漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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ぼくを葬る(おくる)(映画)

2006-04-24 | 映画
相変わらずフランソワ・オゾン監督は、映像が濃密。そしてセリフや行動に『謎』が多い。
この写真も謎めいていて、死にゆく青年とこの赤ん坊はいったいどんな関係なんだろうと想像を巡らしてします。

そして、ロマン青年の家庭環境や友人関係を想像するには、ちょっと困難なセリフの少なさ。いっさい言い訳なしって感じ。

余命3ヶ月といわれた青年は、のた打ち回るのか、それとも静かな境地に達するのか、はたまたあっと驚く奇跡的な展開があるのか・・・
ある種の期待が膨らみすぎたせいか、以外に静かな展開に、映画が終わったときに物足りなさを感じてしまった。

しかしそれはきっと、
観るものひとりひとりの『人生経験から引き出される想いをそこに自由に重ねてくれ』という監督の意図なのかもしれない。

自分を葬るのは、自分でしかできないことなのだ。

後になってもずっと頭の中にいくつかの映像がこびりついている。
細部までしっかり描けそうなくらい。
そしてずっと考えている。

特に、人々の『喧騒』の中に、混じるようでぜんぜん隔絶されているようなロマン青年の図。
その『音』たちは『生』そのもので、その中に馴染まない彼は、確かに刻々と死が迫っているようだ。
それでも、そんな彼は、また違う生きた世界のようで、闇雲に悲しい感覚がない。

こんなふうに、新しい世界へと静かに旅立つことができるだろうか・・・

またオゾン監督のマジックにはまってしまったようだ。考え出したら止まらない。
そしてこうして感想を書いているうちに、どんどん自分の中で評価が高まって、★の数が増えてしまうのだ・・・


鑑賞券を買うとき、「『ぼくをほうむる』、ください」といったら、「『ぼくをおくる』ですね。」と窓口の人に言われて、なんだかすごく残酷なことを言ってしまったような気分になった。
『葬る』は「ほうむる」がふつうの読み方なので間違ってはいないんだけど、かなり焦っちゃった・・

またしても「ぼく葬る」
↑まだまだ考え込んでとまらない

監督:フランソワ・オゾン

出演:メルヴィル・プポー
ジャンヌ・モロー
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ダニエル・デュヴァル
マリー・リヴィエール

★★★★