ここしばらく、青磁の器を紹介してきました。ちょっと気張った物が多かったのですが、日用の器にも青磁はあります。
数日前、酒田の人さんが、青磁釉の上に色絵を施した古伊万里木瓜形皿を紹介されました。
そこで、私の所にも何かないかと探したところ、見おぼえのない青磁小鉢が、ほこりをかぶって隅に転がっていました(^^;)
普通なら、「こんなダダクサなもん、ブログには出せんワ」という品ですが、青磁にかこつけてアップします(笑) 【ダダクサ】(岐阜弁);ありふれた、たいしたことのない、ぞんざい(に扱う)。
江戸後期の古伊万里青磁染付小鉢です。
径 14.0㎝、 高 6.1㎝、 高台径 7.3㎝
内側の青磁釉は濃く見えますが、実際は薄い色です。
見込みには、染付で、鯉の滝登りが描かれています。
染付部分には透明釉がかけられています。
ひょうきんな鯉の顔が面白い。
江戸後期に典型的な蛇の目高台です。数物の日用食器によくみられます。銘は渦福。
側面には、染付で唐草模様が描かれています。あまり丁寧な描き方ではありません。
青磁色は内側よりもさらに薄く、ほんのわずかに青みがかっています。
江戸後期になると、青磁釉と露胎部との境に見られる帯状の錆色はほとんど見られなくなります。
が、目をグッと凝らすと、ほんのわずかに錆色が出ていることがわかります。やはり、青磁が薄いと錆色も薄いようです。
中国では、青銅器の形を模した磁器に青磁釉を施し、玉器の美しさを表そうとしたと言われています。
ですから、尊式花瓶など磁器全体に青磁釉をかけ、独特の色合いの器を愛でるのが基本です。変化をつける場合も、ボディに陽刻、陰刻を施し、青磁釉を通してぼんやりとした模様を愉しみます。
伊万里焼では、早期には、このような青磁の特徴を生かした器を焼いていたのですが、次第に、独自の工夫をするようになりました。青磁釉に染付や色絵を組み合わせるのです。これは日本独特の技法です。
今回の品も、染付と青磁釉の組み合わせです。しかも、内側には濃いめの(といっても薄い)青磁釉、鯉の図には透明釉、外側には極薄の青磁釉という具合に、3種の釉薬を使い分けています。
このように、日用の器にも、創意工夫をこらそうとした伊万里陶工の心意気を感じます。