4月29日(日) 木俣巻川林道登山口→黒滝山→大佐飛山→幕営地点(幕営) 天気=晴れ
08:03木俣巻川林道登山口発→ 08:35~44登山道合流地点→ 09:17~24三石山→ 11:00山藤山→ 11:50~12:05黒滝山→ 12:10~28幕営地点→ 12:44~48西村山→ 13:40~42大長山→ 14:39~50大佐飛山→ 15:37~40大長山→ 16:16~21西村山→ 16:33幕営地点
栃木県と福島県の県境にある男鹿山塊の最高峰、大佐飛山と三百名山に名を連ねる男鹿岳は、登山道が無い為残雪期限定でよく登られている山々です。私も一度は訪れたいと切望していたので、今回チャレンジしてみました。最初に向った大佐飛山は、途中の黒滝山まで登山道があり、数年前に私も登った事があります。インターネット情報で、林道を利用すれば百村山直下まで車が上がると知ったので、そこを目指しました。
百村山の山腹を巻く林道は、入口が一寸判り辛かったものの大部分が舗装され、落石が若干ある位でスンナリ標高約880mの登山口に到着した。「黒滝山登山口」と書かれた小さな標識と道路際に架けられた金属ハシゴが目印です。登山口周辺に停めている車は7~8台程有り、殆んど大佐飛山を目指す登山者のものだろう。
私が準備していると中年男性3人組が大きな荷を背負い、金属ハシゴを登り始めた。彼らも途中に天幕を張って大佐飛山を登るという。重いザックを背に金属ハシゴを登って登山道に入る。この道は地図に記載は無く、尾根まではキツイ急登が続く。しかも今日は春先とは思えぬ暖かい陽気で、歩き出して直ぐに汗が止めどなく噴出す。先行する3人組も難儀してるようで一人は暑さと重荷に負けてグロッキー気味の様子、そういう私もしばらく歩いちゃ息をつきという状態で厳しい登りが続く。
3人組を追い越し、約30分掛かって尾根を伝う登山道に合流、やっと急登から解放された。合流地点には昨日大佐飛山を登頂した5人パーティが休憩していたので状況を聞く。所々ヤブはあるものの特に問題は無いとの事。ただ大佐飛山から先男鹿岳方面への踏み跡は無かったそうで、私が「大佐飛山経由で男鹿岳までピストンするつもりと言うと、地元の人らしい5人パーティは「男鹿岳は林道経由で大川峠から登った方が絶対いいよ。」忠告してくれた。最初から重荷に難儀する私は忠告を受け入れる気持ちが強まった。
登山道合流地点
三石山へ続く尾根道は一度歩いているので気分も楽だ。道端にはカタクリの花が点々と咲いている。ロープで保護されている箇所もあったが、群落と呼べる程の規模ではない。ザックの重さにも慣れてきた。身体が少しは登山に馴染んだようだ。
小さな標石と標識がある三石山(1257m)には中年の単独女性が休憩していた。「黒滝山まで行きたいけど雪の状態が心配。」と言うが、先行する後姿を見たらかなり山慣れている様子だ。私も彼女を追うように出発する。この辺りでも雪は現れない。明るい樹間の緩やかな道がだんだん急になり次のサル山(1467m)らしき高みにつく。標識が無いが間違いないだろう。持参したGPSで確認すればいいが電池がもったいないからまだOFFにしている。
三石山ピーク
サル山の先で「那須見台」という展望ポイントが地図に記されているが、確認できなかった。重荷に押されて俯いて歩いているから見落としたのだろう。山藤山への登りで突然のように雪道に変貌した。サングラスをかけ脚にロングスパッツをつけ、ピッケルを手に登って行く。雪が柔らかいのでアイゼンをつけるまでもない。途中の笹薮で踏み跡を一度見失ったが、強引に突破したら再び踏み跡が現れた。
山藤山(1588m)周辺は歩き易い雪尾根の道、そこから一旦降ると雪が途絶え夏道をしばらく進む。そして黒滝山への急登が始める。トラロープがベタ打ちされてるので両手足を駆使して登る。手前のピークに着くと、その先は明るい雪原の道と変った。広々した所でテントを張りたくなったが、せめて黒滝山は越えねばと先へ進む。雪庇の端を伝って笹に囲まれた黒滝山(1754m)に着いた。先程の単独女性が小さな山頂の空地で一人淋しくランチタイム中だった。
黒滝山手前の登り
此処までは私も経験済み、だが此処からは未知のルート、GPSをセットして次の西村山を目指す。ヤブの中に踏み跡が続き、目印のテープも点々とあるので迷う心配はない。黒滝山から少し降った鞍部の森は、少し暗い雰囲気だが平坦で幕営には良さそうだ。時間はまだ昼過ぎ、明日の天気は下り坂と報じているのでで今日のうちに大佐飛山を往復する事にした。余分な荷は此処にデポし、貴重品、行動食、飲み物だけザックに入れ出発する。その前にGPSで残置場所の位置登録をしなければ、ここに戻れないとテントで寝る事ができない。
西村山まで一寸複雑な地形が続くでも踏み跡さへ見失わなければ問題ない。何組かの登山者達とすれ違った。皆小さなザックだから早朝出発して日帰りで大佐飛山を登って来たのだろう。その中の一人が「此処からだと往復4時間はかかるよ。」と話してくれた。それ位なら幕営地には十分明るいうちに戻ってこれる。
黒滝山と殆んど標高の変らない西村山(1775m)は、展望も無く樹林の中に小さな標識が一つあるだけのありふれたピークだ。その先はしばらくヤブ道となるが、目印が随所にあるので道に迷う事はない。続いて雪庇の尾根を伝って登り、西村山から約1時間程で大長山(1866m)に着いた。ここも西村山と同様小さな山頂標識が一つあるだけの樹林に囲まれた静かなピークだった。
西村山ピーク
大長山を越えると一挙に視界が拡がる。ゆったりした雪尾根に白い天空の道が伸び、ゆったり左へ湾曲して黒々とした大佐飛山へ続いている。その展望はインターネットで何度もお眼に掛かっているのだが、実際に見る展望の迫力は遥かに凌駕する。だが大佐飛山までは随分遠いなあ。でも此処まで来て頂上を諦める訳にいかない。体力の限界を感じてきたが前進するしかない。大長山の降りで最後の登山者(ご夫婦か?)とすれ違った。女性は男性に腰縄で引張られながらの登り、登山口まで相当の距離あるから明るいうちに着けるのだろうかと心配になる。
大長山の下りから左奥に大佐飛山
雪尾根から大佐飛山
雪尾根が左に湾曲する所まで来て、フッと身体から力が抜けた。朝飯以後お握りを1個しか喰ってないからシャリバテというかガス欠状態になった感じだ。急いでアンパンを食いエネルギー補給する。しばらくすると身体にジワジワと力が漲ってきた。私の身体は案外単純だ。いよいよ大佐飛山へ向け最後の登り、樹林の中を踏み跡を拾いながらゆるゆる登って行く。14時40分、待望の男鹿山塊最高峰、大佐飛山(1908m)に着いた。
大佐飛山山頂
樹林に囲まれた山頂は幾つかの標識があるだけで展望も無く、私の高ぶりとは裏腹に素朴なピークだった。帰路の長さを考えるとあまりノンビリともして居られず記念の写真を撮って余韻に浸る事無く山頂を後にする。
大長山への戻り道から日留賀岳方面
大長山への戻り道
帰りの道は早くテントに入ってビールを飲みたい一心で疲れているのに脚が早まる。大長山への登りで振り返ると大佐飛山が傾き始めた陽の光に照らされていた。今頃に登頂の喜びが溢れてきた。「帰心矢の如し」で脚は疲れをものともせず、大長山、西村山二つのピークを越えて16時30分過ぎ幕営地に戻ってきた。
早速テントを設営し、ガソリンコンロに火をつけてから缶ビールをグイッと一飲みする。疲れた身体にビールの喉越しが甘い。食料は2日分、ビールも2本あるから贅沢な気分、明日は下山するだけだから気も楽だ。森の中の幕営地は風も無く暖かくてとても快適な一夜だった。
黒滝山西側の幕営地
4月30日(月) 幕営地点→ 黒滝山→木俣巻川林道登山口・・・・(車)・・・・林道黒磯田島線釜沢橋ゲート(車中泊) 天気=曇り
06:25幕営地点→ 06:35~43黒滝山→ 07:10~16山藤山→ 08:07~27三石山→ 08:42登山合流地点→ 08:55木俣巻川林道登山口→ 車で男鹿岳登山口の林道黒磯田島線釜沢橋ゲートへ移動し車中泊
今日はノンビリ起床しようと思ったが、昨日早寝したので4時頃には眼が覚めてしまった。ラーメンと漬物だけの朝食を終え、ゆっくり装備をまとめていると、昨日登山口で一緒だった3人組パーティの2人だけが登ってきた。昨日は山藤山にテントを張って過ごしたそうだ。残りの1人は疲れてだいぶ遅れているとの事、バラバラに行動して大丈夫なのかと他人事ながら心配になった。「此処から往復4時間かかりますよ。」と彼らに話して別れた。
私も装備をザックに納め下山を開始する。GPSもコンパスも見ないで適当に歩いたら早々と踏み跡を見失った。GPSで進路を確認すると90度も左へズレている。山勘はやっぱり当てにならない。黒滝山のピークを越えて雪庇の尾根を降っていると3人組の遅れた1人がノロノロと登って来た。「前の2人は1時間前に行きましたよ。」と言ったら「昼頃まで戻って来るかなあ。テントの撤収があるのに」とブツブツ言っている。彼の足取りでは黒滝山が限界だろう。
山藤山のピークにはテントが2張りあった。3人組のものだろう。雪の融けた草地の幕営地は中々快適そうだ。山藤山から雪の斜面を慎重に降り切れば、後は夏道に沿って降るだけ。ビスターリビスターリで下山して行く。途中で若い単独男性とすれ違った。随分軽装だったから黒滝山を往復するのだろう。
山藤山ピーク(下山時)
サル山~三石山を越えて尾根道が分かれる合流地点で右折し、昨日汗まみれになった急坂を降って9時前に登山口へ降り立った。車に戻ると汚れた服を着替え、登山靴をサンダルに履き替えると生き返ったような気分がする。今日はこれから南会津町近郊の男鹿岳登山口までドライブを楽しむだけでよい。
林道の登山口(下山時)
観光客の車で賑わう那須山麓の観光道路を経由して長い甲子トンネルを抜け、福島県下郷町の「道の駅しもごう」で山菜丼を食べて2時間程午睡する。その後、国道121号沿いのファミリーマートで夕食を購入して、会津鉄道「田島高校前駅」付近から栗生沢集落を抜け、水無川沿いの狭い林道を遡って釜沢橋に15時頃着いた。橋の奥はゲートで遮断され車の進入はできない。此処が男鹿岳の登山口になる。
釜沢橋の男鹿岳登山口(奥に通行止めゲート)
ゲート付近には浜松ナンバーのトヨタノアが駐車しており、中に男性が一人居た。彼も明日男鹿岳を登るのだろう。私は橋の側の空地に車を止め、此処で車中泊とする。夕食の準備をしていると熊谷ナンバーの車で単独男性がやってきた。彼も明日男鹿岳を登るとの事、明日は少なくとも3人が男鹿岳を登る事になる。それにしても私も含めたこの3人は、年恰好、雰囲気、体型と何とよく似てるのだろうと可笑しくなった。
5月1日(火) 釜沢橋ゲート発→ 男鹿岳(往復) 天気=曇り時々雨
05:44釜沢橋ゲート発→ 06:43~52オーガ沢橋→ 07:15~19男鹿沢橋→ 07:53~08:08大川峠→ 09:22~30栗石山→ 09:47~10:10男鹿岳→ 10:23~28栗石山→ 11:04~11:10大川峠→ 11:53男鹿沢橋→ 12:16オーガ沢橋→ 13:07釜沢橋ゲート着
薄明に起床して焼ソバ・漬物で簡単に朝食を済ます。必要な物だけザックに収め出発しようとしたら、1台の車が上がってきた。中年男性が一人いて、彼も男鹿岳を目指すと言うので登山者が4人になった。彼に挨拶してから出発する。ゲート前に駐車している2台の車の持ち主は、既に早々と出発したようだ。
ゲートを抜けて林道を歩き始める。出発前は良い天気に思えたのに、だんだん灰色の雲が厚みを増してきた。この林道は大川峠の登山口まで10km程の距離がある。退屈しのぎにTBSラジオの「生島寛さんの番組」を聞きながら歩いて行く。林道は各所で崩壊しており四駆でも通行するのは不可能な状態だ。行政はこの道を放棄しているように思える。だったら何のために造ったのか。?
丁度1時間で、鋭く屈曲したオーガ沢橋に着いた。この辺りからポチポチと残雪が現れ始めた。ここで大川峠まで約半分の距離、この後は山腹をクネクネ曲りながら高度を上げて行く。残雪が増えていくのに比例するように林道の荒廃度が増していく。だが、歩く分には何の問題も無い。
県境でもある大川峠には登山口から2時間余で着いた。この先栃木県側の林道は、既に廃道化してしまったようだ。ここまで霧雨程度だった天気がいよいよ本降りの雨になってきた。これからヤブと残雪の登山道が始まる。雨具を着用して登って行く。心配なのはガスで視界が利かなくなるの事だ。
県境の大川峠
最初はヤブ漕ぎの道だが、僅かな踏み跡もあり目印のテープも豊富だから迷わずに登って行ける。標高が上がるにつれ残雪が増えていき、やがて残雪の道になった。細々と踏み跡が続いているのでコースを見失う事はないが、グレーの雪景色の中をポツンと一人歩くのは、心細くないと言ったら嘘になる。それでも先行者が2人いると思えば心細さも薄らぐ。
栗石山への雪のルート
急な雪面をダイレクトに直上すると傾斜がだんだん緩み、1701mのピークに着いた。小さな標識に「栗石山」と書かれていたので、これが正しい山名なのだろう。ここで登頂を終えた2人の先行者と遭遇した。流石に二人とも健脚の持ち主だ。「天気が悪くなるので二人一緒に急いで登った。」との事。彼らに写真を撮ってもらい互いにエールを送って別れる。
栗石山ピーク
この先は細い雪尾根が続く。一瞬雲が取れ男鹿岳の山容がチラリと見えた。細尾根から左に曲り、急な雪面をしばらく登ると山頂の一角に出る。、踏み跡を伝って行くと「男鹿岳」と記された看板に遭遇、09:47男鹿岳(1777m)に到着した。
雪尾根から男鹿岳方面
山頂は薄暗い木々に囲まれており、北面は視界が利きそうだが、白いガスの中で全く展望はない。大佐飛山では早々と山頂を後にしたので、今日は20分余り山頂に留まり、コーヒーを飲みながら登頂の喜びを堪能する。
男鹿岳山頂
休憩を終え、山頂を後に下山を始める。山頂直下で今朝方来た単独の男性と出会った。彼も中々の健脚だ。「あと僅かで山頂ですよ。」と声を掛け、彼とすれ違う。雪道の下山は楽だ。アイゼンを効かせて重力のままにグングン降りて行く。調子に乗りすぎたか、フト気付けばルートのある尾根から100mほどもずれている。慌てて横にトラーバスし、再び尾根沿いの正しいコースを降って行く。大川峠には山頂から1時間も掛からずに降立つ事ができた。
後は林道を降って行くだけだ。フキノトウが道沿いに点々と咲いていたので、良さそうなのを採集しながら下山する。タラノ木も幾つかあったが全てタラノ芽を摘み取られていた。林道から奥に分け入ればゲットできるのだろうが、そこまでする気力はない。それでも長い林道歩きの退屈を随分紛らわす事ができた。
男鹿沢橋付近の林道
登山口に戻るとゲート脇に1台の車が残っており、先に下山した男性が野外チェアーで寛いでいた。私も車に戻ると装備を整理して格納し、帰路に着く。国道121号沿いの「道の駅たじま」で山菜ソバを注文して遅い昼食とし、その後、塩原温泉街の横を通り西那須野塩原ICから東北道を経由して我が家へと帰宅した。帰りの車中は凄い土砂降り雨の中だったので、その前に下山出来た事を感謝した。その夜のテレビでは私が通った東北道、大谷パーキング付近で、車3台の事故が発生し、東北道が通行止めになった事を報じていた。