年とるとバックとかは置き忘れちゃうから、とウエストポーチみたいなのに財布やらスマホやら全部いれて、そのウエストポーチをまるまるトイレに置き忘れる。
妖怪、いみなし。
すぐさまスマホで蓮田SAの連絡先を調べて拾得物の確認をしたいところだ。が、自分は絶賛運転中なので父にスマホを渡して、蓮田SAで検索して電話してみて、と言ってはみるが、スマホを見つめたまま時間が流れてゆく。
くっそ、アシュラマンになりたい···
車を停めないとどうしようもないので、仕方なく次の羽生で高速を降りる。降りてすぐ車を停めてスマホで検索してると、聞いた方が早いと車を降りる父。
どこに?だれに?
高速の乗り降りするとこの横によくある謎の建物に入ってゆく父。そこ誰かいんの?一生入ることの無い建物だとおもってたけど。
まぁいい、今は捨て置く。とにかく電話を。
蓮田SA、拾得物で検索して出てきた番号にかける。電話に出た女性に経緯を話すと、届いてますよ!とのこと。
奇跡だ!
本人ではないが、落とし主の息子ということ、落とし主である父の名前、電話番号、自分の電話番号、1時間前後で取りにいけることを告げ、礼を言って電話を切った。
ホッとして思わずタバコに火をつける。まぁ、父もそろそろ戻ってくるだろう。
···と思ったが全く戻ってくる気配なし。呼びに行かないと戻ってこないね、一生。やれやれだぜ。
車を降りて、その謎の建物に入ると、受付みたいなとこがあり、父はそこで電話を借りたようである。
目の前で明らかに誰かと言い合ってる。なんで?蓮田SAに届いてるのだから、そんな言い合いなんかになるわけがない。
いやだから!と語気を荒げる父。そこの羽生SAのトイレで!
蓮田な。羽生SAの人に言って話が通じるわけがない。
不毛すぎる。どこにも行き着かない、出口のない会話。俺はあと何分この不毛なやり取りに時間を割かなければならないのか。
受話器を奪い取り、すみませんあったので大丈夫です。申し訳ない、と言って切る。
あったから、と言うと、え?どこに?と父。
もちろん蓮田SAに。
予想以上に上りの羽生ICが遠く、しかも混んでる。戻るまで1時間以上かかってしまった。
再び蓮田SAに入り、車を停めて急いでインフォメーションへ。
受付の女性に、先ほど拾得物の件で電話した者です、と告げる。
あとは父にしかできないやり取り。本人確認、金額の確認。
金額の確認の際にビビったけど20万くらい入ってた。本当によく届いたものだ。届けてくれた人は神様ですか?
ていうかそんなに現金でもつ理由が分からん。今日日どこでもおろせるでしょう。
本人確認済ませて受付の女性に御礼を言ってさっさと去ろうとする父。いやいやいや。受付の女性に御礼を言うのは大事なことだが、本当に御礼を言う相手は届けてくれた方だ。
拾って頂いた方に御礼がしたいのですが、と横から割って入ると、そういうのは良いからと何も告げずに去られましたと女性。金額的にもそれでは気が済まないところだが、調べようもないか、、
じゃあしょうがないですね、と父。
コラ。 まぁでもしょうがないのは確かか。
拾った財布は必ず交番に届けます。いや、これまでも届けてきましたが。改めてそう誓い、蓮田SAを後にした。
2時間のロス。
だが、何も失わなかった。改めて奇跡だ!ただ2時間が過ぎただけだ。2時間前と何も変わってない。寝てたのと同じ。あれ?8時にでて来れば良かったんじゃね?
などと言っても栓無いこと。父もだいぶ申し訳なさそうなので、気持ちを切り替えましょう。ゲームで言うとまだチュートリアル終わったくらいだからね?
とは言え14時30分に到着はだいぶ厳しくなった。運転再開する前にグループLINEで事情を説明した。とても時間どおりには着けないだろう。
着いたらまずお墓へ参ってホテルの流れだが、何時間も待たせるのはさすがに申し訳ないので、ホテル待ち合わせでどうだろうか。
そんなようなLINEの内容への返信は意外なものだった。
大雨であちこち通行止めになっていて、おそらく誰も時間どおりには着かないだろうと。
なん、、だと。