雪時々晴れ。最低気温-8.1℃、最高気温0.1℃。
人形劇フェスティバルさっぽろ冬の祭典は「子どものための冬の楽しみが少ないので、人形劇を」 と始まり、この度は37年目。『セロ弾きのゴーシュ』は1997年の初演以来、冬の祭典では最多の6度目の上演とのことです。
初演・再演時の吉田清治さんによる脚本を基に吉田氏の愛弟子・高平和子さんが潤色、演出を手掛けられています。音楽は、初演からすべての舞台を生演奏で出演のチェリスト土田英順氏。
「ゴーシュという人物が、ぶきっちょでありながら自然を教師と生きつづける中に真実を見出すのと同じように、人形劇においてもそれがぶきっちょでも真実な舞台を生み出したいとねがっている」とは、故吉田清治氏の言葉。(1975年に『セロ弾きのゴーシュ』上演の際のパンフレットに寄稿した「ゴーシュと人形劇と・・私」から)
不器用な自分と重なる部分が多いゴーシュには親近感が湧くもので、賢治作品の中でも好きな作品の一つとなっています。
本日の舞台設定では水車がずっと回り続けていたり、トマトの苗に青虫がくねくねと動き続けていたり、カニが遊んでいたりと部屋の外の動きも実にリアルでした。嵐のシーンでは雨粒が映し出され、風が吹き込んだ部屋のカーテンが揺れるなど細部にも神経が行き届いていて、楽しませてくれました。ラストでは舞台が回り、部屋を外側から見える位置に配するなど意表をつく展開がに目を見張りました。
もちろん、人形劇団の方々の人形遣いの技術は見事で、熱のこもった演技は迫力がありました。楽団の演奏が劇中なのを忘れるほどに臨場感あふれる仕掛けとなる心憎い演出にも瞠目です。
人形劇の枠を取り払ったかのような素晴らしい舞台に出合い、快い刺激を受けた1時間半となりました。