ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科医、新生児科医、麻酔科医の適正配置

2008年07月13日 | 地域周産期医療

少ない産婦人科医がそれぞれ別の病院に点在して働いていると、多くの人手を必要とする産科救急にどの病院も適切に対応できなくなってしまいます。産婦人科医数が激減している現状の医療環境において、産科医療の質を確保するためには、各医療圏内の限られた人数の産婦人科医を集約化して、産科救急にきちんと対応できる地域医療体制を確立する必要があります。

小児科も同様の事情で、公立・公的病院の小児科医不足は全国的に深刻な状況にあり、小児科医の拠点病院への集約化が緊急の課題となっていると聞いてます。

また、麻酔科医不足も全国的に大きな問題になっています。麻酔科医不足から手術件数を大幅に制限せざるを得ない病院も少なくありません。

周産期医療は、産科医、新生児科医、麻酔科医などの緊密な連携があって初めて成り立ちます。産婦人科、小児科、麻酔科それぞれの科の特殊な事情があるとは思いますが、各科の集約先病院がてんでバラバラでは困ります。医師の配置を統括する強力なリーダーシップの存在が不可欠だと思います。

しかし、集約化により、産婦人科医、小児科医、麻酔科医などが撤退してしまう病院や自治体、地域の住民の反発が当然予想されます。出産のための宿泊施設の整備,さらには道路整備、ヘリコプター搬送システムの充実などが行政側の課題になると考えられます。

****** 読売新聞、2008年7月9日

7施設を集約 死亡率低下

 青森県は1999年から2年連続、新生児死亡率(出生1か月まで)が全国で最も悪かった。そこで、県は2001年に、青森市の県立中央病院に新生児集中治療室(NICU)を開設。2004年には、県内の中心施設として「総合周産期母子医療センター」に指定し、約20億円をかけて体制を強化した。NICUの看護師を8人増やして40人体制とし、最新の人工呼吸器なども導入した。

(中略)

 新生児集中治療管理部長の網塚貴介さんは「経験豊かな医師や看護師らスタッフを集め、最新の設備を整えることで、充実した治療が可能になる」と言う。

 新生児死亡率が高かった時期、高度な周産期医療を担う病院が県内7か所に分かれ、2施設は超低出生体重児の1年間の診療数が1人だけという年もあった。

 病院を県内1か所に絞って体制を強化し、現在、県内の超低出生体重児の約8割を診るようになった。この間、新生児死亡率は全国で20番台にまで改善したこともあった。

 しかし今、県立中央病院の周産期医療は新たな問題に直面している。NICUへの入院患者数は開設当初より3割増え、年間約180人。一方、常勤医師数は2004年と同じ4人。4日に1度の当直をこなしながら支え、医師に過重な負担がかかってきている。

 昨年の新生児死亡率は全国で下から8番目にまで転落した。高度な医療施設での優秀な人材の確保。地方の多くの病院がこの問題を抱えている。

(読売新聞、2008年7月9日)

****** 読売新聞、2008年7月12日

地域周産期母子医療センター「迅速に帝王切開」3割だけ 麻酔科医不足が原因

 緊急帝王切開など高度な医療が必要なお産に当たるため、都道府県が指定する全国の地域周産期母子医療センターのうち、国が設置基準として求めている「30分以内に帝王切開ができる態勢」を昼夜問わずとっているのは、約3割に過ぎないことが厚生労働省研究班(主任研究者=池田智明・国立循環器病センター周産期科部長)の全国調査でわかった。

 産科、小児科より麻酔科医不足が原因と答えた施設が多く、麻酔科医確保も重要な課題であることが判明した。

(以下略)

(読売新聞、2008年7月12日)