前を呼ばれて目を覚ます、というよく見聞きするシーンそのままの展開。

えらい子供の頃に寝た次の瞬間、まどろむとかそういうグレーな部分が一切ない、本当に寝た次の瞬間が朝!という事があったが、まさにその感じ。

寝かされたまま集中治療室のような所に運ばれた。どうやら今夜はここで1泊らしい。

集中治療室のわりに2、3人同じ空間にで寝てる気配がするので、集中治療室ほどの大袈裟な部屋ではないのかもしれない。

絶えず何かしらの電算機器が動いていて、ピーやら、ペーやら音がする。

常に痛み止めを背中に注入され、腕には点滴。この点滴のお陰なのか空腹感は皆無。いろいろ麻痺してて分からん。

身動き取れず、聞こえるのは機械の音のみ。こんな状況で寝られるものかと思ったが、あっさり寝付く。



入院2日目。
昨日は痛すぎて家を出てくる際にきちんと準備して来なかったことに、今さら気がつく。何も持ってない。

まずスマホがない。もうスマホ依存性は疑う余地のないレベルで、ほんとスマホがないと何もできない。

とりあえず社用の携帯で必要最低限の連絡は済ませる。集中治療室内はもちろん電磁波機器使用禁止なので、室内にいる間は電源をOFFにして、数十分起きに歩いて電話使用可エリアに行って電源を入れなければならない。

まだ身体を動かすと術後の傷がけっこう痛むので、あまり動きたくないのだが仕方ない。

看護婦さんも何度も起きては部屋を出ていく僕を不思議そうに見ている。

仕方ない。夏休みでは、ないのである。


ぼくの夏休み

2018年07月20日 | 入院

43にして初手術&初入院。

18日の昼に腹痛を感じ、放置していても良くならなそうな気配を感じたので近くの病院へ行ってみることに。

どうもヘソあたりにポッコリした感触があるのが気になる。

病院はあまり混んでなく、すぐ順番がきた。中へ通され、症状を説明する。

ただの腹痛みたいな処理をされそうだったので、お腹のシコリを触らせてみる。これなんですかね。

触った医者もビックリして「なにこれ?大丈夫?」

いや、大丈夫じゃなさそうだから来てるわけで。

医者がビックリするってことは、それ相応の覚悟をし始めないとならないけど、それでいいかい?

中から女性が出てきて、唐突にローションを腹に塗りたくり始める。何か説明してくれないと店を間違えたのではないかという錯覚に陥る。

そのヌルヌルの腹に機械を這わしていると、なんと僕の内臓が画面に写し出されてきた。ははーん、さては最先端医療!

そしてその最先端の技術を駆使して腹の中を隅々までスキャンした結果、話題は例のシコリへ。

「ここに謎の膨らみがあってね、ここになんか謎の動脈みたいなのが入ってる感じなんだよね。なんだろう不思議だねぇ」

それはそれは大変不思議な光景でしたとさ。おしまい。って、こらっ。


ナゾナゾ遊びをしてるわけじゃないので、速やかに解答編へ入って貰えると助かるのですが。

「ここに何か管みたいのが入ってるのは分かるんですけどねぇ」と女性。


その管みたいなのがなんなのか見る機械なのではないんですかね。

「ほら、ここなんか顔みたいに見えるね」と先生。

ほんとだ!ここが口で、ここが鼻でこえぇって、小学生か。本当にあった心霊写真のコーナーじゃないので、やめてもらって良いですかね。最先端医療機器が泣くわ。

そうして出た結論が
「この膨らみは追々調べるとして、とりあえず腹痛に関してはよく分からないね」

よく分からないんかい。っていうか肝心なところ後回しにしちやったよ。その膨らみを追及しないから腹痛に関してよく分からないのだと思うのだが、気のせいですよね。