もうずっと前から、玄関の片隅に古い傘が1本あった。
折りたたみではない大きめの長い傘だ。
紫に赤の水玉模様。
わたしが高校生のときに使っていた傘。
サイズもちょうど良く、色も好きだった。
感じのいい焦げ茶色の木製の柄がついていた。
あるとき、うっかり倒したはずみに、その柄が折れた。
曲がり目からぽっきり折れて、まっすぐな握りだけになった。
傘本体は壊れていないので、使って使えないこともないが、
ひっかけ部分がないのは不便だし、見栄えも良くない。
母が傘屋に持っていって、柄をつけ替えてきてくれた。
あの頃はまだそういうことができたのだ。
傘と下駄は同じ店で売っていて、下駄の鼻緒も、傘の柄も、
傷んだら取り替えて長く使うものだった。
戻ってきた傘には、竹を曲げた柄がついていた。
合うのが、これしかなかったのだという。
竹は薄黄色で、妙にてかてかと安っぽく、手触りも悪く、
なんだかオバサンの日傘の柄のようだ。
これなら折れたままのほうがましだった。
好きだった傘がいっぺんに嫌になった。
嫌になったのだけど、なぜか捨てずに持っていた。
その後に買った傘はどれもなくしたり壊れたりしたのに、
この赤い水玉の傘だけ、ずっとうちにあって、
二度の引越しにもついてきた。
先日、玄関の掃除をしたときに見つけて、
ああ、まだあったんだなあ、と手に取り、
ふと開いてみようとしたら、柄がぽろりと折れた。
竹だから中が空洞だ。
長くほうっておいた間にひび割れて腐食したらしい。
今はもう傘の修繕をしてくれる店などない。
これでいよいよ捨てるしかなくなったのだが、
ふと思い出したのが、数日前の新聞にのっていた
「傘の布を利用したバッグ」の作り方。
見れば布はじゅうぶんきれいで、穴もあいていない。
バッグ、作ろう。
説明どおりに、骨から布地をはずそうとして、驚いた。
骨も、布地も、縫いつけてある糸も、ものすごく丈夫なのだ。
最近の傘は骨が柔らかく、簡単に折れたり曲がったりしてしまう。
お気に入りになるほど長持ちすることはほとんどない。
おそらくこれは「修繕のきく傘」の時代の最後のもので、
このあとすぐ「安くて軽い傘」の時代に移っていったのだろう。
これまた古いミシンをひっぱり出し、赤い水玉の生地を縫う。
ばらばらにした三角の布を4枚はぎ合わせて袋ができ、
1枚を半分ずつにして持ち手もできた。
傘として、かれこれ30年以上、うちにいた水玉さんだ。
バッグになって、引き出しにしまえるようになったから、
あと20年くらいは、いるかもしれない。
レジ袋がわりにするにはちょっと小さめだけれど、
なにしろ傘だから水に強いことは保証つき。
さてさて、何を入れましょうか。
折りたたみではない大きめの長い傘だ。
紫に赤の水玉模様。
わたしが高校生のときに使っていた傘。
サイズもちょうど良く、色も好きだった。
感じのいい焦げ茶色の木製の柄がついていた。
あるとき、うっかり倒したはずみに、その柄が折れた。
曲がり目からぽっきり折れて、まっすぐな握りだけになった。
傘本体は壊れていないので、使って使えないこともないが、
ひっかけ部分がないのは不便だし、見栄えも良くない。
母が傘屋に持っていって、柄をつけ替えてきてくれた。
あの頃はまだそういうことができたのだ。
傘と下駄は同じ店で売っていて、下駄の鼻緒も、傘の柄も、
傷んだら取り替えて長く使うものだった。
戻ってきた傘には、竹を曲げた柄がついていた。
合うのが、これしかなかったのだという。
竹は薄黄色で、妙にてかてかと安っぽく、手触りも悪く、
なんだかオバサンの日傘の柄のようだ。
これなら折れたままのほうがましだった。
好きだった傘がいっぺんに嫌になった。
嫌になったのだけど、なぜか捨てずに持っていた。
その後に買った傘はどれもなくしたり壊れたりしたのに、
この赤い水玉の傘だけ、ずっとうちにあって、
二度の引越しにもついてきた。
先日、玄関の掃除をしたときに見つけて、
ああ、まだあったんだなあ、と手に取り、
ふと開いてみようとしたら、柄がぽろりと折れた。
竹だから中が空洞だ。
長くほうっておいた間にひび割れて腐食したらしい。
今はもう傘の修繕をしてくれる店などない。
これでいよいよ捨てるしかなくなったのだが、
ふと思い出したのが、数日前の新聞にのっていた
「傘の布を利用したバッグ」の作り方。
見れば布はじゅうぶんきれいで、穴もあいていない。
バッグ、作ろう。
説明どおりに、骨から布地をはずそうとして、驚いた。
骨も、布地も、縫いつけてある糸も、ものすごく丈夫なのだ。
最近の傘は骨が柔らかく、簡単に折れたり曲がったりしてしまう。
お気に入りになるほど長持ちすることはほとんどない。
おそらくこれは「修繕のきく傘」の時代の最後のもので、
このあとすぐ「安くて軽い傘」の時代に移っていったのだろう。
これまた古いミシンをひっぱり出し、赤い水玉の生地を縫う。
ばらばらにした三角の布を4枚はぎ合わせて袋ができ、
1枚を半分ずつにして持ち手もできた。
傘として、かれこれ30年以上、うちにいた水玉さんだ。
バッグになって、引き出しにしまえるようになったから、
あと20年くらいは、いるかもしれない。
レジ袋がわりにするにはちょっと小さめだけれど、
なにしろ傘だから水に強いことは保証つき。
さてさて、何を入れましょうか。