ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

地域の基幹病院での分娩取り扱い中止

2007年01月13日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

あいかわらず、全国各地の病院での分娩取り扱い中止の報道が続いています。

県から周産期母子医療センターに指定されているような地域基幹病院での分娩取り扱い中止も目立ちます。

覆水盆に返らず! 地域内の産科がことごとく絶滅してしまってからでは、もはや手遅れでどうにもなりません。

まだ何とか一部の産科がかろうじて生き残っているうちに、各県で早急に協議して残すべき重点化病院を指定し、その指定された病院に、産婦人科医、助産師、小児科医、麻酔科医などを集約化し、待遇を大幅に改善するなどの強力な緊急避難的対応策を断固として実行に移す必要があります。

参考:

産科施設の減少に関する最近の報道

「お産ピンチ」首都圏でも 中核病院縮小相次ぐ (朝日新聞)

産科医不足、大阪の都市部でも深刻 分娩制限相次ぐ

奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ

“お産難民” 回顧2006 (東京新聞)

「このままでは産科2次医療は崩壊する」(医療タイムス社、長野)

上田でお産の課題話し合う (南信州新聞)

ふれあい横浜ホスピタルの早乙女智子医師より
(どうする日本のお産 in 長野

地域周産期医療の現場で、我々が今なすべきことは何だろうか?

****** 北海道新聞、2007年1月13日

「出産可能」桧山でゼロ 道立江差病院が休止へ

 【江差】桧山管内で唯一、産科のある道立江差病院は十五日から、産婦人科の出産取り扱いを休止する。医師一人が常勤する体制は変わらないが、安全な出産医療を維持できないと判断した。今後は妊婦検診などに限って対応する。

 江差病院は医師確保のめどが立っていなかったため、今月以降に出産を予定する妊婦の出産予約受け付けを見合わせてきた。

 結局、札幌医大が常勤医の派遣を続けることになったため、医師は確保できたが、同大は「ベテラン医師が不足しており、医師一人では継続的に出産を受け入れることは難しくなった」として、出産の取り扱いは再開しない方針を伝えてきた。婦人科は従来通り、診察する。

 同病院は二○○五年度は百五十八件の出産を取り扱った。全道十四支庁で出産できる病院が一つもなくなるのは、桧山管内が初めて。

(北海道新聞、2007年1月13日)

****** 東奥日報、青森、2007年1月12日

県内産科医高齢化 4割が60代以上

 県内の産婦人科医のうち六十代以上が全体の約四割を占め、高齢化が進んでいることが十一日、青森市で開かれた産科医療提供体制のあり方に関する検討会(会長・水沼英樹弘大教授)で報告された。産科勤務医の月間の勤務時間は二百-三百時間に達し、中には「休日がない」医師もいるなど、過酷な労働環境が浮き彫りとなっている。今後、“産科離れ”が加速する恐れもあり、県は「産科医療提供体制の将来ビジョン(素案)」を策定し、産科医の集約化、勤務医の待遇改善、助産師活用などを提案した。

 弘大産婦人科学講座の報告によると、県の臨床産婦人科医会には百三十九人が所属。そのうち六十代以上が五十二人(六十代十七人、七十代二十一人、八十代十四人)で全体の37%。一方、二十-三十代は二十五人(二十代八人、三十代十七人)と全体の18%にとどまっていた。

 また県内の十五医療機関、産婦人科医五十二人から回答を得たアンケート結果によると、産科勤務医の月間勤務時間は二百時間から三百時間。当直回数(宅直含む)は、おおむね月間八日から二十一日に上る。休日調査では、週一回の休日が53%(八病院)で、二週間に一日は33%(五病院)、13%(二病院)が「休日がない」と答えた。

 「職場を変える」「開業する」など、現状を抜け出したい-とする産科医は約半数に達した。

 産科医の高齢化について、弘大産婦人科学講座は「産科志望者が大幅に増えない限り、現状のままでは自然減少が続く」と指摘。委員からは「高齢化した医師が、お産にかかわらなくなるという事態も」「産科医は“絶滅危惧(きぐ)種”ではなく、“絶滅種”になりかねない」という意見が出された。

(東奥日報、青森、2007年1月12日)

****** 河北新報、2007年01月12日

お産を安心安全に 青森県、将来像策定へ検討会

 青森県は産科医療提供体制の将来ビジョン策定を目指し、医療関係者による検討会の初会合を11日、青森市の青森国際ホテルで開いた。安心して安全なお産ができる環境整備をテーマに話し合い、小児科と産科の集約化の必要性についても検討する。

 議長には、弘前大医学部産科婦人科学講座の水沼英樹教授が選ばれた。委員からは「少子化対策の視点が必要だ」「産婦人科医の高齢化が進んでおり、医師減少を念頭にビジョンを作るべきだ」「搬送体制の充実が欠かせない」などの意見が出た。

 検討会では、同講座の横山良仁講師が産婦人科の病院勤務医に対するアンケート結果を報告した。将来ビジョンに盛り込むため、県が同講座に委託して行った調査研究の一環。

 横山講師は、6割以上の医師が自分の仕事量を過重だと感じている現状を紹介、「産科医を増やす前に、現役を辞めさせない方策が必要だ」と指摘した。

 さらに、必要な対策として(1)医師の報酬や待遇の改善(2)研修機会の確保(3)女性医師への出産育児支援―を挙げた。

 検討会は3月に素案をまとめ、県民の意見を募集する。将来ビジョンの策定は2007年度初めを予定している。

(河北新報、2007年01月12日)

****** 毎日新聞、2007年1月10日

彦根市立病院:3月20日以降の産婦人科診療、医師3人が1人に /滋賀

 ◇市民から不安の声

 彦根市立病院(赤松信院長)は9日、医師3人の産婦人科の診療体制が部長らの退職に伴い3月20日以降は医師1人になると発表した。外来診療は従来通り行い、分べんや手術、がんの治療などは軽い場合を除き他の病院を紹介するという。分べんは院内助産院の設置を検討している。3~7月に出産を予約している99人については相談に応じ、他の病院に転院してもらうなどの措置をとるが、市民からは不安や不満の声が広がっている。

 市立病院によると、昨年4月は医師4人体制だったが、同9月に1人が他病院に移った。同10月に40代の部長が開業のため退職を申し出、これに伴い指導・教育が受けられないなどの理由で30代の医師も大学病院に戻ることになり、今年3月以降は40代の副部長1人になる。各大学病院などを通じて医師の補充を目指したが、全国的な産婦人科医師の不足もあり、確保のめどはついていない。病院側は院内の4カ所に「産婦人科診療の制限」の張り紙を出した。予約者については主治医や助産師17人が相談に応じ、近隣の3病院と7診療所などを中心に受け入れの協力要請をした。

 同病院の年間の分べん数は、▽04年度523件▽05年度552件。病院は「4月以降は院内助産院で分べんに対応する方法を検討しているが、リスクの少ない100件前後に対応するのが精いっぱいでは」としている。

 赤松院長は「出来るだけ早く現体制に戻したいが、めどはない。出産予約者や妊婦の不安解消や安全には万全を期したい」と話している。【松井圀夫】

(毎日新聞、2007年1月10日)

****** 京都新聞、2007年1月9日

産婦人科の診療体制縮小 彦根市立病院3月末から

 彦根市立病院(滋賀県彦根市八坂町)は産婦人科医師の相次ぐ退職で3月末から常勤医が1人になるため、診療体制を縮小する。すでに出産の予約を済ませている人の受け入れを近隣の病院などに依頼している。

 ■医師4→1人に激減

 2005年時点では常勤4人体制だった同病院の産婦人科の医師のうち、06年9月に1人が退職。さらに、産婦人科部長が開業し、別の医師も出身大学の付属病院に移るため、いずれも今年3月末で退職することが決まっている。

 同病院によると、3月末以降は常勤の医師が副部長1人になるため、出産や帝王切開などの手術は難しくなり、3月以降に同病院で出産を申し込んでいた99人は長浜市や近江八幡市など近隣計10カ所の病院や診療所に受け入れを依頼している。外来の診察も第28週までの妊婦に限る、という。

 「あらゆる方法で後任者を探しているが、全国的な産婦人科医師の不足の影響で見通しがたたない。助産師と医師による出産など対応策を考えたい」(松田一實事務局長)という。

 同病院の産婦人科では年間約1万6000人が外来診療に訪れ、同約550人が出産している。

(京都新聞、2007年1月9日)

****** 中日新聞、2007年1月9日

産婦人科縮小に不安の声 彦根市立病院

 「私たちはどこで子どもを産めばいいの」。彦根市立病院の産婦人科医が3月下旬から1人になり、これまで通りの出産ができなくなることに、地域住民らからは不安の声が上がっている。9日には子育て中の母親や祖父母らが「彦根市立病院での安心なお産を願う会」(仮称)を立ち上げ、市への嘆願書提出を目指して署名活動するなどの対策を話し合った。 

 安心なお産を願う会の立ち上げには女性を中心に16人が集まった。市立病院は助産師を中心とした「院内助産院」として出産の存続を検討しているが、昨年10月に市立病院で二女の芽以ちゃんを出産した同市芹川町の山本友香さん(30)は「母子とも無事に出産できたのは、これまでの市立病院があったからこそ」と語気を強める。

 山本さんは当初、助産師の助けを得て自宅で産む予定だったが、36週を過ぎて破水。市内の民間診療所に行ったが、出血が多くなるなど容体が急変し、急きょ市立病院に移った。胎盤早期はく離だった。担当した医師からは「もう少し遅ければ危なかった」と言われたという。

 代表の高居涼佳さん(32)=同市小泉町=は「手術やがん治療もできなくなるので、これから出産しようとする私たちだけの問題ではないはず。多くの人に呼び掛け、市立病院の産婦人科医の確保が必要だという声を高めていきたい」と話している。【築山栄太郎】

(中日新聞、2007年1月9日)

****** 中国新聞、2007年1月8日

中国地方 進む産科医不足 分娩不能63市町村

全自治体の55・3% 訴訟リスクが拍車

 離島や中山間地域で産科医師の不足が深刻さを増す中、分娩(ぶんべん)できる医療機関のない自治体が中国地方では六十三市町村に上ることが、中国新聞の調べで分かった。二〇〇六年に井原市や山口県周防大島町でも、お産ができなくなるなど、五県の全百十四市町村の55・3%にも達している。過酷な勤務実態に加え、訴訟が多いなど高いリスクが医師不足に拍車を掛けている。(伊東雅之)

 分娩に対応できる病院や診療所がない中国地方の自治体は、広島県が三市六町、山口県二市九町、岡山県五市十二町二村、島根県八町一村、鳥取県十四町一村。

 町村では、以前から分娩施設のない自治体が多かったが、最近は市にも広がっている。〇五年の庄原、大竹両市に続き、〇六年八月には井原市が「ゼロ地帯」になった。背景には、産科医師不足がある。唯一受け入れていた井原市民病院の常勤医師が一人に減ったため、二十四時間対応が困難になった、という。町村でも、周防大島町立大島病院が〇六年八月、常勤医師が一人であることを理由に産科をやめた。

 境港市でも、お産に市内で唯一対応できる境港総合病院が産科休止の危機に直面している。医師を派遣している鳥取大が医師不足などを理由に今年三月末での派遣中止を求めてきたためだ。新たな医師確保のめどは立っておらず、「ゼロ地帯」の拡大に歯止めがかかる様子はない。

 広島大の弓削孟文・副学長(医療担当)は「労務環境の厳しさや、医療事故のリスクの高さから産科医師志望者が激減しているのが主要因」と指摘。対応策として医療機関同士のネットワーク化の必要性を強調する。ただ、医師の養成や労働環境の改善は医療機関任せでは不十分。国や自治体も巻き込んだ抜本的な対策を探る必要性がある。

<お産ができない中国地方の市町村>
中国新聞調べ
広島県 庄原市、大竹市、江田島市、熊野町、
坂町、安芸太田町、大崎上島町、
世羅町、神石高原町
山口県 下松市、美祢市、周防大島町、和木町、
上関町、田布施町、平生町、美東町、
秋芳町、阿武町、阿東町
岡山県 井原市、備前市、瀬戸内市、美作市、
浅口市、建部町、瀬戸町、和気町、
早島町、里庄町、矢掛町、鏡野町、
勝央町、奈義町、久米南町、美咲町、
吉備中央町、新庄村、西粟倉村
島根県 東出雲町、飯南町、川本町、美郷町、
邑南町、吉賀町、海士町、西ノ島町、
知夫村
鳥取県 岩美町、若桜町、智頭町、八頭町、
三朝町、湯梨浜町、琴浦町、北栄町、
大山町、南部町、伯耆町、日南町、
日野町、江府町、日吉津村

(中国新聞、2007年1月8日)

****** 日本海新聞、2007年1月6日

お産ができなくなる

 医師不足から病院の在り方そのものが問われる事態が起きている。境港市米川町の県済生会境港総合病院(稲賀潔院長、二百六十三床)は医師確保のめどが立たず、新築計画が凍結に追い込まれた。市内で唯一、産婦人科がある医療施設だが、四月からは常勤医師がいなくなり、出産ができなくなる見通しだ。

 もうすぐ妊娠八カ月になる市内在住の女性(21)は「私がここで生まれたときの看護師さんがいるし、実家にも近いので安心だったのに。今から病院を替わるのは大変」と不安を訴える。

 三月中旬以降に出産予定の女性二十三人には、他の病院を紹介する準備が始まっているが、事務部長の山根弘和は「市民の要望に応えられないのは残念」と当惑顔だ。

 派遣元の鳥取大学医学部付属病院(米子市西町、石部裕一院長)が一人勤務体制では分娩(ぶんべん)を行わせない方針を打ち出し、同病院はその影響を受けた。過酷な勤務状況に加え、出産時のトラブルが訴訟になる例が増えていることが背景にある。「済生会病院のニーズは少なくなっている」とも指摘する。

変化するニーズ

 同病院で二〇〇五年に生まれた赤ちゃんは六十四人。一九九六年の二百三十四人から大きく減少した。市全体の出生者数は二百六十五人だから、市民の大半は市外で出産していることになる。米子市ではホテル並みの設備の個人病院が人気を集めているが、境港市からでも車で三十分もあれば行くことができる。

 同病院は、地元からの働き掛けを受け、全国で医療、福祉事業を展開する恩賜財団済生会(本部・東京)が六一年に設立。長年にわたり市民病院的役割を担ってきた。

 しかし、〇四年からの臨床研修必修化など医療環境の急激な変化に対応できないでいる。一日五百人の外来患者のうち四分の一を診察する内科では、独立などで医師が二年前の十人から七人に減少。医療の高度化、細分化が進む中、計画に織り込んだ医師の増員どころか現状維持さえ危うい。

行政のビジョン

 こうした窮状を受け、市長の中村勝治は鳥大医学部、県に支援を要請したが、色良い返事は得られなかった。市議会は医師確保のための措置を講じるよう国に求める決議を採択した。頼みの綱の医学部からの医師派遣が困難だということは、市側も十分理解している。市健康対策課長の川端豊は「国の根幹から変えないと、地方はますます苦しくなる」と訴える。

 医師不足をカバーする手だてとして、病院間の機能集約が叫ばれている。現在、県は保健医療計画の改定に取り掛かっているが、住民ニーズをどう見極めるか。行政のビジョンが問われている。

(日本海新聞、2007年1月6日)

****** 東京新聞、2006年12月18日

医師不足で分娩休止へ NHO栃木病院

 宇都宮市中戸祭の国立病院機構(NHO)栃木病院(山崎晋院長)が、来年四月から分娩(ぶんべん)の取り扱いを縮小し、同八月から休止する。深刻化する産婦人科医不足の影響で、患者を振り分ける見通しも立っていない。同院はホームページなどで非常勤の産婦人科医を募るなど、打開策に向けて動き始めている。 (佐藤あい子)

 同院の産婦人科ではこれまで、四人の医師が年間約五百件のお産を担当してきた。三分の一は胎児の成長などに問題がある異常分娩。容体の急変に対応するべく「労働基準法ぎりぎりで勤務」(山崎院長)してきたが、これ以上は困難と判断。来年四-七月の分娩は四分の一規模の月十件まで縮小し、八月以降の予約は受け付けない。

 原因は全国的な産婦人科医の減少。これまで全国で毎年約三百五十人の産婦人科医が誕生していたが、ことし四月は二百八十五人だけだった。

 これは、過酷な労働環境や医療事故のリスクによる不人気に加え、二〇〇四年四月に導入された「新医師臨床研修制度」の影響も大きい。

 同制度で、大学に残る研修医が減ったことから、大学側が人材不足を克服するため、各地の病院に派遣していた医師を引き揚げているからだ。

 また、医師の多くが大都市病院での勤務を望み、地方に若い医師が来なくなっている。

 こうした現状から、県内でも分娩対応の休止や、休止を検討する医療機関が相次いでいる。山崎院長は「このままでは都心の一人勝ち。県内でお産難民が増え、妊婦は都心まで出産しに行かなければならなくなる」と危機感を募らせる。

 出産時には、予想外の大量出血や事故の危険性もつきまとう。幼い子どもや家族と離れ、妊婦が一人で出産を待つのは精神的なストレスも大きい。

 こうした患者の負担を回避するため、同院は近隣病院との連携強化や、助産師を機動的に起用することで対応を検討している。また、自身の出産のため退職した女性医師を非常勤で雇おうと、ホームページで呼びかける試みも始めている。

(東京新聞、2006年12月18日)

****** 下野新聞社、2006年12月14日

「国立栃木」が分娩縮小/常勤医減、休止も視野/塩谷総合は年末で休止/県、実態把握へ

 宇都宮市の国立病院機構(NHO)栃木病院が、来年四月以降の分娩(ぶんべん)対応の大幅縮小を決定し、八月以降の休止も視野に入れていることが十三日までに分かった。矢板市の塩谷総合病院も今年末での休止を決めた。

 県内では今春以降、分娩対応の休止に踏み切ったり、休止を検討する医療機関が相次いでいる。こうした医療機関が対応してきた分娩件数は、年間およそ計千五百件に上る。受け皿になる医療機関は限られており、さらに休止が続出すれば県内産科医療が危機的状況に陥る恐れがあることから、県も実態把握に乗り出した。

 分娩対応の休止はいずれも「新医師臨床研修制度」に伴う産科常勤医不足が主因だ。宇都宮地区では今春、宇都宮社会保険病院が産婦人科診療を休止。NHO栃木病院が休止すれば、同地区の三中核病院のうち分娩ができるのは済生会宇都宮病院だけになる。

 NHO栃木病院によると、現在四人の産婦人科常勤医が、派遣元の大学医学部による人材引き揚げで、来年八月からは一人になる。

 同病院は年間約五百件の分娩対応をしてきたが、常勤医減に伴い、来年四月から七月までの分娩は月約十件に絞り込む。八月以降は分娩に対応できる体制ではないとして、分娩の予約を受け付けていない。

 山崎晋病院長は八月以降について「常勤医を現在のように確保し、これまで通りお産を継続することは困難」と言及。十六人いる助産師の機能的登用や、近隣の中核病院との連携強化で事態の打開を図りたい考えだ。

 一方年間約百件の分娩に対応してきた塩谷総合病院は今月末で休止する。産婦人科常勤医が今春、一人減の二人になりながらも継続してきたが、安全対策などの面から「責任ある医療提供が困難」と説明している。

 日本産婦人科医会の野口忠男・県支部長は「現段階ならかろうじて別の施設で吸収できるかもしれないが、状況が深刻化すれば県内で分娩できる体制が損なわれることもあり得る」と指摘。

 県医事厚生課は「まずは実態を正確に把握することが必要だ」として、情報の収集と分析を急いでいる。

 ◇ズーム◇ 新医師臨床研修制度

 医師に幅広い診療能力を身に付けさせる目的で、2004年4月に導入された。国家試験合格後2年間かけ、基本的な7分野を数カ月単位で回る。今春で一巡したが、制度を機に大学に残る研修医が減り、人材不足になった大学が市中病院に派遣していた医師を引き揚げている。

(下野新聞社、2006年12月14日)