(前回からの続きです)
刻々とラミエルの穿孔が進む。
それはヤシマ作戦スタートの時間が迫っている事も意味している。
そんな中、ヱヴァ初号機専属パイロットである碇シンジは葛藤を続けていた。
集合時間になっても姿を現さないシンジを葛城ミサトが迎えに行く。
「シンジ君?集合時間はとっくに過ぎてるのよ。・・・あなた自分で決めてここに残ったんでしょ?
だったら自分の仕事をきちんとしなさい」
その厳しい言葉にシンジは反応する。
振り返りミサトを見つめるその目は非難の色に満ちていた。
「恐いんですよ。エヴァに乗るのが。ミサトさん達はいいですよ。いつも安全な地下本部にいて、
命令してるだけなんですから・・・。僕だけが恐い目に遭って!」
「ミサトさん達はずるいですよ!」
その言葉を聞いたミサトの表情が変わる。
「……ちょっち付き合って」
そう言うとミサトはシンジ手を引っ張り、エレベータに乗り込む。
そのエレベーターはネルフ本部の最下層に到着した。
「15年前、セカンドインパクトで人類の半分が失われたわ……
今、使徒がサードインパクトを引き起こせば今度こそ人は滅ぶ。1人残らずね」
「聞きましたよその話は何度も……」怪訝そうな表情で答えるシンジ。
「わたし達が、ネルフ本部レベルトリプルEへの使徒侵入を許すと、ここは自動的に自爆するようになっているの。
例え使徒と差し違えてでも、サードインパクトを未然に防ぐ。 その覚悟を持って、ここにいる全員が働いているわ」
そしてその禁断であるEEEのロックがミサトによって解除される。
セントラルドグマ。
そう書かれた部屋の中を見て驚愕するシンジ。
「・・・これって、まさか・・・ヱヴァ?」
シンジの眼前に現れた磔にされ、不気味に光る白い巨人。
これはヱヴァか?というシンジの問いにミサトが答える。
「違うわ。この星の生命の始まりでもあり、終息の要ともなる第2の使徒、リリスよ」
「リリス……」
「そう、サードインパクトのトリガーとも言われているわ。
このリリスを守り、エヴァで戦う。それはあなたしかできない事なの。
わたし達は、あなたとエヴァに人類の未来を託しているの」
それでもシンジには分からない事があった。
それはシンジがヱヴァに乗ってから、ずっと抱いていた思いでもあった。
「そんな辛い事・・・・・なんで僕なんですか?」
「理由はないわ。」
「その運命があなただったってだけ。
ただし、シンジ君一人が命をかけて戦っているわけじゃない。みんな一緒よ」
その言葉を聞いて、シンジはもう一度ヱヴァに
乗ることを決意する。
いよいと作戦開始の時が迫る。
シンジ、レイ両パイロットに作戦の説明が行われる。
砲手の担当は初号機パイロット碇シンジ。零号機パイロットの綾波レイは防御を担当。
一撃必殺でなくてはならない作戦である。
調整が不充分な零号機よりも、修復中ながらも初号機の方が精度の高い狙撃を期待できる、という理由からの担当分けであった。
より具体的な説明が赤城リツコ博士より行われる。
「いい、シンジ君。陽電子は地球の自転、地場、重力の影響を受け、直進しません。その誤差を修正するのを忘れないで。
正確にコア一点のみを貫くのよ」
「どこがコアかなんてわからないですよ」
シンジの疑問は当然であった。
肉眼で見る限りは、コアらしいものが全く見当たらない。
「大丈夫。目標内部は攻撃形態中だけ実体化する部分があるの。そこがコアと推測されるわ。
狙撃位置の特定と射撃誘導の諸元は、全てこちらで入力するから、 あなたはテキスト通りにやって、
最後に真ん中のマークが揃ったタイミングでスイッチを押せばいいの。後は機械がやってくれるわ。
ただし、狙撃用・・・の最終放電集束ポイントは一点のみ。
故に初号機は狙撃位置から移動できません」
「逃げられないって事ですか」
あの凶悪なロングレンジの加粒子砲を目の前に、逃げてはいけないと言われているのである。
「そう」
「じゃあ、もし外れて敵が撃ち返してきたら……」
「今は余計な事を考えないで。一撃で撃破する事だけを考えなさい」
外す=死を意味していた。
そのやりとりを聞いていたレイがリツコに問いかける。
「わたしは……わたしは初号機を守ればいいのね」
「そうよ」
「わかりました」
「時間よ。二人とも着替えて」
プラグスーツに着替える2人。
シンジは力なくレイに問いかける。
「これで・・・これで、死ぬかもしれないね」
それを聞いたレイはシンジに言う。
「いいえ、あなたは死なないわ。わたしが守るもの」
着替えが終わり、出撃準備に入る2人。
眼前に拡がっているはずの街は停電の為に暗い。
ヤシマ作戦の準備に従事している車両が灯す光だけが何かの象形文字のような形を取り、ゆらゆらと動いていた。
そんな中でシンジはレイに問いかける。
「綾波は、なぜエヴァに乗るの」
「絆だから」
「絆?」
「そう……絆」
「父さんとの?」
「みんなとの」
「強いんだな……綾波は」
「わたしには他に何もないもの」
「何もない」というレイの言葉を聞いて、どう答えて良いのか分からないシンジは沈黙する。
そんなシンジの迷いを断ち切るようにレイが言う。
「時間よ、行きましょう」
レイは立ち上がり、そっと呟いた。
「さよなら」
つづく
(ダイジェストじゃなくなってきた・・・・)