遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋稀』12.「芝居好旅ず記 へんくつ論」

2024年03月18日 | おもしろ古文書

芝居好き(上欄)と旅好き(下欄)が、自分たちを褒め、相手をやっつける、かけ合い口論です。

横書きブログでは、上欄、下欄の配置をこのまま書くのは難しいので、先回と同じく、上欄、下欄を4分割して載せます。

読者各位で、上下を突き合わせてみてください。最後の欄などは、上下の内容が対になっていて面白いです。

「芝居好旅ず記 へんくつ論」

 

○芝居ずきのいふにハ

・芝居をミれバ物知りになつて 一生のうちに徳多し

・よし野高雄の花も紅葉も しんどなしにミる道具立

・二の替りハかんばんの花やかさ これより芸めく物が有らふか   【二の替り】江戸時代、京坂地方の歌舞伎で、顔見世興行(十一月)の次の興行。十二月下旬より始まった。

・女子の旅やつれ日にやけた 顔にハ三年の恋もさめる

・野道のにハか雨にあふとき 雨具のないは見ぐるしいもの

・山坂のなん所をこうりめし一トツ たよりとは心ぼそいもの(山坂の難所を行李飯一つ頼りとは心細いもの) 【行李飯】携帯に便利なように、竹で編んだ容器に入れた飯。

・幾日も/\川どめやふね乃 風まちたいくつにあらふ(幾日も/\川止めや舟の風待ち、退屈にあろふ)

・芝居へつれて行といへば 子どもがやいとをすへる

・こんにも叶はぬ遠道にうまれも つかぬのにちんばひく人(今にも叶はぬ遠道に生れもつかぬ野にちんば引く人)
  【今(こん)】本日 、【生れもつかぬ】事故・病気などで障害をもった

・なぐさミの旅へ出て馬駕籠ニ よふたもくるしいものじや(慰みの旅へ出て、馬駕籠に酔ふたも苦しいものじゃ)

・船に乗るから小便をめんじる 女子の心づかひは気のどく(船に乗るから小便を免じる女子の気遣ひは気の毒)

 

〇旅ずきのこたへにハ

・可愛子には旅をさせいといふ たとへありてたびハ身の為なり

・ぶら/\した銀箔の置いた月で 須磨あかしのけしきかなふか(ブラブラした銀箔の置いた月で、須磨明石の景色叶ふか)

・長閑なそらに伊勢まいり はるのたのしミハ是が第一(長閑な空に伊勢参り、春の楽しみは是が第一)

・湯治西國大和めぐりの留主見舞もあき内のかね(湯治西國大和巡りの留守見舞も商いの金)

・本あめ水ぶねのきやうぶんに むしろかづくも見ぐるしい(本雨水船の凶聞に、莚かづくも見苦しい)

・芝居でハ弁当くふ間もをしミ まヽより好とはなげいた事(芝居では、弁当喰ふ間も惜しみ、飯より好とは嘆いた事)

・モウ初まるか /\とまつて居る 初日の幕もはてしないもの

・國ゞのめずらしい名物名産 ミやげにすれバ人の賞観

・芝居ゆきの女子ハちょこ/\ はしりする風俗のわるさ(芝居行の女子は、ちょこちょこ走りする風俗の悪さ)

・気ばらしにミる芝居の中で 気をつかして難義するもの

・長い場のまくのしまるまで 小べんこらへる人も気のどく(長い場の幕の閉まるまで、小便こらへる人も気の毒)   

 

コメント (9)
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