昨年の師走19日、ボクシング史に残る名レフィリー、スティーブ スモーガー氏が逝去されました(享年72歳/長年、闘病生活を送られていたそうです)。心よりご冥福をお祈りいたします。同月6日には、ミルズ レインという名レフィリーも85歳で逝去されています。一昨年師走には、トニー ペレスという素晴らしいレフィリーも他界されております。年齢という事もありますが、このように立て続けに悲しいニュースを聞くと本当に寂しいです。
(名レフィリー スティーブ スモーガー氏。)
1984年6月14日にリングの第3の男としてデビューを果たしたスモーガー氏。2018年8月11日の最後の試合まで、何と1051ものでレフィリーを務めました。200以上もの世界戦を捌き、また日本を含め、世界各地でその雄姿/技術を披露しました。
スモーガー氏が初めて務めた世界戦は、1986年4月27日、韓国のリングで行われたIBFフライ級戦、鄭 飛源(韓国)と 鄭 鍾寛(韓国)による韓国人同士のIBF世界戦。スモーガー氏は米国ニュージャージー州出身という事もあり、同州に拠点を置くIBFの世界戦によく登場されました。日本のリングでも下記に記載したように、鬼塚 勝也(協栄)をはじめ、いくつかの世界戦を捌いています。
質も量も兼ね備えたスモーガー氏。レーン氏、ペレス氏同様に、数々名勝負のレフィリーを務めました。
IBFジュニアバンタム級戦(1992年12月3日 イタリア):
挑戦者ケネディー マッキニー(米)KO11回2分48秒 王者ウェルカム ヌシタ(南ア)
*マッキニーが大逆転劇を演じ王座奪取。
WBAジュニアバンタム級戦(1992年12月11日 東京):
王者鬼塚 勝也(協栄)判定3対0(119-109、119-113、118-111)挑戦者アルマンド カストロ(メキシコ)
*「スパンキーK」のベストバウト。
IBFミドル級王座決定戦(1993年5月22日 ワシントンDC):
ロイ ジョーンズ(米)判定3対0(116-112x3)バーナード ホプキンス(米)
*後の大偉人同士による初戦。
3団体統一ミドル級戦(2001年9月29日 米国ニューヨーク州):
IBF/WBC王者バーナード ホプキンス(米)TKO12回1分18秒 WBA王者フェリックス トリニダード(プエルトリコ)
*2001年9月11日直後のニューヨークで、死刑執行人がカリブの天才パンチャーをKO。ホプキンスはその後、オスカー デラホーヤ(米)が保持していたWBO王座も吸収し、史上初の4団体統一王者となっています。
WBOスーパーフェザー級王座決定戦(2004年3月6日 米国ネバダ州):
ディエゴ コラレス(米)判定2対1(115-112x2、113-114)ホルヘ カサマヨール(キューバ)
*2000年代の中量級を沸かせた二人が大激闘を演じる。
WBAヘビー級戦(2005年4月30日 米国ニューヨーク州):
挑戦者ジェームス トニー(米)無効試合 王者ジョン ルイス(米)
*問題児のトニーが3対0(116-111x2、115-112)の判定勝利を収めるも、試合後のドーピング検査に引っ掛かってしまい、結果は無効試合に変更。
2団体ミドル級戦(2007年9月29日 米国ニュージャージー州):
挑戦者ケリー パブリック(米)TKO7回2分14秒 WBC/WBO級王者ジャーメイン テーラー(米)
*バーナード ホプキンス(米)からミドル級王座を奪ったテーラーが、ケリーの強打に沈む。その後パブリックはテーラーを返り討ち打ちにするも、無冠戦でホプキンスに一蹴されました。
WBAスーパーフライ級戦(2008年1月18日 横浜):
王者アレクサンデル ムニョス(ベネズエラ)判定3対0(117-111、115-113、115-114)挑戦者川嶋 勝重(大橋)
*井上 尚弥(大橋)の大先輩川嶋が、強打のムニョスに肉薄した好試合。
2団体スーパーミドル級戦(2011年12月17日 米国ニュージャージー州):
WBA王者アンドレ ワード(米)判定3対0(118-110、115-113x2)WBC王者カール フロッチ(英)
*スーパーミドル級トーナメント「スーパー6」の決勝戦。当時のスーパーミドル級戦線は、現在より数ランク上の世界のレベルでした。
IBOスーパーバンタム級王座決定戦(2012年9月18日 ロシア):
アレクサンデル バクティン(露/協栄)判定3対0(119-110、118-110、118-111)ロリー ガスカ(比)
*日本の協栄ジムに所属し、世界間違いなしと謡われた「サーシャ」の唯一の世界戦。その雄姿を、メジャー団体の世界戦のリングで見たかったです。
名試合がずらりと並びましたが、さすがに四桁の試合の中から10試合選出するというのは非常に困難でした。これらの試合もスモーガー氏のキャリアの中のごく一部に過ぎません。1980年代から2010年代のほとんどの著名選手たちは、同氏のお世話になったと言っていいでしょう。また、世界各地を渡り歩いたスモーガー氏ですが、一体いくつの国と地域でレフィリーを務められたのか数えようとしましたが、あまりにも多すぎたので断念。その活躍は当然の如く、国際ボクシングの殿堂入りをはじめ、多くの方面で評価されています。リング外では検察官や裁判官として職務を全うしたスモーガー氏。そういえばレーン氏も本職は裁判官でした。
(ボクシング界が世界に誇れる名レフィリー。)
ボクサー同様4回戦からレフィリーを務め、6回戦、8回戦、10回戦、地域やインター王座戦と徐々にステータスを上げていき、全世界で行われる世界戦の顔にまでなったスモーガー氏。男女ボクシング問わずにその雄姿をリング上で見る事が出来ました。まさにボクシングが世界に誇るレフィリーでした。