ときどきピザが食べたくなる。
有名なお店の本格的なのじゃなくていい。
そのへんで売っているような普通のでいいのだが、
わたしには体質的に苦手な食材がいくつかあり、
宅配ピザも、出来合いの冷凍品も、
たいていその「禁止コード」にひっかかるので、
なかなか食べることができない。
ピザの台だけを売っているので、
それを買ってくることにした。
ピザソースは要らない。
チーズはできるだけ脂肪分の少ないものを。
台に、うっすらとケチャップを塗る。
塗らなくてもいい。
乾燥オレガノかバジルをぱらぱら振る。
岩塩と黒胡椒を振る。
具には、ごく少量のオリーブ油で炒めた茄子。
エリンギ茸のスライス。トマトのスライス。
最後に、決して多すぎない量のチーズ。
オーブントースターで焼く。
焼きあがったところに、青じそのせん切りを散らす。
あっさりして美味しい。
こういうピザならホールサイズで食べられるのが嬉しい。
台から作れば当然もっと美味しいと思うけれど、
強力粉もイーストも、このために買ってくると、
必ず使い切れず無駄にしてしまうので、
今のところは、ありあわせ簡易ピザの
バリエーションにこっている。
ゆでた小海老に、玉ねぎ、ピーマン、トマト。
ツナ、コーン、ごく少量のマヨネーズに醤油を数滴。
牛乳を加えてふわっと作ったスクランブルエッグ。
チーズと、岩塩と、黒胡椒で。
トッピングにルッコラのスプラウト。などなど。
「ピッツァパイの中味は、なにがいい?
カニかカタツムリかクルミバターだ」
庄野英二の『星の牧場』で、
水車小屋に住む通称「ティンパニ」が、
オーケストラの仲間たちに食事をふるまうシーン。
「イタリア風のピッツァパイ」だとティンパニは言っているが、
2枚重ねた間にペースト状の具が入っていて、
パンとモチのあいのこのようだ、と主人公モミイチは思う。
日本の「おやき」のイメージに近い気もする。
この本に出会ったのは9歳のときだ。
これほど美しいファンタジーは他に知らない。
そして、これほど魅力的な、あるいは不思議な食べ物が
たくさん出てくる本も、他に知らない。