絶対に嫌だ
というのが
馬鹿の心の中に巣くう
魔なのです
美しい女など
絶対に嫌だ
こんな自分など
絶対に嫌だ
何かにつけ
絶対に嫌だと言って
人が絶対に嫌がるような
馬鹿なことばかりし続ける
それが馬鹿なのです
何が絶対に嫌なのか
その言葉の向こうに
封じ込めているものは何なのか
それは絶対に思い出したくない
自分の過去の罪なのです
あまりにも馬鹿な理由で
絶対にやってはいけないことを
してしまった
それですべての人に嫌われた
そんな人間が自分なのだと
それがつらくてならず
人はそれを
言い訳にもならぬ言い訳で覆い隠し
見えないところに押し込めて
絶対に嫌だという言葉で
封印してしまうのです
思い出すのも嫌だ
逃げても逃げても消えないのが嫌だ
あんなことをしたというだけで
人がみんな離れていく
それが嫌だ
それが嫌だ
何もかも嫌だ
全部嫌だ
それでとうとう
神が創ってくださった
この世界そのものを嫌だと言い
神が人間を創ってくださったこと
そのものを嫌だと言い
彼らは
二度と帰っては来れない荒野へと
弾き飛ばされてしまうのです
嫌だ 嫌だ
絶対に嫌だ
もう人間など嫌だ
もう自分など嫌だ
二度と嫌だ
どこへ行けばいいのか
この世界に
自分ではないものが行けるところなどないのに
虚無と存在の境界にある岸辺に
神が創ってくださった片隅の世界で
そのものは自問し続けるのだ
嫌だ 嫌だ
なぜこんなにつらいのか
嫌だ