【問題061~問題070】
問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。
問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。
問題063 転移性卵巣癌で正しいのはどれか。
a)悪性卵巣腫瘍の約40%を占める。
b)20歳代の若年女性に頻度が高い。
c)ほとんどが片側性発生である。
d)原発性では肺癌が最も多い。
e)胃癌の転移は印環細胞癌が多い。
問題064 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)で正しいのはどれか。
a)一側の卵巣に限局する被膜浸潤を認める場合はⅠb期である。
b)骨盤腹膜に顕微鏡的な播種を認める場合はⅢb期である。
c)直径2cmをこえる腹腔内播種を認める場合はⅢc期である。
d)肝実質転移は組織学的に確認された場合にのみⅣ期とする。
e)大量胸水の存在は悪性細胞の有無にかかわらずⅣ期とする。
問題065 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)でⅣ期はどれか。
a)膀胱漿膜浸潤
b)肝表面の播種
c)鼠径リンパ節転移
d)縦隔リンパ節転移
e)胸水貯留で細胞診陰性
問題066 卵巣癌の妊孕性温存手術で誤っているのはどれか。
a)基本術式は患側付属器摘出術と大網切除術である。
b)開腹所見がⅠa期と思われても腹腔細胞診を採取する。
c)進行期Ⅰa期を対象とし、病理組織所見は問わない。
d)後腹膜リンパ節の評価は触診、視診、必要に応じ生検で行う。
e)対側卵巣の生検は肉眼的に異常所見が認められた場合に行う。
問題067 卵巣癌の手術用語(卵巣がん治療ガイドライン、2004)で正しいのはどれか。
a)基本術式とは患側付属器摘出術、子宮摘出術、大網切除術をいう。
b)staging laparotomyとは進行期の確定に必要な手技を含む手術をいう。
c)試験開腹とは原発腫瘍の摘出が困難なため何もしないで閉腹する手術をいう。
d)cytoreductive surgeryとは腫瘍減量のために腸管切除を伴う手術をいう。
e)second look operationとは初回手術の6か月後に行う再開腹手術をいう。
問題068 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)Ⅰa期で組織学的分化度grade 1の症例では術後化学療法は省略できる。
b)進行癌におけるprimary cytoreductive surgeryの意義は確立されている。
c)進行癌の術後化学療法には標準治療としてTJ療法が行なわれる。
d)進行癌におけるsecond look operationは予後改善効果がある。
e)interval debulking surgeryがoptimalであれば予後改善が期待できる。
問題069 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)術前化学療法によりinterval debulking surgeryで腫瘍摘出率が向上する。
b)早期卵巣癌に対する維持(地固め)化学療法の有用性は示されていない。
c)腹腔内化学療法は抗がん剤静脈内投与にとって代わる標準療法ではない。
d)造血幹細胞移植併用の超大量化学療法で生存期間延長の報告がある。
e)化学療法後の再発例では放射線療法も選択肢の一つとなる。
問題070 再発卵巣癌の治療で正しいのはどれか。
a)手術療法は適応とならない。
b)初回化学療法後6か月以内の再発は薬剤抵抗性の可能性が高い。
c)初回化学療法後6か月以降の再発には薬剤の変更が必要である。
d)シスプラチン耐性例にはカルボプラチンが第1選択となる。
e)化学療法では単剤よりも多剤併用療法が有効である。
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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)
問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。
解答:b
a)成熟嚢胞性奇形腫の悪性化は約2%の頻度である。
b)閉経後女性に発生することが多い。
c)腫瘍径の大きいものが多い。腫瘍の急速な増大を示す場合がある。
d)すべてが片側発生である。
e)80%は扁平上皮癌である。
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問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。
解答:a
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が高い。
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問題063 転移性卵巣癌で正しいのはどれか。
a)悪性卵巣腫瘍の約40%を占める。
b)20歳代の若年女性に頻度が高い。
c)ほとんどが片側性発生である。
d)原発性では肺癌が最も多い。
e)胃癌の転移は印環細胞癌が多い。
解答:e
a)癌患者の剖検時に発見される卵巣転移率は肉眼的には6%で、顕微鏡的には12%に達する。
c)両側性は65%~75%である。
d)卵巣転移の原発巣は、消化管、乳腺、女性性器の癌が90%以上を占める。
e)印環細胞癌(signet ring cell carcinoma、粘液産生性の腺癌細胞が印環細胞を作り、粘液を細胞内に貯留しながら、びまん性に浸潤するもの): 原発巣の大多数は胃癌で、極めてまれに大腸癌や乳癌がある。
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問題064 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)で正しいのはどれか。
a)一側の卵巣に限局する被膜浸潤を認める場合はⅠb期である。
b)骨盤腹膜に顕微鏡的な播種を認める場合はⅢb期である。
c)直径2cmをこえる腹腔内播種を認める場合はⅢc期である。
d)肝実質転移は組織学的に確認された場合にのみⅣ期とする。
e)大量胸水の存在は悪性細胞の有無にかかわらずⅣ期とする。
解答:c
a)Ⅰc期: 腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが、被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水または洗浄の細胞診にて悪性細胞の認められるもの。
b)Ⅲa期: リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。
c)Ⅲc期: 直径2cmをこえる腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移の認められるもの。
d)肝実質転移は組織学的(細胞学的)に証明されることが望ましいが、画像診断で転移と診断されたものもⅣ期とする。
e)胸水の存在によりⅣ期とする場合には、胸水中に悪性細胞を認めなければならない。
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問題065 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)でⅣ期はどれか。
a)膀胱漿膜浸潤
b)肝表面の播種
c)鼠径リンパ節転移
d)縦隔リンパ節転移
e)胸水貯留で細胞診陰性
解答:d
Ⅲ期: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜、または鼠径部のリンパ節転移を認めるもの。また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや、肝表面への転移の認められたものもⅢ期とする。
Ⅲa: リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。
Ⅲb: リンパ節転移陰性で、組織学的に確認された直径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの。
Ⅲc: 直径2cmをこえる腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移の認められるもの。
【注1】 腹腔内病変の大きさは最大のものの径で示す。すなわち、2cm以下のものが多数認められてもⅢbとする。
【注2】 リンパ節郭清が行われなかった場合、触診その他できうるかぎりの検索で知りえた範囲で転移の有無を判断し進行期を決定する。
Ⅳ期: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、遠隔転移を伴うもの
胸水の存在によりⅣ期とする場合には、胸水中に悪性細胞を認めなければならない。また肝実質への転移はⅣ期とする。
【注】 肝実質転移は組織学的(細胞学的)に証明されることが望ましいが、画像診断で転移と診断されたものもⅣ期とする。
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問題066 卵巣癌の妊孕性温存手術で誤っているのはどれか。
a)基本術式は患側付属器摘出術と大網切除術である。
b)開腹所見がⅠa期と思われても腹腔細胞診を採取する。
c)進行期Ⅰa期を対象とし、病理組織所見は問わない。
d)後腹膜リンパ節の評価は触診、視診、必要に応じ生検で行う。
e)対側卵巣の生検は肉眼的に異常所見が認められた場合に行う。
解答:c
妊孕性温存手術を行うことのできる臨床病理学的な必要条件: Ⅰa期で高分化型または境界悪性腫瘍であること。明細胞癌は除かれる。
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問題067 卵巣癌の手術用語(卵巣がん治療ガイドライン、2004)で正しいのはどれか。
a)基本術式とは患側付属器摘出術、子宮摘出術、大網切除術をいう。
b)staging laparotomyとは進行期の確定に必要な手技を含む手術をいう。
c)試験開腹とは原発腫瘍の摘出が困難なため何もしないで閉腹する手術をいう。
d)cytoreductive surgeryとは腫瘍減量のために腸管切除を伴う手術をいう。
e)second look operationとは初回手術の6か月後に行う再開腹手術をいう。
解答:b
a)基本術式: 両側付属器切除術・子宮摘出術・大網切除術
b)staging laparotomy: 進行期の確定に必要な手技を含む手術
c)exploratory laparotomy(試験開腹術): 原発腫瘍の摘出が困難で生検と最小限の進行期確認にとどめる手術
d)debulking (cytoreductive) surgery(腫瘍減量手術): 病巣の完全摘出または可及的に最大限の腫瘍減量に必要な手技を含む手術
e)second look operation (SLO): 初回手術後の臨床的寛解例に対する化学療法の効果判定を目的として行われる手術。その際発見された再発腫瘍を切除するものはSLO/SDSと表現。(SDS=secondary debulking surgery)
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問題068 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)Ⅰa期で組織学的分化度grade 1の症例では術後化学療法は省略できる。
b)進行癌におけるprimary cytoreductive surgeryの意義は確立されている。
c)進行癌の術後化学療法には標準治療としてTJ療法が行なわれる。
d)進行癌におけるsecond look operationは予後改善効果がある。
e)interval debulking surgeryがoptimalであれば予後改善が期待できる。
解答:d
d)SLOは治療後の病変の有無を最も正確に評価できる方法であるが、その治療的意義に関する科学的根拠に乏しく、現時点では臨床試験以外には適応されない。
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問題069 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)術前化学療法によりinterval debulking surgeryで腫瘍摘出率が向上する。
b)早期卵巣癌に対する維持(地固め)化学療法の有用性は示されていない。
c)腹腔内化学療法は抗がん剤静脈内投与にとって代わる標準療法ではない。
d)造血幹細胞移植併用の超大量化学療法で生存期間延長の報告がある。
e)化学療法後の再発例では放射線療法も選択肢の一つとなる。
解答:d
造血幹細胞移植を併用することで通常投与量の5~10倍まで増量が可能とする大量化学療法は、いずれも治療成績を向上できるとする報告はなく、推奨されない。
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問題070 再発卵巣癌の治療で正しいのはどれか。
a)手術療法は適応とならない。
b)初回化学療法後6か月以内の再発は薬剤抵抗性の可能性が高い。
c)初回化学療法後6か月以降の再発には薬剤の変更が必要である。
d)シスプラチン耐性例にはカルボプラチンが第1選択となる。
e)化学療法では単剤よりも多剤併用療法が有効である。
解答:b
再発卵巣癌に対する化学療法の奏功期間は初回化学療法の奏功期間を超えることはなく、化学療法の限界も認識すべきである。一般的には再発までの期間が長いほど2次化学療法の奏功率は高い。一般的に初回化学療法後6か月以内の再発は初回化学療法に抵抗性ありと判断され、6か月以降の再発には抵抗性なしと判断されるため、初回と同じ抗癌剤が推奨される。