月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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シリウス・7

2014-12-20 07:04:20 | 詩集・瑠璃の籠

新しい朝日が
羊を抱いて昇ると
枝に残っていた
最後の金のりんごが
熟して落ちてくる

りんごは 地に落ちるなり
熱い光の湯となって
世界を濡らし始めるのだ
だれにも見えない
それは愛の化学変化だ

透明な風の中を
白いタリルが泳いでいる
幻のように
果たせなかった約束を
沈黙に飲み込んで
見せつけてゆくように

もはや二度と
元に戻ることはない
愛 は
元の愛ではないのだ
人よ

幽霊ばかりが生きている世界に
神が真実の命を突き刺してゆく
太陽が昇り切る頃
神は砂時計の中に
ひとひらの薔薇の花びらを落とす

薔薇の砂時計が
時間を計り切ると
青い空に塗りこめられていた
アフラ・マズダーが目を覚ます

豚小屋の中で 糞にまみれて
うれしそうに糞を食っている人間よ
まだ気づかぬか
まだわからないのか

白金の翼を広げた
マズダーの使いよ
闇のように黒く
雪よりも白いその剣を
今こそ抜きはらえ





コメント
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