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海外ドラマや映画の感想いろいろ書いてます。

A Study in Pink Audio Commentary その7

2018-05-19 11:02:32 | Sherlock S1E1 Commentary
コメンタリ―続きです。

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モ:気に入っているシーン。
意地悪なシャーロックの温かさが垣間見える。支配的だが優しい笑顔を見せる。



ゲ:パイロット版の頃、メールで議論した。
問題はシャーロックという男が人好きのするタイプなのかということだ。
僕らの描くシャーロックは原作より人間味があると思う。



ゲ:彼のような人物に僕らが興味を持つのは普通とは違う部分があるからだ。
彼に「友達のジョンだ」と言わせてみたいし「豆を買っとく」と言わせたりした。
そのくらいなら問題ないと思う。だがそれを超えると彼の魅力がなくなってしまう。



モ:キャラクターを壊さないようセリフひとつひとつを検討しないと。
スー:第2話でカードを貸す場面があった。ふたりはカードを共有している。



モ:アンダーソン役のジョナサン・アリス。髭が無い。
本人もこれを聞くだろうから髭を剃らせた理由を言う。
パイロット版を見た人が付け髭をしてるから彼を悪者だと思ったんだ。
ジョナサン、ごめん。
ゲ:もう生やすな。



モ:このシーンから彼が過去にドラッグを使っていたと分かる。
ゲ:レストレードは知っている。
スー:様々な要素が・・・・ここにあるのよね?
ゲ:思い出した。「Waiting for Guffman」という映画がある。
クリストファー・ゲスト演じる監督のコーキーが言うんだ。
「ワトソンが言ったように要素は・・・続いてくるのだ。」



モ:大事なのはこのシーンにモリー以外の全員が揃っていることだ。
レストレードはずる賢い方法で威厳を保とうとしている。
シャーロックにとってはありがたいことじゃない。
レストレードはシャーロックが事件を解くと分かっている。だから頼んだ。



ゲ:だがシャーロックが主導権を握っていても警察は捜査を続ける。
裁判所に行くとか面倒な仕事があるから。
ゲ:出来上がった3つの脚本の中からたくさんの見事で印象的な名シーンが生まれた。
ラボのシーンもこのシーンも演技が最高だ。めったに見られる芝居じゃない。
型にはまらない柔軟性を持って声の高さやペースを変えれば演技に入り込めるものだ。



モ:ある夜、このシーンのことを考えていた。
登場人物たちが出てきて何かを話しシーンから消える。
「ドクター・フー」ではできなかった事だ。ひとりの話が5~6分の長さだからね。
スー:細かいけど素晴らしいと思ったのはコートが1階に置いてあるという設定よ。
シャーロックは2階でコートを着なくて済む。
モ:こっそり出かけるからね。



モ:「mephone」は僕が考えた。
ゲ:おかしな話だけどこうするしかない。
特定の有名なウェブブラウザや映画などを参考にして,
他人が考えたステキなデザインを訴えられない程度にマネて作り替える。
ゲ:ユニオンジャックのクッションは僕も持ってる。
ポールはクッションを見て聖アンデレ十字に替えたがった。
スー:スコットランド人だから。



モ:がっかりさせる事実だがこの運転手はフィル( フィル・デイヴィス)じゃない。
ゲ:ベネディクト?
モ:まさか。
ゲ:君は脚本でこの場面を怪談みたいに不気味に書いた。
それが映像にうまく再現されている。帽子と眼鏡だけがうかび幽霊が立っているみたいで恐ろしい。
スー:フィルは別のドラマを。
ゲ:「ホワイトチャペル」だ。
帽子がタクシー運転手すぎるとパイロット版で言っていたが君はフィルがいないなら帽子は残そうと。
スー:ある日曜日、またロンドンで撮影していたら隣で「ホワイトチャペル」を撮影していた。
制作者と話したら「すべて順調」だと言うの。嫉妬したわ。
ゲ:こっちはフィルがいなくて困った。



ゲ:「緋色の研究」と明らかに異なっているのは辻馬車の御者がふたつの丸薬を使う点だ。
モ:原作の目的は復讐だ。アメリカで妻を殺したひとたちに犯人は復讐をしている。
だから殺す相手は悪い奴らだ。だが彼は信心深いからチャンスを与える。
どっちが生き残るべきか神に決めてもらう。
ゲ:神が味方する。



モ:だが動機に関する回想が長すぎるのが原作の欠点だ。
だから彼にもっと単純な動機を与えた。動脈瘤を持っている設定は同じだけど。
原作ではジェファーソン・ホープ、僕らの犯人はジェフだ。
ホープ(希望)に殺されされるなんて最悪だ。
僕らの話と逆で原作では犯人がベイカー街に呼ばれる。
ゲ:種明かしのためだ。
モ:かばんを取りに来た彼にホームズは手錠をかける。
僕らは話したよね。コナン・ドイルのミスはホームズに薬を選ばせなかったことだ。
ふたつの薬からひとつを相手に選ばせてひとつは自分が飲むと言う発想は画期的だよ。



モ:コナン・ドイルはその見事さに気づいていなかった。
ゲ:君はラストに加えた。
スー:これがシャーロックの「中毒症」ね。
ゲ:危険だ。
モ:彼はこの高揚感を味わうため若いころはドラッグをやっていた。
ここで事件を終わらせることができるのに好奇心に勝てずに誘いに乗る。
シャーロックの荒っぽさについて一度こう書いたけどぎこちないからカットした。
「ルールがあり複雑だから正義の味方をする」



ゲ:ハードルを上げる
モ:だが荒っぽいシャーロックは話が進むにつれ「死んでもモリアーティを阻止する」と言う。
彼は単なる正義の味方ではなくもはや正義になった。
ゲ:正義そのもの。
モ:やんちゃなタイプかもしれないけど。でも大きな前進だ。すてきな話だよ。
タクシーの中
ゲ:だからワトソンを通して語られている。
原作にはホームズが語っているストーリーが2作品ありそれらも新鮮で魅力がある。
だけど第三者を通したほうがワクワク感が高まって面白い。
嫌な男である彼が愛すべき男になる瞬間を僕らは拾っている。人間味を持つ彼を見たいから。



モ:人間らしさは必要だ。
彼をずっと冷徹なイカれ野郎にはしておけない。
ゲ:ドラマの冒頭からシャーロックが危険を好む人間だと言うのは明らかだ。
サリーは「退屈に耐えられずそのうち人を殺す」と。だが突然ジョンが現れ2人は意気投合する。
ゲ:つまり感情がないわけじゃ・・・・
実際のシーンはないけど落ち込むと4日間口を利かずソファに寝そべってる男だ。
スー:このセリフは何かの引用?「善良な男」
モ:いや「善良な男」は僕が考えた。
ゲ:「壁紙のない」映画から「善良で偉大な男」って作品さ。


続きます。


「善良な男」のセリフの原文です。
「Sherlock Holmes is a great man.
And I think one day, if we’re very, very lucky, he might even be a good one.」

冒頭の場面は誰もが認める名場面、好きな場面の上位に入る今更説明不要な場面です。
S3のStag Nightのふたりも仲良しで可愛かったけど、でもやっぱりこっちの方が好きだなあ。
「Not good?」の場面にも萌え死にました。
「喋るなアンダーソン、IQが下がる」(でしたっけ?)も名セリフだと思うし。

以前も書いたことなのですが、シャーロックが推理を披露するところはひとり舞台のようでした。
でも観客はみんなシャーロックについていけずただ遠巻きに見ているだけなので
「なんでわからないんだ。」と言うシャーロックが滑稽で、そして孤独でちょっと切なくなります。

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
冒頭のシーン、私も大好きです (Misty)
2018-05-19 17:43:54
こんにちは。
もしかしたら同じことを何度も言ってるかなぁ…とか時々思うのですが(自分の書いたことも結構忘れるので…)、ここの冒頭の場面は、やっぱり大好きです!シャーロックは、すごく変わったやり方だけどジョンを気遣ってるみたいだし、ジョンに必要なものをさりげなく差し出して、ジョンにもそれがちゃんと通じて…言葉にしなくても通じ合い始めてるのがよくわかる。推理するシャーロックの頭脳の速度には誰もついてこれなくても、知りたいと思ってくれる相手が見つかって、“孤独”が過去のものになりつつあるのかなぁ…と。(あれ?でもレストレードじゃダメだったんですね)

それにしても、モファティスには本当にぜひこのコメンタリーを聞いてもらいたいですね。私たちが愚痴ってたこと、全部代弁してくれてるのでは…
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Re.冒頭のシーン、私も大好きです (dico)
2018-05-19 21:28:05
Mistyさん
こんばんは
私たち多分何年もずっと同じこと書いてきてると思います(笑)でも何度でも書いてください。私も書きます。「孤独」が過去、本当ですね~。このあたりからシャーロックの笑顔がとろけるほどやさしくなってますもんね。冒頭はまさに「言葉にしなくても通じ合う」関係がスタートする場面という事ですが、言われてみればレストレードでもいいのでは?と思いますがやはりアドレナリンジャンキーでないとダメだったとか・・・
ジョンに必要なものをちゃんと理解してるのだからちゃんと人間的なやさしさも持ち合わせているし思えばこの頃は変人とのバランスが絶妙でした。

確かにこのコメンタリーは全部代弁してますよね。もう「それなのになぜ」という単語しか浮かんできません(涙)
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great と good (篠田真由美)
2018-05-20 05:49:53
レストレードは本当にすばらしいジャーロックの理解者だった、と思うのですが、理解という点ならお兄ちゃんも、弟を理解している。でも彼にしてみれば、理解だけでは足りなかったんだと思います。
お兄ちゃんは上から目線で、絶えず弟を見守ろうとするけれど、それが正当であるだけにとってもうざい。レストレードは理解者ではあるけど、頭がそんなに良くないし、警察としてぼくを利用するだけじゃないか、と、これはシャロの身勝手な理屈だけど、彼としては弱みなんか見せられない。骸骨はぼくを支配しないし利用もしない。だけど、リアクションもくれない。
ジョンと会って、彼のストレートな反応を浴びて、シャーロックは初めて「ああ、自分が欲しかったのはこれだ。こういうの、なんて呼ぶかよくわかんないけど、なんかいいな」と思ったのでは。素直で、けなげで、タフな相棒。わけがわかんなくても、一緒に町を駆けてくれる仲間。

レストレードのこのせりふは、適切な訳語をずっと考えているけど、どうも上手く見つからないです。greatは能力的に優れたという意味合いで、goodは能力に人間性もともなった人物という意味かなと思うのですが、どうもいい日本語が見つからなくて。
そんなお堅い言葉遣いのシーンじゃないから「大したやつ」と「いいやつ」。いやでも日本語の「いいやつ」ってお人好しみたいだし、能力も人間性も兼ね備えた、血も涙もある名探偵みたいな人を、表す言葉が見つからない。S4E3のせりふに対応するんだとすると、「ああいうのが人間性って、なんか違わない?」と思っちゃうしね。
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Re.great と good (dico)
2018-05-20 21:21:48
篠田先生
マイクロフトは親の視点で、レストレードは兄の視点でそれぞれ理解していたのかもですね。先生の消去法はそれを考えているシャーロックの表情が浮かびます。マイクロフト、上から目線ですもんね。そして、確かにジョンにあって彼らに無いもの、それはリアクションですよね。そうかあ、シャーロックは褒められたかったのか。やっぱりシャーロックの精神年齢8歳は納得です・・・だけではなく、初対面のときは何となく「タフそう、死体慣れてそう。」くらいの気持ちだったのが、わけわからなくても一緒に走ってくれて嬉しかったのかもですね。

レストレードのセリフは難しいですよね。goodとgreat、頭では何となく理解できるんですけど日本語にしようとするとすごく広義に感じるし、仰る通りこの場合のgoodは人間性を伴っているんでしょうね。
S4のラストのセリフに繋げちゃうと、本当に心の底から先生に同意です!なんか違いますよね。あらためて今回のエピソードを振り返ると既に「good one」のような気もするのでやはりこれ以上成長させるとかやらないほうが良かったという結論に達しました(笑)
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近い! (あきこ)
2018-05-24 19:56:29
シャーロックのジョンに対する距離感に驚かされる画像の連続ですね。どちらかというとなるべく他人とは近寄りたくなさそうな男なのに…。
心理学では「言葉よりも雄弁な仕草を見ろ」と教えますが。そう、ここでなによりもシャーロックの心の内側が見えるような気がします。
シャーロックってば。もう最初から、ジョンのことが大好きになっちゃっていたんだね…。
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Re.近い! (dico)
2018-05-24 22:29:21
あきこさん
シャーロックは他人に触られるのが苦手だし近寄られるのも嫌なタイプですよね、きっと。そんなシャーロックですがジョンに対してだけはパーソナルスペースが皆無に等しくなる不思議(笑)
そうですね、どんな言葉よりも雄弁だと思います。だからもうこうなるのは必然なんでしょうね。こうなる→「ジョン大好き」
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近いですね! (篠田真由美)
2018-05-25 08:30:15
あきこさんのご指摘に激しく同意、です。
そしてdicoさんの、近寄られるの嫌、にも賛成。
だけどそれはきっと、シャーロックが「すごくいろんなことが見えてしまう」結果ではないかと思いました。
つまり「自分にこびている」「好意を伝えて味方と思わせようとしている」「性的関心を持っている」といった、下心が透けて見えてしまうから、警戒するし嫌悪する。そのへんは、彼の「自己評価の低さ(お兄ちゃんの説教の悪しき影響)」もあるかもしれません。
だけどジョンには根本的にその下心がない。ジョン的には自分の身体やトラウマや経済的懸念で手一杯で、会ったばかりのシャーロックに下心を持つほどの余裕もなかったのかも知れないけど、シャーロックにはそれがとても新鮮だし、誉めてくれる、ついてきてくれる、怒らないしえらぶらないし説教もしない、いままで知らないタイプのジョンがどんどん好きになってしまう。
そして、空虚でなにをしていいのかもわからなかったジョンは、シャーロックに求められることで自分の価値を再発見し、自分を必要としてくれるシャーロックを好きになる。
思いは微妙に重ならないけど、お互いがお互いを必要だとして自覚する、という物語ですね。ああ、両思い。

ロンドンからのモファティスの発信は「?」ですが、なんかいまさらねー、と思ってしまう自分が少し悲しいです。
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Re.近いですね! (dico)
2018-05-25 22:20:24
篠田先生
いろいろな事が見えてしまうと苦痛でしょうね。人間不信になりそうです。人を寄せ付けないのも見下すのもある意味人間不信なのかもですね。
なぜ両想いになったか、の先生のセオリー、説得力がありますね。シャーロックに求められることで価値を再確認、そして「お互いがお互いを必要とする」。これ以上の理由がありましょうか。シンプルゆえにとても大切な思いです。ふたりをカップルにしたいわけではなく絆の強さを感じていたかっただけなのに・・・・

モファティスのアレ、やっぱりそう思いますよね。私も今更感は拭えません。ベネディクトも新たに録音したようなので以前から計画されていたのかもしれませんが、非常に微妙です。
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