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この平穏退屈な日々にもそれなりに感動って在るもの。

カミーユ クローデル

2010-08-25 16:21:29 | 私の読書日記
もう15年以上前に“カミーユ クローデル”という映画を見た。
イザベル アジャーニ主演の衝撃的な内容の映画だった。


日本では“考える人”で有名な彫刻家ロダンの弟子で、自身天才的な彫刻家であり、またロダンの愛人であり、ミューズでもあった、カミーユ クローデル

およそ15年もの時を過ごした師ロダンとの愛に破れ、百年前のフランスで、美貌の女性彫刻家を襲った悲劇とは・・。

いったいどうして、人生最後の30年間という長い長い月日を、精神を蝕まれ、精神病院に幽閉されて過ごさなければならなかったのか。


想像するだけで、可哀想で可哀想で。


本の表紙は彼女の20歳の時の肖像。
その何かもの言いたげな、訴えかけてくるような瞳は、それから百年以上を経たまったく異国の地に住む私の心を揺さぶって離さないものがある。

5百ページ以上ある分厚い本なのに、毎日暇を見つけては呼吸も忘れるくらい夢中で読み進めた。可哀想で仕方なかった。彼女は天才だった。まぎれもなく、天才だったと思う。


ロダンと知り合った時、彼には長年連れ添った内縁の妻がいて、(二人の間にはカミーユとほぼ同年代の息子がいる)カミーユは19歳だった。

カミーユはロダンの彫刻に魅せられ、尊敬し、そして愛し始める。
ロダンのほうも同じ気持ちだったし、それ以上にカミーユの美しさ(彫刻の才能や激情も含め)はロダンの製作の意欲を掻き立てた。
ロダンはカミーユをモデルに“パンセ”他素晴らしい作品を多数制作。(“パンセ”は凄い。あの作品を前にしたら、きっと誰もが息を呑むだろう)

途中カミーユはロダンの子供を妊娠するも、流産してしまう。
もし、その子が生まれていたら・・と二人の歴史も変っていたかもしれない。

だけど、運命は彼女に微笑まなかった。

彫刻は油絵なんかに比べて、金銭面もうんと大変で、ロダンも大変苦労した末に(内縁の妻であるローズ ブーレに随分支えられた)彫刻で食べていけるようになった。
カミーユも早くも頭角を現していたとはいえ、なかなかそれ1本で生業を立てるには厳しく、そんな気苦労もあり、ロダンとの破局もあり、だんだん精神が破壊されていく。

その過程で、随分自身の作品も壊してしまったようだ。


現在ロダン美術館では、カミーユの作品も展示してあり、私も数年前行って随分感動したものだったけど、やっぱりこの本を読んでしまったら、今もう一度行きたくて仕方ない。

ロダンは長い間内縁関係だった妻の、死ぬ2週間前に正式に籍を入れて結婚したという話が有名だし、美談のように通っているけれど、自分が死ぬ直前に口にした言葉は、
「パリにいる若い方の妻(カミーユのこと)に会いたい」
だったそうだ。

私はこの言葉を言ったと知った時は、溜息が出た。長い長い溜息が。
カミーユと別れてから、30年近い月日が経っているにも関わらず、今際の際の言葉がそれだったなんて。忘れてなかったなんて。

その頃、カミーユは病院の中。既にロダンを恨み、狂人化していたかもしれない彼女の耳に聞かせたかった言葉だった。


この本を読んでいて、思い出したのはやっぱり檀一雄の“火宅の人”私の中の究極のラブストーリーだ。いつも考えさせられる真実の愛とは、いったいどっちなのか、

カミーユとロダンの場合もそう。
ローズ ブーレはやっぱり身を引くべきだったのでは??
天才彫刻家同士の恋愛は、結局やがては破局を迎えたかもしれないけれど、もっとすごい作品が生まれてた可能性は高いわけで。

またいつかパリのロダン美術館を訪れよう。
その時まで二人の愛を大事に胸にしまって。






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