第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例
【問題051~問題060】
問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド
問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei
問題054 卵巣腫瘍で誤っているのはどれか。
a)漿液性腺癌はpsammoma bodyをしばしば伴う。
b)わが国では明細胞腺癌の発生頻度が欧米に比し高い。
c)移行上皮癌はブレンナー腫瘍成分を認めないものをいう。
d)良性胚細胞腫瘍の大部分は卵巣甲状腺腫である。
e)未熟奇形腫では未熟神経組織の量が予後と相関する。
問題055 卵巣腫瘍と腫瘍マーカーの組み合わせで誤っているのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌 - CA125
b)粘液性嚢胞腺癌 - CA19-9
c)顆粒膜細胞腫 - エストロゲン
d)卵黄嚢腫瘍 - AFP
e)Krukenberg腫瘍 - SCC
問題056 卵巣腫瘍のMRI検査でT1強調像、T2強調像ともに低信号を呈するのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌
b)粘液性嚢胞腺癌
c)線維腫
d)成熟嚢胞性奇形腫
e)子宮内膜症性嚢胞
問題057 卵巣がんで誤っているのはどれか(卵巣がん治療ガイドライン)
a)わが国における罹患数は毎年約6,000人である。
b)わが国では1995年には3,892人が死亡した。
c)Ⅰ期の5年生存率は90%を越える(1998~1994年、FIGO)。
d)Ⅱ期の5年生存率は約70%である(1998~1994年、FIGO)。
e)Ⅲ期の5年生存率は約50%である(1998~1994年、FIGO)。
問題058 卵巣癌で正しいのはどれか。
a)漿液性腺癌の多くは境界型悪性腫瘍を経て発生する。
b)粘液性腺癌では境界悪性腫瘍病変の合併は稀である。
c)類内膜腺癌の多くは内膜増殖症を経て発生する。
d)類内腺腺癌が子宮と卵巣にあれば原発巣は子宮である。
e)明細胞腺癌では子宮内膜症の合併が高頻度にみられる。
問題059 卵巣明細胞腺癌で正しいのはどれか。
a)20歳代の若年女性に好発する。
b)上皮性卵巣癌で最も頻度が高い。
c)進行期ではⅠ期癌が最も多い。
d)hobnail patternは予後不良である
e)プラチナ製剤が奏功する。
問題060 卵巣腫瘍と腹膜偽粘液腫で正しいのはどれか。
a)多量の血性腹水が貯留した状態である。
b)漿液性境界悪性腫瘍でしばしば認められる。
c)粘液性嚢胞腺癌に合併することはない。
d)手術では虫垂切除も行なう必要がある。
e)術後のTJ化学療法が奏功する。
―――――――――――――――――――――――――
解答例 (誤答の場合は御指摘ください)
問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
解答:a
a)ブレンナー腫瘍: 表層上皮性・間質性腫瘍。特異な上皮構造(移行上皮型の充実巣)と間質の増殖を伴い、大部分が良性である。上皮細胞の核はしばしば縦溝を呈し、コーヒー豆様(coffee-bean nuclei)と表現。境界悪性腫瘍は増殖性ブレンナー腫瘍、悪性腫瘍は悪性ブレンナー腫瘍と呼ばれる。
b)未分化胚細胞腫: 胚細胞腫瘍。原始生殖細胞に類似した比較的大型の細胞とそれを取り巻くような小形の円形細胞から構成される2相性の腫瘍、若年者に好発、両側性が多い。
c)漿液性嚢胞腺腫: 表層上皮性・間質性腫瘍。卵巣表層上皮が卵管上皮への分化を示す良性腫瘍。卵管と同様に線毛細胞が観察される。単房性の嚢胞性腫瘤であることが多く、内壁も卵管壁に似てしばしば乳頭状構造を呈する。
d)顆粒膜細胞腫: 性索間質性腫瘍。顆粒膜細胞に類似した細胞が主体の境界悪性型腫瘍。しばしばエストロゲンを産生する。
e)莢膜細胞腫: 性索間質性腫瘍。莢膜細胞に類似した細胞が主体の良性腫瘍。エストロゲンを産生する。
******
問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド
解答:b
b)性索間質性腫瘍。ステロイドホルモン産生腫瘍。ライディク細胞、黄体化細胞ないし副腎皮質細胞類似の細胞からなる腫瘍。ライディク細胞腫(良性)、間質性黄体腫(良性)、分類不能型(境界悪性)に分類。
******
問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei
解答:b
b)卵黄嚢腫瘍:特徴ある多彩な組織像を呈する腫瘍で、種々の組織像が混在し、移行もみられる。免疫組織化学的にAFPが証明される。主として次の4 組織像からなる。
①内胚葉洞型:最も高頻度で、網目状、Schilller-Duval body(腫瘍細胞が血管周囲に配列),hyaline globules(好酸性球状の硝子様小球)などがみられる。
②多嚢胞性卵黄型:卵黄嚢に類似した多数の嚢胞からなり、一層の扁平な中皮様細胞に被覆。
③類肝細胞型:未熟肝細胞あるいは肝細胞癌に類似する腫瘍細胞が索状に配列。
④腺型:立方形の腫瘍細胞が管状、胞巣状あるいは原腸状配列を示す。
******
問題054 卵巣腫瘍で誤っているのはどれか。
a)漿液性腺癌はpsammoma bodyをしばしば伴う。
b)わが国では明細胞腺癌の発生頻度が欧米に比し高い。
c)移行上皮癌はブレンナー腫瘍成分を認めないものをいう。
d)良性胚細胞腫瘍の大部分は卵巣甲状腺腫である。
e)未熟奇形腫では未熟神経組織の量が予後と相関する。
解答:d
c)悪性ブレンナー腫瘍と移行上皮癌との区別は、良性のブレンナー構造を混在すれば前者であり、無ければ後者とWHO/日産婦は分類している。
d)胚細胞性腫瘍の90%以上が成熟奇形腫である。
******
問題055 卵巣腫瘍と腫瘍マーカーの組み合わせで誤っているのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌 - CA125
b)粘液性嚢胞腺癌 - CA19-9
c)顆粒膜細胞腫 - エストロゲン
d)卵黄嚢腫瘍 - AFP
e)Krukenberg腫瘍 - SCC
解答:e
******
問題056 卵巣腫瘍のMRI検査でT1強調像、T2強調像ともに低信号を呈するのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌
b)粘液性嚢胞腺癌
c)線維腫
d)成熟嚢胞性奇形腫
e)子宮内膜症性嚢胞
解答:c
c)線維腫は、T1、T2 強調画像でいずれも均一な低信号を示す境界明瞭な腫瘤として認められ、信号強度は子宮筋腫に類似する。
******
問題057 卵巣がんで誤っているのはどれか(卵巣がん治療ガイドライン)
a)わが国における罹患数は毎年約6,000人である。
b)わが国では1995年には3,892人が死亡した。
c)Ⅰ期の5年生存率は90%を越える(1998~1994年、FIGO)。
d)Ⅱ期の5年生存率は約70%である(1998~1994年、FIGO)。
e)Ⅲ期の5年生存率は約50%である(1998~1994年、FIGO)。
解答:e
b)わが国の卵巣がん死亡数は、1995年には3,892人、1996年には4,006人、2005年には4467人と、明らかに近年死亡数が増加傾向にある。
c)Ⅰ期の5年生存率は92.55%である。
d)Ⅱ期の5年生存率は70.12%である。
e)Ⅲ期の5年生存率は37.45%である。
******
問題058 卵巣癌で正しいのはどれか。
a)漿液性腺癌の多くは境界型悪性腫瘍を経て発生する。
b)粘液性腺癌では境界悪性腫瘍病変の合併は稀である。
c)類内膜腺癌の多くは内膜増殖症を経て発生する。
d)類内腺腺癌が子宮と卵巣にあれば原発巣は子宮である。
e)明細胞腺癌では子宮内膜症の合併が高頻度にみられる。
解答:e
******
問題059 卵巣明細胞腺癌で正しいのはどれか。
a)20歳代の若年女性に好発する。
b)上皮性卵巣癌で最も頻度が高い。
c)進行期ではⅠ期癌が最も多い。
d)hobnail patternは予後不良である
e)プラチナ製剤が奏功する。
解答:c
b)卵巣癌の6~8%を占める。
c)約50%がFIGOⅠ期症例である。
e)化学療法が奏功せず、予後は漿液性腺癌に比較して不良である。
******
問題060 卵巣腫瘍と腹膜偽粘液腫で正しいのはどれか。
a)多量の血性腹水が貯留した状態である。
b)漿液性境界悪性腫瘍でしばしば認められる。
c)粘液性嚢胞腺癌に合併することはない。
d)手術では虫垂切除も行なう必要がある。
e)術後のTJ化学療法が奏功する。
解答:d
腹膜偽粘液腫の大多数は、卵巣原発ではなく、消化管とくに虫垂原発癌の腹膜播腫による。化学療法が無効で、治療法は頻回の腫瘍切除しかない。進行は遅いが治癒は難しい。