山茶花の 春の生命を 鋸で切り
馬糞 Bafun
太陽が真東に正中するその春分の朝に、博多にもほかにあ
るまいと思うほどの見事な山茶花の大木を、そして、寄り添うよう
に咲いたばかりの桜の木を、土木業者が根こそぎにして切り刻ん
でいた。
今を盛りに咲いていたその花の春を、せめて近くの公園に移植
しようとさえも思わなかったのか。
物でもあるかのように、その白い木肌を切り刻んでしまうとは・・・。
それが、やりがいのある仕事だとでも言うのか。
あまりのショックに、電車を一本乗りそびれてしまった。
次の電車を待つ20分ほどの間、その衝撃が点々とした。
春分の、雨上がりの空が、呆然として空いていた。
倒されて 彼岸の春に 咲き続け
馬糞 Bafun
これほどまでに美しく咲かせたというのに・・・
他人の罪も自己責任であると思い至ったが、
自己責任のその他人の罪を自己責任として悔い改めるために
はどうすればよいのか。
まずは、博多の誇りとも言うべきだった山茶花の命に詫びよう。
そして、神に詫びねばなるまい。
申し訳ございません。
反省し、人間の道徳の一ページとして、この悲劇を伝えよう。
天にあって悲しんでいる山茶花の精霊たちよ、私もまた悲しん
でいる。
経済とは救いであるべきものを・・・
土地所有に愛がないならば、その所有は地獄に登記されてい
るのだ。
その花さえも、人の罪を背負って、この世に委ねた命のこととし
たのである。
その満開の花のままに、まだこれからの春を彼岸に咲かせ続け
てほしい。
梅士 Baishi