コメント(私見):
昨日(2月23日)、大野病院事件の第2回公判が福島地裁で開催されました。
最大の争点になっている、『癒着胎盤と判明した時点で、胎盤を剥離する処置を止め、ただちに子宮摘出手術に移行する義務があったかどうか?』について、『検察側証人が、弁護側の主張に沿うとも受け取れる一般的見解を述べた』とのことです。
要するに、検察側証人が、フタを開けてみたら、いつの間にか弁護側証人に早変わりしていた!ということのようです。
今回、周産期医療の崩壊をくい止める会のメンバーが公判を傍聴できて、第2回公判内容の詳細をホームページに掲載してくださいました。
次回の公判は来月16日とのことです。
****** 読売新聞、福島、2007年2月24日
大野病院事件 検察側証人が被告に理解示す証言
大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術で妊婦を失血死させたなどとして、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われている産婦人科医、K被告(39)の第2回公判が23日、福島地裁であった。検察側の証人尋問が行われ、証人が検察側の主張と食い違う見解を示す場面があった。
証人は、手術に先立ちK被告から相談を受けていた双葉厚生病院(双葉町)の産婦人科医と、手術で助手を務めた外科医の2人。
最大の争点になっている、子宮に癒着した胎盤をはく離する処置をやめ、子宮摘出手術に移行する義務があったかについて、産婦人科医は「胎盤のはく離を完了すれば、子宮の収縮が期待でき、止血できるかもしれない」と弁護側の主張に沿うとも受け取れる一般的見解を述べた。この産婦人科医は、胎盤が子宮に癒着した患者の帝王切開手術で子宮の摘出手術に移行した経験があり、検察側が証人申請していた。
胎盤のはく離に手術用ハサミを使った妥当性について、2人の証人は「切るのではなく、そぐように使うなら許容できる」などと理解を示す証言をした。福島地検は公判後、「無理にはく離して、大量出血を招いたことが問題」と反論した。
(読売新聞、福島、2007年2月24日)
文中、K医師名を伏せさせていただきました。
****** 朝日新聞、福島、2007年2月24日
大野病院事件 争点の処置「効果的」
-検察側証人 捜査時供述翻す-
大熊町の県立大野病院で04年、帝王切開手術中に女性(当時29)が死亡し、産婦人科医K被告(39)が業務上過失致死などの罪に問われている事件で23日、第2回公判が福島地裁(大澤廣裁判長)で開かれた。争点となっている、子宮に癒着した胎盤をはがす際のクーパー(手術用ハサミ)の使用について、検察側証人の医師が、「むしろ効果的かもしれない」と、弁護側の主張を裏付けるような証言をした。
この日の公判では、双葉町の双葉厚生病院の産婦人科医で、手術当日に被告のK医師から緊急時の応援を要請されていた○○○○・副院長が証人に立った。
○○副院長は捜査段階の地検の聴取に対し、「手で剥がすのに比べて、微妙な感触を確かめられない器具を使うのは危険」などと供述していた。しかしこの日、「当時はK医師がどのような方法でクーパーを使ったかという説明を受けておらず、(胎盤を)切るためにクーパーを使ったと考えていた。しかし(K医師のように)自分の目で見て、刃を閉じたクーパーで胎盤をはがすように使うのであれば適切な場合もある」「クーパーであれば、剥離(はくり)部分も視野に入るので、手で剥離するよりもむしろクーパーの方が優れているかもしれない」などとし、クーパー使用の妥当性を指摘した。
クーパーの使用については「安易にクーパーを使用し、無理やりはがしたのは問題」とする検察側と、「すばやく剥離するための妥当な医療行為」とする弁護側が対立し、争点の一つになっている。
○○副院長はまた、32年間の臨床経験で癒着胎盤患者の帝王切開を実施した例などを踏まえつつ、「胎盤をはがすことで止血効果が得られることがあるので、胎盤の剥離を始めたら中止せずに完了するべきだ」などと指摘。「剥離が難しいと分かった時点で直ちに中止すべきだ」とする検察側の主張に反する主張を展開した。
県立大野病院の外科医として手術に加わった県立医大の△△△△医師も検察側証人として立ち「癒着部分の剥離にクーパーを(こうした方法で)使うのは、外科ではよくあること」などと指摘した。
検察側は、「あくまで胎盤を無理やりはがしたこと自体を問題としており、クーパーを使ったからいけないとは一言も言っていない」としている。
次回の公判は来月16日。
(朝日新聞、福島、2007年2月24日)
文中、K医師名を伏せさせていただきました。
****** 毎日新聞、福島、2007年2月24日
大野病院医療事故:胎盤はく離継続は妥当 証人、尋問で指摘--福島地裁
県立大野病院で起きた帝王切開手術中の医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、K被告(39)の第2回公判が23日、福島地裁であり、証人尋問が行われた。争点である「胎盤のはく離を中止すべきだったか」について、K被告が急変時の応援を依頼していた産科医は「はく離を始めたら完了しなければならない」とはく離継続の妥当性を指摘した。
双葉厚生病院(双葉町)の産婦人科医は、自身が帝王切開手術中に癒着胎盤であることを認識した際、はく離を継続し、胎盤をはがし終えた後も出血が止まらなかったため、子宮を全摘出した経験を明らかにした上で、すぐに子宮全摘出に移行しなかった理由を「はく離が完了すれば子宮が収縮し、止血できると考えた」と述べた。
また、争点の一つの手術用はさみ(クーパー)の使用の妥当性について、はがす部分が見えない手によるはく離に比べ「歯を閉じた状態で、(はがす部分を)視野に入れながらやるのであれば、優れているかもしれない」と証言した。
一方、事故当日の手術に立ち会った県立大野病院の外科医は、子宮の全摘出に移行する際、自身と院長が計3回、大野病院の外科部長に応援を要請するか尋ねたが、K被告はいずれも「大丈夫」と断ったことを明らかにした。【松本惇】
(毎日新聞、福島、2007年2月24日)
文中、K医師名を伏せさせていただきました。
****** 河北新報、2007年2月24日
「被告の処置は適切」検察側証人の医師ら証言 大野病院事件
福島県立大野病院(大熊町)で帝王切開手術中、子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医K被告(39)の第2回公判が23日、福島地裁であった。手術前、緊急事態に備えて応援を要請されていた産婦人科医と、手術に立ち会った外科医が検察側証人として出廷したが、いずれもK被告の判断や処置は適切だったとする趣旨の証言をした。
最大の争点となっているK被告が癒着胎盤を確認した時点で胎盤剥離を続けた判断が妥当かどうかについて、産婦人科医は「胎盤の剥離を完遂すると出血が止まることがあるため、剥離を進める。自分も癒着胎盤の症例に出合った際は、重症だったが剥離を続けた」と証言。「K被告が罪に問われた手術の出血量では、血液の準備があれば剥離をする」と供述した。
検察側が大量出血の原因とするクーパー(医療用はさみ)を使った剥離についても、産婦人科医は「クーパーの使用は危険」とした捜査段階の供述を撤回。「クーパーの刃を開いて剥離すると考えていたため危険だと言ったが、K被告のように刃を開かず、外側でそぐように剥離するならば、手を使うより安全かもしれない」と述べた。
外科医も「外科手術で使っており、クーパーを使うリスクが高いとは思わなかった。クーパーを使った剥離によって大量出血したという感じではなかった。胎盤もスムーズにはがれた」と証言した。
一方、K被告が事前に危険性を認識して手術に臨んだとする検察側主張について、産婦人科医はK被告から応援を頼まれたことを認めた上で「応援要請は初めてだった。癒着胎盤とも考えた」と、検察側立証に沿う証言をした。
起訴状によると、K被告は2004年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認して剥離を始めた。このまま続ければ大量出血で死亡することを予見できる状況になっても子宮摘出などに回避せず、クーパーを使った剥離を続けて、女性を失血死させた。
(河北新報、2007年2月23日)
文中、K医師名を伏せさせていただきました。
****** 福島民友、2007年2月24日
事実関係立証で対立 大野病院事件第2回公判
大熊町の県立大野病院で2004(平成16)年12月、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が死亡した医療事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告(39)の第2回公判は23日、福島地裁で開かれ、証人尋問が行われて本格的な審理が始まった。
手術当日に応援のため待機していた医師と手術の助手を務めた医師の2人は、K被告とのやりとりや手術室の当時の状況などを証言。争点のうち胎盤癒着の剥離(はくり)中止義務の有無や手術用はさみ「クーパー」の使用の妥当性を中心に検察、弁護側双方が尋問を展開した。事実関係の立証をめぐって双方の異議が飛び交うなど、たびたび尋問が中断され、対立の構図が表面化した。
(福島民友、2007年2月24日)
文中、K医師名を伏せさせていただきました。
****** 福島民報、2007年2月24日
癒着胎盤の可能性認識 大野病院公判で応援の産科医証言
福島県大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告(39)の第2回公判は23日、福島地裁で開かれた。関係者の証人尋問を行い、K被告が手術前に癒着胎盤の可能性を認識していたことを示唆する証言があった。
証人尋問は、手術前にK被告から緊急時の応援を頼まれていた双葉厚生病院の男性産婦人科医と、手術で助手を務めた当時の大野病院の男性外科医の2人に行われた。
産婦人科医は、K被告から依頼を受けた時、「『前回の帝王切開創部に胎盤が掛かっているかもしれない』と言われた」と証言。外科医は手術前の打ち合わせで「(K被告が)『癒着があるかもしれない』と言った。どの部位の癒着かは言わなかった」と述べ、K被告が手術前に胎盤の癒着を予見した可能性をうかがわせた。
(福島民報、2007年2月24日)
文中、K医師名を伏せさせていただきました。