ある産婦人科医のひとりごと

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第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題071~問題080

2007年11月20日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題071~問題080】

問題071 TJ療法(パクリタキセル+カルボプラチン)3週間毎投与で正しいのはどれか。
a)薬剤投与順序はカルボプラチンが先でパクリタキセルが後である。
b)パクリタキセルの投与量は17.5 mg/m2静注、day 1(3時間投与)である。
c)カルボプラチンの投与量はAUC=1-2静注、day 1(1-2時間投与)である。
d)Calvertによるカルボプラチン投与量は目標AUCx(GFR+25)で計算できる。
e)カルボプラチン投与による急性過敏性反応は初回治療後に最も多い。

問題072 卵巣癌の化学療法で誤っているのはどれか。
a)パクリタキセルは24時間投与に比し3時間投与で神経毒性が高度である。
b)化学療法をスケジュールどおりに遂行するためG-CSFを投与する。
c)進行癌に対する維持化学(地固め)療法の生存期間延長効果は未知である。
d)進行した境界悪性腫瘍における補助化学療法の有用性は証明されていない。
e)初回療法から6ヶ月以上の再発では同じ化学療法が奏効する可能性が高い。

問題073 卵巣悪性胚細胞腫瘍に対する第一選択の化学療法はどれか。
a)シスプラチン/ドキソルビシン/シクロホスファミド
b)パクリタキセル/カルボプラチン
c)イリノテカン/シスプラチン
d)ブレオマイシン/エトポシド/シスプラチン
e)フルオロウラシル/シスプラチン

問題074 卵管癌で誤っているのはどれか。
a)卵管溜水症の形態を示すことがある。
b)卵巣癌に準じた腫瘍減量手術を行う。
c)寛解導入化学療法にTJ療法を用いる。
d)術後治療の第一選択は放射線療法である。
e)CA125が腫瘍マーカーとして有用である。

問題075 原発性腹膜腺癌で正しいのはどれか。
a)組織型として類内膜腺癌が多い。
b)術前化学療法の有用性が証明されている。
c)化学療法は白金製剤を中心にして行われる。
d)生存期間は進行卵巣癌に比べて著しく短い。
e)術後治療としてホルモン療法も有用である。

問題076 わが国で最も発生頻度が低い癌はどれか。
a)外陰癌
b)腟癌
c)子宮頸癌
d)子宮体癌
e)卵巣癌

問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題078 子宮頸部悪性腺腫と関連が深いのはどれか。
a)遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary nonpolyposis colorevtal cancer)
b)家族性大腸ポリポーシス (familial adenomatous polyposis coli)
c)リ・フラウメニ症候群 (Li-Fraumeni syndrome)
d)カウデン病 (Cowden syndrome)
e)ポイツ・イエーガー症候群 (Peutz-Jeghers syndrome)

問題079 タイプⅠ子宮体癌の遺伝子異常で頻度が高いのはどれか。
(1)microsatellite instability (MI)
(2)K-ras
(3)PTEN
(4)p53
(5)BRCA1

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題080 子宮体部の漿液性腺癌で高頻度に変異がみられる遺伝子はどれか。
a)PTEN
b)K-ras
c)BRCA1
d)p53
e)MLH1

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題071 TJ療法(パクリタキセル+カルボプラチン)3週間毎投与で正しいのはどれか。
a)薬剤投与順序はカルボプラチンが先でパクリタキセルが後である。
b)パクリタキセルの投与量は17.5 mg/m2静注、day 1(3時間投与)である。
c)カルボプラチンの投与量はAUC=1-2静注、day 1(1-2時間投与)である。
d)Calvertによるカルボプラチン投与量は目標AUCx(GFR+25)で計算できる。
e)カルボプラチン投与による急性過敏性反応は初回治療後に最も多い。

解答:d

a)パクリタキセル→カルボプラチンの順で投与する。

b)パクリタキセルの投与量:60~80mg/m2静注、day 1、8、15

c)カルボプラチンの投与量:AUC 6、day 1、3週間隔で投与
 またはAUC 2、day 1、8、15、4週間隔で投与

d)Calvertによるカルボプラチン投与量=目標AUCx(GFR+25)

e)カルボプラチン投与による急性過敏性反応は初回や2~3回目の治療では発症することは稀でカルボプラチン投与の半ばで発症することが多い。

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問題072 卵巣癌の化学療法で誤っているのはどれか。
a)パクリタキセルは24時間投与に比し3時間投与で神経毒性が高度である。
b)化学療法をスケジュールどおりに遂行するためG-CSFを投与する。
c)進行癌に対する維持化学(地固め)療法の生存期間延長効果は未知である。
d)進行した境界悪性腫瘍における補助化学療法の有用性は証明されていない。
e)初回療法から6ヶ月以上の再発では同じ化学療法が奏効する可能性が高い。

解答:b

一次予防を目的としたCSF投与は原則的には推奨されない。重度の好中球減少症発症のリスクが20%以上見込まれるようなハイリスク症例には一次予防投与を考慮する。二次予防(化学療法2サイクル目でのCSFの使用)としてのCSF投与もルーチンには推奨されない。CSFを投与して化学療法のスケジュールをこなしても生存期間は改善しない。

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問題073 卵巣悪性胚細胞腫瘍に対する第一選択の化学療法はどれか。
a)シスプラチン/ドキソルビシン/シクロホスファミド
b)パクリタキセル/カルボプラチン
c)イリノテカン/シスプラチン
d)ブレオマイシン/エトポシド/シスプラチン
e)フルオロウラシル/シスプラチン

解答:d

卵巣悪性胚細胞腫瘍では、BEP療法(ブレオマイシン/エトポシド/シスプラチン)が標準的治療である。

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問題074 卵管癌で誤っているのはどれか。
a)卵管溜水症の形態を示すことがある。
b)卵巣癌に準じた腫瘍減量手術を行う。
c)寛解導入化学療法にTJ療法を用いる。
d)術後治療の第一選択は放射線療法である。
e)CA125が腫瘍マーカーとして有用である。

解答:d

卵管癌の治療方針は卵巣癌と同様であり、手術療法と化学療法を組み合わせる。両側付属器切除術、単純子宮全摘術、大網切除術、および骨盤内および傍大動脈リンパ節郭清術を行い、腹腔内播種性病変も可能な限り切除する。また卵管から直接浸潤した隣接臓器を合併切除することは予後改善における意義が大きい。術後化学療法として、これまでのCAP(cyclophosphamide+adriamycin+cisplatin)療法が行われ有効性が報告されてきたが、最近のTJ(paclitaxel+calboplatin)療法も有効である。

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問題075 原発性腹膜腺癌で正しいのはどれか。
a)組織型として類内膜腺癌が多い。
b)術前化学療法の有用性が証明されている。
c)化学療法は白金製剤を中心にして行われる。
d)生存期間は進行卵巣癌に比べて著しく短い。
e)術後治療としてホルモン療法も有用である。

解答:c

a)組織学的に卵巣漿液性癌と区別できない腫瘍が腹膜表面にびまん性に認められるが、卵巣は正常ないしごく表層のみに認められる。

c)治療は卵巣癌に準じて行われる。

d)予後は卵巣癌よりも悪く、一時的軽快は見られても再発は必発であり、平均生存期間は14.7ヵ月とされている。

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問題076 わが国で最も発生頻度が低い癌はどれか。
a)外陰癌
b)腟癌
c)子宮頸癌
d)子宮体癌
e)卵巣癌

解答:b

外陰癌:全女性性器癌の約4%

腟癌:全女性性器癌の約1~2%

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問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

HPVのもつ2つの癌原遺伝子、E6遺伝子とE7遺伝子が発癌に関与している。E6蛋白質とE7蛋白質はHPVが産生する蛋白質で、宿主細胞の癌抑制遺伝子産物であるp53蛋白質、Rb蛋白質と結合し、その機能を抑制する。

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問題078 子宮頸部悪性腺腫と関連が深いのはどれか。
a)遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary nonpolyposis colorevtal cancer)
b)家族性大腸ポリポーシス (familial adenomatous polyposis coli)
c)リ・フラウメニ症候群 (Li-Fraumeni syndrome)
d)カウデン病 (Cowden syndrome)
e)ポイツ・イエーガー症候群 (Peutz-Jeghers syndrome)

解答:e

子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)は、ポイツ・イエーガー症候群 PJS(Peutz-Jeghers syndrome:STK11遺伝子の欠失)と高い頻度の合併がある。

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問題079 タイプⅠ子宮体癌の遺伝子異常で頻度が高いのはどれか。
(1)microsatellite instability (MI)
(2)K-ras
(3)PTEN
(4)p53
(5)BRCA1

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

タイプⅠ子宮体癌(類内膜腺癌)は、過剰のエストロゲンの支持を受けた一連の増殖性病変を経て発生し、子宮体癌の3/4を占める。タイプⅠ子宮体癌では、microsatellite instability (MI)、K-ras変異、PTEN変異が高率で見られる。MIは、類内膜腺癌なかでも低分化腺癌に多く、漿液性腺癌ではまれである。

癌組織では正常組織にはみられない塩基の繰り返し配列数の異常が検出されることがあり、これをmicrosatellite instability (MI)という。MIは、DNAミスマッチ修復異常によりDNA複製時のエラーの頻度が上昇していることを反映している。

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問題080 子宮体部の漿液性腺癌で高頻度に変異がみられる遺伝子はどれか。
a)PTEN
b)K-ras
c)BRCA1
d)p53
e)MLH1

解答:d

子宮体部の漿液性腺癌や低分化型腺癌では、p53変異が高率に見られる。明細胞癌に関しては特異的な遺伝子異常はこれまで報告されていない。