ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師不足の原因は何?

2008年07月03日 | 医療全般

コメント(私見):

地方で医師を安定的に確保していくためには、『地域で医師を育てる』という観点が今後ますます重要になっていくと思います。

地域に若い医師を呼ぶためには、その地域に基本的な専門医資格が取得できる研修施設が存在することが必須条件です。そのためには地域の中核病院において、各診療科の指導医陣の充実、最新医療設備の整備、豊富な症例数などの研修施設としての基準を満たす必要があります。現状では、そのような基準を満たす魅力的な研修施設が地方には少なく、若い医師達が都会の有名病院に集中しやすい状況になっています。

今後、地方における医師不足の問題を改善していくためには、『地域の中で若い医師が育ち、やがて巣立っていく。そして大学病院や他地域の病院などで更なる研鑽を積んで大きく成長し、やがて指導医としてまた古巣に戻って来てくれる。』というような好循環を安定的に創り出すことを目指して、地域を挙げてこの問題に長期戦で取り組んでいく必要があると思います。

****** 共同通信、2008年6月30日

Q&A 医師不足対策

【要約】 現状では毎年約7700人の新たな医師が誕生している。厚生労働省の試算によると、医師数は、退職した人数などを差し引いても、毎年3500~4000人のペースで増え続けている。しかし、救急や産科、小児科などで医師が足りず、廃院や休診に追い込まれる「地域医療の崩壊」が全国各地で問題となっている。へき地や離島では以前から医師確保に苦労してきたが、最近は都市部でもそうした傾向が目立ってきた。救急搬送の受け入れを拒否される「たらい回し」も勤務医不足が主な要因とされている。医師不足の原因として多くの医療関係者が指摘するのは、2004年に導入された臨床研修制度の影響である。大学を卒業した医師が、症例が多く待遇も良い都市部の民間病院などを研修先に選ぶようになり「大学病院離れ」が進んだ。その結果、これまで地域医療を支えてきた大学病院からの派遣医師が減り、地方の医師不足が一気に加速したと言われている。政府も医療現場の医師不足状態を認め、07年夏には臨時医師派遣や暫定的な医学部定員増などの緊急対策を打ち出した。ただ、地域や特定の診療科での偏在が問題であって、医師の総数については将来的に過剰となるおそれがあるとして、1982年から続く医師数抑制の方針自体は変えなかった。今回、政府は「医学部定員の削減に取り組む」と明記した97年の閣議決定を事実上撤回し、定員を増やす方針を決めた。しかし、医学部1年生が教育、研修を経て医師として活躍するには約10年を要するので、医師不足への即効薬にはならない。短期的な対策として政府は、地方の病院を希望する研修医が増えるよう臨床研修制度を見直すとともに、宿直が多い勤務医の過酷な労働環境の改善や、女性医師が結婚、出産後も仕事を続けられる環境整備に努める方針である。一方で患者側も、軽症なのに休日・夜間の救急外来を利用するといった人が増えていることが医療現場を疲弊させている実態を理解し、地域医療をともに支えていく意識を持つことが求められる。

(共同通信、2008年6月30日)