先回、祖父の残した写本のうち、遠州流生花の基本書と思われる『遠州流挿花淵源集』を紹介しました。ノート等5冊にビッシリと書き込まれた写本は、いかにも活花を習得するためのテキストという感じでした。
今回は、さらに、和綴じの写本、2冊を紹介します。内容から、かなり希少な写本と思われます。
『遠州流挿花圖式』(左)と『遠州流挿花淵源集 筒之巻』(右)です。
『遠州流挿花圖式』:
「遠州流 挿花柳の緑」抜翠 廿二画略ス
明治三十三年孟春之寫
まず、江戸後期の漢詩人、大窪詩佛の跋文があります。
非常に薄い和紙に、ものすごく細い筆で墨書してあります。透けて裏の模様が重なるので、これ以降、白紙を差し込んで写真を撮りました。
様々な活花が、130図ほど載っています。
芍薬 松竹梅
かきつ(かきつばたの略) かきつハ(第一)葉ノ表裏ヲ記ス事(二)二剪刀ヲ對照セシムル事(三)春夏及初秋迄ハ葉ノ両方ヲ長クシ中ヲ短クシ季秋ヨリ冬ハ反對(注)乳呑忘レザル様二スル事-ハ多ク前付根〆二用フル事(但シ其限リ二アラザルコトアリ)
芍やく 杓薬ハ花ノ無キ枝ヲ用フべカラズ
四君 梅 八朔梅 竹 寒竹 菊 白鳳 蘭 葉蘭
ここまでは、二世 春楊庵一豫が文政八年に記したものを、明治三十三年に写した、とあります。
以降は、『貞松斎米一馬撰 挿花衣之香』の写しです。貞松斎米一馬;江戸時代の活花作家、正風遠州流の祖。俳諧にも通じていた。
狗子柳 小菊 地目
したれ柳 菊七りん 仙人菊
馬蘭廿一枚
松竹梅 竹筒より笹生したるまま
竹枝がついたままの筒をつかって、松竹梅を活けるなんてシャレてますね(^.^)
芍薬葉らん 籠二仙人菊 馬蘭九枚
とにかく、和紙が非常に薄く、ページをめくるのにも骨が折れます。さらに、使われている筆の細さに驚きます。柳の細長い枝など、糸のように細い線でよく描いたものだと思います。
もう一冊の写本です。
『遠州流挿花淵源集 筒之巻』:
「遠州流挿花淵源集 花筒之巻弘化三春二月 郷貢實貞」とあります。元々、御望村(現、岐阜市御望)の郷家に秘蔵されていたものを、明治三十七年に白桃園主人が写し、それをさらに、大正十三年に祖父、淡松斎一蛍が写した、ことがわかります。
全部で100種の竹筒花生けが載っています。そのうちの一部を紹介します。
鶴首 あんこ
掛ケ満月 大黒
手桶形 川太郎
菅船 筒守り 五重伐り
音曲又小田原筒とも云 音曲ハ上の口廣し 千利休作
禅僧切り 天正之頃に小田原仁之砌箱根湯本早雲寺之竹ニテ切ル 千利休作
端之坊 端之坊の筒は下の口廣し
旅枕 夏ノ夜とも云 千利休作
大欠 遠州公作
矢倉切 千利休作 山鮟鱇 遠州公作
二重筒 石州公作 瀧壷 遠州公作
早船 遠州公作 翁船 大政大臣良房公作
活花遠州流は、結構、道具に凝っていることがわかりますね(^.^)
やっぱりお祖父様の写本はすごいですね(^^)字もきれいですし筆で一発勝負ですもんね。なかなかできる人はいないような(^^;)
それと活花って器に合わせて活けたり、全体を考えて器を既存のものから選ぶものだと思っていました。
花を活けるための器を造るんですね。。
やはり主役は花なので当然と言えばそうなのですが、奥が深いですね(^^)
縁も異なもの、実に不可思議な現象です。
古物所有の如何もでしょうが、何かを訓えることにも通じます。
ブログ訪問の度に、気配を感じてに遭遇、然も度々の数字の羅列。
今回は、8888から9999へのリアクションでした。
偶然ではなく、必然的かと心を清めました。
有難うございます。
江戸時代の肉筆本で、たまに、白の修正液みたいなもので消して、その上に書き直した部分があるものに出合うことがあります。まさかのタイムスリップ!? おそらく、胡粉を膠で溶いたものを塗ったのでしょうね。これぞ、元祖、修正液!(^.^)
いずれにしろ、何か良い事の前兆(^.^)
私のブログ訪問で良い運を得ていただけるのなら、とても気分が爽快です(^.^)
改めて最初から拝見いたしました。(1~9)
私は以前少しお話しましたように、嫁入り前に付け焼刃で!お茶も生け花もかじりました。
そして、絵も好きでしたが、今、自分の描いた生け花図を見ると何ともお恥ずかしいものです。
ですので、おじいさまが、そうとう腰を落ち着け、もしかしたら華道家並みに活花をされておられたのではないかなとも思わされるのです。
道楽だけでは、これだけのことは出来ないような気もします。本当に貴重な資料の数々です。
(あの、ひょろった花瓶に生けたバランスの妙!知りたいです)
なお、小堀遠州は魅力的な人ですね。華道でも茶道でも造園でも建築でも素晴らしい業績を残されていて。
葉室麟さんの小説で『孤篷のひと」という歴史小説で読んだのですが、とっても惹かれました。
と同時に、おじいさまにも惹かれますよ。
遅生さんの小さなころに亡くなられたそうですが、お家で語り継がれている何らかのエピソードが沢山あるのではないでしょうか。
祖父は明治人ですから、それなりの気骨があったのでしょうね。
写真で見る限り、顔は似てますね。何にでも手を出して、一度ハマったら凝りに凝る点も(^^;
松竹梅、節から出た葉を利用しているところは、トンチも効いてますよね。
松竹梅には意表をつかれました。
なかなかやるなあ、という感じです。
親しみがわきますね(^.^)
写す人の熱意と腕も凄いですが、元の本も、大窪詩佛の跋文があるような当代随一の本ですね。
当時、このような本は貴重で、売ってもいなかったでしょうから、伝手を頼って借りてきて、写すしかなかったのですね。
元の本には、千利休とか小堀遠州とかの原点に立ち返った、道具の種類や活け方が、事細かく書かれているのですね。
一流のものを学び、情熱をもってそれを実践されていったお祖父様は、当然ながら、一流の人物となっていったことが頷けます(^-^*)
柳の枝など、ほんとに細いです。髪の毛くらいです。これを書こうと意識すると、ビビッた線になってしまうでしょうね。
今はコピー機がありますから楽勝です(^.^)
昔に生まれていなくてよかったです(^^;