漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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地獄の釜の蓋・キランソウ

2011-05-07 | 植物&動物
公園を散歩していたら、足元の砂利の中に埋まるようにして咲く小さな紫色の花を発見。
思わず砂利をかきわけた。
そうそう、これぞ「地獄の釜の蓋」(キランソウ黄瘡小草)
            

地を這うようにして育つこの植物は、夏になるとあたかも地獄の釜に蓋をするかのように
地面を蔓延る。
また民間薬として「筋骨草キンコツソウ」という名があり、高血圧、鎮咳、去淡、
解熱、健胃、下痢止め、はたまた皮膚病にもよいそうで、この植物で元気になって
地獄の釜に蓋もできるという意味もあるらしい。

「地獄の釜の蓋」に「筋骨草」、わずか0.5~1センチほどの愛らしい花に、
よくぞこんな逞しい名前をつけたものだと思う。

地獄の釜の蓋があく」という言葉を教えてもらったのは、何年か前の夏。
お盆の16日は、地獄の番人の鬼も休むので、地獄の釜に落とされた死者たちは
地獄の苦しみからつかの間逃れられるらしい。

鬼も休むという地獄の釜の蓋が開く日は、
奉公人が暇をもらって親元に帰る日でもあり、これを「藪入り(やぶいり)」という。
「藪入り」の意味は、「草深い地に帰る」だそう。
奉公人が、正月とお盆にわずかの休みをとり、厳しい仕事から解放され
自然豊かな故郷に戻って、親孝行するというわけだ。

こうして書いてみると、日本の文化って自然ととても密着している。
しみじみ、いいなあ、すごいなあと思うのだけど、
こんなことが、このところの日本の感覚からとても遠いところにあるような気がする。