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日本の多くの地域が、地域内に分娩できるところが全く見つからない産科空白地域となって、それが急速に拡大しつつあるのが現状です。
この飯田下伊那地域でも半年間で産科施設が半減してしまい、今は産科医療滅亡の危機に直面しています。この問題を、地域内の一つの病院、一つの自治体だけで、すべてに対応しようとしても絶対に無理です。でも、地域全体でしっかりと協力体制を組んで、少ない医療資源を最大限に有効利用すれば、もしかしたら何とかなるかもしれません。
この地域全体の医療が崩壊してしまっては何にもなりません。これからは、下伊那赤十字病院の医師、助産師とか、飯田市立病院の医師、助産師とか、言っているような場合ではないと思います。この飯田下伊那地域の医師、助産師という意識をもち、地域として対応していくことが非常に重要と考えています。
これから、産科医療を取り巻く状況はますます厳しくなっていくと思いますが、この地域でお産難民を出さないことが大切です。そのためには、地域全体でよく話し合い、地域内での協力体制を築き上げてゆくことが非常に重要だと思います。
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医療タイムス社、日刊タイムスFax、2006年5月3日
(発行元に当ブログへの記事転載の承諾を得ました。)
上田市産院・廣瀬副院長 産科の集約化を非難 ~松川町で産科医不足シンポジウム
産婦人科医不足を考えるシンポジウムが27日、松川町で開かれた。松川町では下伊那赤十字病院が4月からお産の取り扱いを中止しているが、地元の市民グループなどは同院の産婦人科再開を強く求めている。シンポジウムでは産科を集約化せざるを得ない現状が報告された一方、集約化に疑問を呈す産婦人科医の声もあった。
シンポジストの県衛生部医療チーム医療医監の鳥海宏氏は、昨今の産科閉鎖問題について「産婦人科医が増えなければ根本的には解決できない」との見方を示した上で、医療側としては、産科医の労働条件の改善、医療訴訟への対応、診療報酬での手当て、女医のバックアップシステムの構築などが必要とした。
信大医学部産科婦人科学教室の小西郁生教授は、出産時のリスクは「ヘルプ症候群」や「エコノミー症候群」などがあり、「低いとは言えない」との見解を表明。「どうしても高次医療のサポート体制が必要。一概に集約化とは言えないが、みなさんに辛抱してもらわざるを得ないこともある」と産科施設の集約化に理解を求めた。
また、小西教授は、今年度、産婦人科教室に3人の新人を確保できたことも紹介。「産科はやり甲斐があることを訴えていきたい」と今後も入局者のリクルート活動に力を注ぐ方針を示した。
一方、諏訪赤十字病院から廃院の危機に直面していた上田市産院の副院長に転出した廣瀬健氏は、産科医療の集約化に失敗したイギリスの事例を説明しながら、「安全な出産のためには集約化が不可欠であるとの主張に根拠はあるのか」と集約化に強い疑念を提示。その上で助産師と産婦人科医間の自立性の尊重と協働、情報の共有、搬送システムの整備などによって「出産に伴う危険に対応する環境を向上できるはず」との持論を展開した。
(タイムスFAX、医療タイムス社、2006年5月30日)