*****記事を読んだ私の感想
前置胎盤では、いったん出血が始まれば、またたく間に大量の出血となる場合が多く、緊急に大量輸血しても全然追いつかないような緊迫したケースもよく経験します。ですから、妊娠31週前置胎盤で出血が始まれば、母体の救命を目的として帝王切開を実施するのは当然のことだと思います。また、妊娠31週で児を娩出すれば、時に児が脳性麻痺となる場合も当然あり得ます。今後、今回のような事例が裁判で医療ミスとみなされて、1億円を越す損害賠償を科せられるようでは、前置胎盤で出血が始まっても今後は帝王切開は一切実施できないということになってしまいます。今後は前置胎盤の妊婦は出血多量で死亡するしかないということなんでしょうか?このような判決を社会が許してしまっても本当にいいのでしょうか?この判決に誰も抗議しようとはしないのでしょうか?このような社会状況の下では、全国的な産科閉鎖ラッシュの大きな流れは今後もますます加速されてゆくものと予想されます。
*******徳島新聞(2月7日付)より
県側の敗訴確定 中央病院脳性まひ訴訟、最高裁が上告棄却
徳島県立中央病院で帝王切開し、出産した子供が脳性まひになったのは医師の不適切な対応が原因として、大阪府の両親らが県に約一億六千万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は六日までに県の上告を棄却した。病院側の医療ミスを認め、県に約一億一千万円の支払いを命じた二審大阪高裁判決が確定した。
二審判決によると、母親は一九九二年六月、同病院で帝王切開することが多い「前置胎盤」と診断され入院。医師は「いつ大出血が起こるか分からない」などとし、子供が三十一週の段階の七月に帝王切開した。
一審の大阪地裁堺支部は、両親らの請求を棄却。二審の大阪高裁は一審判決を変更し、子供が三十一週の段階で、少量出血する程度だったのに帝王切開したため、出産後の呼吸不全が原因で脳性まひになったとして、病院側の医療ミスを認めた。
塩谷泰一県病院事業管理者は「県側の主張が認められず、極めて残念だ。今後とも医療安全対策については懸命に取り組んでいきたい」と話している。