今回は、「ちゃつ」とよばれる漆塗りの木皿、6枚です。
径 17.4㎝、高 1.6㎝。明治。
この皿も轆轤引きで、底が少し厚く(3㎜)、縁は1㎜ほどと薄くなっています。
古い木箱(明治○○年の箱書き)に入っていました。箱はどこかへ紛れ込んで見あたりません(^^; 箱の大きさからしても、本来は10枚揃いだったのでしょうが、入手時には6枚でした。
それほど上手の品ではありませんが、黒漆の上に牡丹紋が上品に描かれています。花びらの銀が印象的です。
箱には、「ちゃ津 10枚」と書かれていました。
『ちゃつ』とは、大きさが6寸の丸木皿で、「楪子」「茶津」とも書かれます。高台がついている物もあります。懐石料理に用いられ、菓子や菜を盛るのに使われます。仏事に用いられることもあるようです。
私の所では、正月のおせちのとり皿に重宝しています。
もう、手ぐすねをひいている人もいらっしゃるかもしれません。恒例の違い探しです(^.^)
今回は非常に難問です。
1枚目:
2枚目:
3枚目:
4枚目:
5枚目:
6枚目:
6枚間の相違は、非常に小さいです。
牡丹の葉や花びら配置は、6枚とも全く同じです。でも、プリントではありません。細線には筆の起点があるし、描かれた葉脈の長さやカーブは微妙に異なります。
牡丹の絵は、すべてをフリーハンドで描くのではなく、黒漆の上に、まず、輪郭となる下絵を版でおしてから、色漆で葉を塗り、花びらには銀を撒き、最後に、葉の輪郭線を金で、葉脈と花びらの輪郭を黒で引いたと考えられます。ですから、違いが出る可能性は小さいのです。
ウーンと腕組をして、考えあぐねすちゃんになること小一時間(^^;
人間はロボットにあらず、との信念のもと、ついに見つけました(^.^)
1枚目:(2,3,4,6枚目)
5枚目:
それにしてもいつも感心しますが、陶器や漆器に絵付けをされる熟練者の技は素晴らしいですね。ロボットが描くほどに精巧に同じような絵が描けるとは・・・。
5枚目の皿は、黒線を一本引き忘れているので、大げさに言えば、エラー皿なのですが、エラーがあったほうが、なぜかホッとします。
ガチガチの規格品だと、どこか息苦しいのですね(^.^)
それでは、間違いは少ないですね。
でも、手描きですから、それぞれ、カーブなどに微妙な差が出てきますよね。
花びらには銀を撒くということですが、伊万里の金銀彩では酸化して黒くなってしまいますけれど、漆の場合は黒くならないのですか?
この微妙な違いを探し出すとは!
明治の工芸品は今後さらに評価が高くなると思われますので
故玩館はまさに「宝の山」になるのでは。
牡丹に気品が感じられますね。
どの皿の牡丹も、花びらの縁の辺りから黒化しはじめています。なぜ外側からかは、わかりません。
でも、そんな品にこれだけの品位を持たせるのですから、大したものです。
こういう物は、今、骨董市では二束三文です。
買う分にはありがたいのですが、何か割りきれない気がします。
輪郭は別として一枚一枚丁寧に描かれている所に
あたたかさが感じられます。
良く観れば葉も変色した部分に違いが見られますものね。
使ってこその器と言いますが
手元に有ったなら恐らく私は飾って置くでしょうね。
でも、ちゃつは食器です。使ってくださいね。不思議なもので、そうするうちに、品物との距離感がかわります。
何よりも、こういった品は、骨董市で非常に安価に手に入るので、気軽に使えます(^.^)