芝居の書き割りに
乾坤一擲の太釘が打たれた
すべてが暴かれる
すべてが崩れてくる
花のように育てていた
美しい娘が
突然醜い小男に変わる
竹のように真っ直ぐに育てていた
美しい若者が
突然毒を吐く蛇に変わる
清潔で品の良い伽藍が
ゴミ捨て場の惨状に激変する
光輪をかぶった聖者が
飴をなめている蠅のような幼児に変わる
崇めていた神像が
鳥葬の骸に変わる
国家予算をかけて建てた
美しい三角関数のロケットが
遊技場の張りぼてに変わる
大枚の選挙費用をかけてたてた大統領が
大工のアルバイトに変わる
ダイヤに着飾った女優が
珍妙な毒女に変わる
やさしかった母が
突然他人に変わる
美しかった父が
突然糞になる
なにもかもは嘘だったのかと
芝居の終わった後のむなしさに
風吹かれているその目の前に
つもりつもった
白紙の宿題が
強大な山となって
降りてくる