「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

裁判員制度で 死刑選択への疑義

2010年10月26日 22時45分57秒 | 死刑制度と癒し
 
 裁判員制度が始まって初めて、 検察から被告に 死刑が求刑されました。

 裁判員にかかる 重圧の問題は 言うまでもないことですが、

 そもそも僕は、 裁判員制度で死刑が選択される 可能性のあり方そのものに、

 根本的な疑問を持っています。

 裁判では 永山基準などを総合的に判断して、

 どうしても死刑以外に考えられない という場合にのみ、

 死刑を選択することも 止むを得ないとするものです。

 死刑は究極の刑であり、 取り返しがつかないものですから、

 わずかでも判断に 疑問の余地があるときは、 それを避けるべきでしょう。

 しかし 裁判員制度では、 裁判員,裁判官の 意見が分かれたとき、

 多数決で決めることになっています。

 裁判員,裁判官9人のうち、 4人が反対したとしても、 死刑になってしまうのです。

(ただし、 被告にとって不利な量刑の方に、

 職業裁判官が一人以上 はいっていなければなりません。)

 裁判官裁判では 理念として、 例えば 100人の裁判官がいたら、

 100人全員が 死刑やむなしと考える場合にのみ、

 死刑を選択すべきだと 言われています。

(もっとも実際には、 3人の裁判官の 多数決で決められるのですが。)

 少なくとも裁判員制度では、 死刑判決だけは

 全員一致 (またはそれに近い形) に すべきではないでしょうか? 

(裁判官裁判でも、 死刑は全員一致に したほうがいいと思います。)

 今回の裁判の 被告の場合、 前科がなく、

 毎日 自責の念に駆られ、 謝罪, 反省しているといいます。

 また 被害者に突然 来店を断られて、 理由が分からず 被害感を生み、

 衝動的に犯行におよび、 犯行時はパニック状態で 善悪の判断ができなかった、

 と弁護側は主張しています。

 これだけでも、 死刑選択は 回避すべきだと僕は思います。

 少しでも 判断が分かれるときは、 死刑宣告をすべきではないでしょう。

 つまり、 死刑と無期懲役の 「 “境界例” には死刑なし」 と思うのです。
 
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★ 緊急報告2 ★  「モリのアサガオ」

2010年10月18日 07時44分07秒 | 死刑制度と癒し
 
 引き続きお知らせです。

 死刑囚と刑務官の連続ドラマ、  「モリのアサガオ」 が今日から始まります。

 夜10:00. テレビ東京です。

 取り急ぎ。
 
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死刑執行のロープ

2010年08月27日 17時41分14秒 | 死刑制度と癒し
 
 今回の刑場公開では、 死刑囚の首に掛ける ロープは公開されませんでした。

 ロープは 執行に使う厳粛な道具だから という理由です。

 しかし 死刑執行に立ち会ったことのある 元刑務官は、 ロープは見ない方がいい,

 油と汗が染み込んで 黒ずんでいる、 と言っていました。

 市民感情を考慮した 非公開だったのかも知れませんが、

 結局 公開するといっても、 汚いところには蓋をするのでしょう。

 仮に 配慮だったとしても、 だとしたらその理由を 正直に述べるのが情報公開です。

 もし ロープは厳粛な道具だというのなら、 黒ずんだものを使うのではなく、

 1回ずつ真新しい 白無垢のロープを 使用するべきではないでしょうか。

 でも 事態は一歩前進したわけで、

 これからまた 少しずつ情報を 公表していってほしいと思います。

 ニュースの街頭インタビューでは、

 日本の死刑が絞首刑だということを 知らない人が少なからずいて、 驚きました。

 今後、 誰もが裁判員として 死刑判決を下す可能性があるのですから、

 国民も学ぶ必要があり、 国はそのための 情報提供を推進しなければなりません。
 
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死刑の刑場を 初公開

2010年08月27日 15時27分58秒 | 死刑制度と癒し
 
 法務省は本日、

 死刑が執行される 東京拘置所の刑場を 初めてマスコミに公開しました。

 先月、 千葉法務大臣が 死刑制度への議論を 促進するするため、

 刑場を公表するよう 指示したのを受けたものです。

 僕も モノクロ写真以外で見るのは 初めてでした。

 50年前に撮影されたという 大阪拘置所の刑場の写真は、

 古めかしい木造で、 いかにもおどろおどろしい 雰囲気がありました。

 本日公開の 東京拘置所の刑場は 地下にあるということですが、

 06年に改築されたものらしく、 非常に新しくて 綺麗な印象でした。

 基本的な構造は 従来の刑場と同じながら、 床には絨毯が敷きつめられ、

 壁や椅子, テーブルなども明るく、 クリーンな体裁です。

 しかし 執行の実情は、 言うまでもなく生々しいものです。

 以前に書いた 記事の一部を、 以下にコピーします。

「高さ5メートルほどの コンクリートの建物で、外観は倉庫のようなものです。

 死刑囚は刑執行後、失禁したり 血管が切れて 血が吹き出たりするので、

 刑場の内部は 水で洗浄しやすい 作りになっています。

(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/54095758.html )」

 死刑囚は 執行室の中央で クビにロープをかけられ、

 足元の踏み板が外れて 下の部屋に落ちるわけですが、

 東京拘置所の執行室は 絨毯敷きです。

 恐らく、 下の部屋が 水洗いできる作りに なっているのではないかと推察します。

 今回、 下の部屋に 取材陣が入ることは 許可されませんでしたが、

 執行室の正面、 数メートルにある 立ち合い室からは、

 その部屋を 見られるようになっていました。

 「日テレ・ニュース24」 の 動画と記事が下記にあります。

http://www.news24.jp/articles/2010/08/27/07165553.html
 
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千葉法相、 死刑執行現場に立ち合い

2010年07月28日 22時05分43秒 | 死刑制度と癒し
 
 本日、 千葉法相が 二人に死刑を執行したと 発表しました。

 この時期の 執行命令への疑義、

 そもそも 死刑反対論者が命令を下す 根本的な矛盾。

 それはここでは割愛しますが、

 法相自ら 執行現場に立ち会ったことは 評価できます。

 死刑に立ち会った法務大臣は 初めてという事実には呆れますが、

 千葉法相は 執行命令を出した者の責任として、 現場を見届けたということです。

 今後、 死刑のあり方を検討する 勉強会を立ち上げ、

 死刑制度への議論を喚起するため、 マスコミに刑場を公開するよう 指示しました。

 これから裁判員裁判で 死刑判決もあり得る今、

 死刑の実態を 多くの人が知る必要があります。

 下記のURLから、 死刑執行の現実を 6回にわたって連載しています。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/54095758.html
 
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「死刑裁判の現場」 (6)

2010年06月22日 21時24分31秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 死刑執行現場に立ち会った 土本氏は、

 生きている人を 数分後には強制的に 死に追いやるという、 凄まじさを感じました。

 それまで 検事の職務として 死刑を求刑するのは、

 恥じることでも躊躇することでもないと 思っていましたが、

 どんなに勉強しても足りない 命の問題に遭遇し、

 それは観念論に過ぎないと 思うに至ったのです。
 

 昨年の内閣府の調査で、 死刑は止むを得ないと答えた人は 85.6%。

 昭和31年に 統計を取りはじめて以来、 最も多い数字です。

 土本氏は、 そういう国, 時代で、

 死刑を廃止するのは 現実として無理だと言います。

 そして、こう語ります。

 「死刑制度は 理想としては、 できればないほうがいい。

 皆が知っている死刑は、 しょせん抽象的なもの。

 せいぜい、 人を殺したら 自分の命で償わなければならないという、

 一般的な死刑存置論の根拠。

 それは多くの人の 賛同が得られる。

 しかし、 具体的な事件について、 極刑を言い渡すのであるなら、

 もう一歩、 深く重いところで、 人の命を考えた上での、

 言い渡しであるべきである。」
 

 裁判員制度が始まり、 我々が死刑裁判に 加わるようになりました。

 けれども 死刑について 考えるための情報は、 極めて限られています。

 より多くの情報の下に、 議論を深める時が 来ています。

〔 NHK・ ETV特集より 〕
 
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「死刑裁判の現場」 (5)

2010年06月21日 20時44分39秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 土本氏は、 ある死刑執行現場に 立ち合う決意をします。

 それまでは 死刑執行を抽象概念としてしか 認識していませんでしたが、

 実際に現場で 体験したかったのです。

 看守に連れられて、 刑場に 白髪の小柄な男が 入ってきました。

 死刑囚です。

 顔面蒼白で、  きょろきょろして 落ち着きません。

 教誨師 (僧侶) に促されて 焼香する手が、 小刻みに振るえています。

 土本氏も 並んで焼香しますが、 自分の肘が 死刑囚の肘に接触します。

 いま横にいる 生きている人のために、 そして数分後に 死んでいく人のために

 焼香しているという、 不思議な感覚に捕らわれます。

 土本氏は 正視することが難しかったといいます。

 悪い奴だから 一番重い刑に 処してやるんだという気には、 全くなりませんでした。

 やがて死刑囚は 看守に目隠しをされ、

 ぶ厚いカーテンの向こうの 刑壇 (絞首台) に入っていきます。

 読経の声が 一段と大きくなります。

 最高度に張りつめた 空気を破るように、

 「バタンッ!!」 という 凄まじい音が鳴り響きます。

 刑壇の下に 吊り下げられた死刑囚の 姿が見えました。

 医務官が 宙吊り人の胸に 聴診器を当て、 目隠しを外して その目を覗き込みます。

 脈拍, 心音, 瞳孔の、 死の三徴候を調べているのです。

 医務官が、 「絶息しました」 と告げました。

〔 NHK・ ETV特集より 〕
 

 死刑執行現場の より詳細な記述は、

 一昨年5月の 文化放送 「死刑執行」 の記事があります。

 下記のURLから 6回にわたって連載しています。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/54095758.html

(次の記事に続く)
 
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「死刑裁判の現場」 (4)

2010年06月20日 20時57分32秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 土本氏は 被告の恩赦を 申し出ようとします。

 けれども 上司から、

 求刑した検事が 執行を止めるのは 筋が通らないと言われ、 諦めてしまいました。

 その体験を氏は、

 鬼になりきれなかった 非常に情けない 検事の話だったと 自嘲します。

 しかし 土本氏は改めて考えるに、 死刑制度が存在していて、

 死刑判決が確定した以上、 執行されるのが当然であって、

 法制度全体としては、 執行されてよかったと思う、 とカメラの前で語ります。

 法的な特段の事情もないのに 執行をやめるのは、

 法治国家としては 自らを破壊することになると。

 ここで、 番組のインタビュアー (プロデューサー?) が、

 「本当に そう思ってらっしゃるんですか?」 と 問いかけました。

 土本氏は すぐに答えられず、 約10秒の沈黙が続きます。

 そして、 慎重に口を開きました。

 「当時の法律家としては、 そう思っていたと 言う他ありません。

 ただ、 一個人としての、 彼と心を分かち合った 一人間としては、

 別の答が 出てくるだろうと思う」
 

 そして、 被告の死刑は執行されます。

 犯した罪は 消すことはできない、 しかし人間は 変わる可能性を持っている。

 死刑とは、 一体何なのか? 

〔 NHK・ ETV特集より 〕

(次の記事に続く)
 
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「死刑裁判の現場」 (3)

2010年06月19日 20時32分23秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 人を殺めた者に、 命を持って償わせる 死刑。

 犯した罪に対する 刑罰の目的には、 次のふたつの 考え方があります。

 教育刑 …… 刑罰は 犯罪者を教育・ 更生するために科す

 応報刑 …… 刑罰は 犯した罪に相応する 報いとして科す

 土本氏の恩師は 一貫して、 刑罰の目的は 教育刑であると主張していました。

 土本氏は その教育刑論に共感し、

 検事に任官する前は 死刑廃止を真剣に考えました。

 しかし検事になって、 悲惨な事件を 目の当たりにするようになり、

 教育刑は理想論だと、 死刑への疑問を 封印しました。

 恩師はなぜか 死刑問題に限っては、 終生 多くを語らなかったといいます。

 教育の主体をである 被告を抹殺してしまう 死刑は、

 教育刑と矛盾するから、 なぜ恩師は 声を大にして 死刑反対を叫ばなかったのか。

 今の土本氏は、 できれば 墓を掘り返してでも 聞いてみたいと言っています。

 死刑への疑問を封印した 土本氏の心を、

 死刑囚からのひたむきな手紙が、 再び揺さぶり始めました。

 手紙には、 罪と罰、 被害者と加害者、 命というものを真剣に見つめ、

 懺悔する 被告の言葉が綴られています。

 土本氏は、 被告が社会に戻ったとしたら、

 再び罪を犯す恐れは 一点だにないと感じます。

 そういう人を 刑場へ送らなければいけないのだろうか? 

〔 NHK・ ETV特集より 〕

(次の記事に続く)
 
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「死刑裁判の現場」 (2)

2010年06月18日 22時28分07秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 当時 この強盗殺人事件で 土本氏は、 事件を調査する 「捜査検事」 を勤め、

 その後、 裁判を担当する 「公判検事」 に 引き継ぎました。

 公判の詳しい内容は、 土本氏も知りませんでしたが、 新たに調べてみました。

 一審の判決理由は わずか2枚しかなく、

 あっさりしすぎていることに 土本氏は驚きます。

 通常 死刑判決は 何度も公判を重ねて、 慎重に議論が進められます。

 「罪責が重大で、 あらゆる情状を考慮しても なお、

 極刑が避けられない場合」 にのみ、 死刑が選択されるとされています。

 被告は前科がなく、 近所の人たちの評判は 非常に良いものでした。

 裁判では 少しも弁明することなく、 罪状を認めていました。

 罪を心から悔い、 自らは 控訴することもありませんでした。

 しかし その後、 弁護士に説得されて 書いた上申書で、

 被告は初めて 殺意を否認したのです。

 ナイフは 脅すつもりで持っていたこと、

 主婦に見つかり ナイフを取り上げられたこと、

 揉み合いになって 狼狽したこと、 無我夢中で 刺し殺してしまったこと、

 その瞬間  「しまった」 と思ったことが、 はっきり書かれていました。

 しかし翌年、 最高裁で 死刑判決が確定します。

 被告は獄中で、 被害者の命日に 読経して冥福を祈り、

 事件を起こした人物とは 一致しないようだったといいます。

〔 NHK・ ETV特集より 〕

(次の記事に続く)
 
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「死刑裁判の現場」 (1)

2010年06月17日 23時58分30秒 | 死刑制度と癒し
 
 過日のNHKのETV特集で、

 「死刑裁判の現場」 という 番組をやっていました。

 元最高検察庁検事の 土本武司 (75才) が扱った、

 死刑裁判のことを取り上げたものです。

 プロの裁判官や 弁護士, 検察官でも、

 実際に 死刑の裁判に臨むのは 非常に珍しいことで、

 司法関係者でも 死刑の現場には 触れることがないそうです。

 土本氏も、 死刑判決に関わったのは 30年間で1度だけだったといいます。

 44年前の強盗殺人事件で 土本氏は、 被告に死刑を求刑し、 確定しました。

 その後、 その死刑囚から 土本氏の下に 手紙が来たのをきっかけに、

 氏は死刑について 真剣に、 現実的に 考えるようになったといいます。

 土本氏は、 死刑囚から怨みの手紙が 来たのかと思いましたが、

 手紙には 土本氏に対するお礼や、 被告が真摯な態度で、

 罪に真正面から向き合う、 苦悩と覚悟が したためられていました。

 全部で 9通の手紙が届きましたが、

 死と直面する 人間の言葉は、 土本氏にとって重いものでした。

 氏は、 別の事件の 死刑執行現場に立ち合います。

 その壮絶な実態を、 氏は今まで誰にも 語ることができなかったといいます。

 死刑を求刑し、 判定する人間たちが、

 死刑の実態を知らなくて、 死刑の裁定をしていいのか? 

 裁判員制度が始まり、 死刑制度に国民的議論が 必要とされるとき、

 氏はそれを 今こそ語るべきと決断したのです。

〔 NHK・ ETV特集より 〕

(次の記事に続く)
 
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判断基準の明確化必要

2009年07月03日 23時41分12秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 龍谷大学 法科大学院 教授・ 石塚伸一氏の意見です。

 日本では 世論の8割が 死刑に賛成と言われるが、

 「 現時点で 死刑を廃止することには不安 」 というだけで、

 「 絶対に死刑を 維持すべきだ 」 という意見は 少ないのではないか。

 人の命を奪う 死刑では、 決して間違いが あってはならない。

 逮捕・ 拘置から 裁判, 刑の執行まで、

 慎重の上にも 慎重を期す必要があり、 制度維持にはコストがかかる。

 日本では その保証をしているとは言えない。

 取り調べの可視化が 実現していない中で、

 被告に不利な 調書が取られている。

 弁護士とコミュニケーションが 取れないまま公判を迎え、

 充分な弁護が できているとは言えない。

 死刑事件では、 被告が上訴を望まなくても、

 最高裁までの審理を 保証する必要がある。

 終身刑の議論があるが、 死刑を廃止しないまま 終身刑を導入すれば、

 無期懲役の中で 犯情の悪い人が 終身刑になる可能性が高く、

 重罰化に 拍車をかける危険がある。

 しかし、 死刑を廃止して 終身刑を導入することは 検討に値する。

 その場合でも 恩赦などの可能性を残すべきだ。

 最近の日本の 死刑判決・執行の現実は、 明らかに 世界の潮流に反している。

 死刑選択の幅を狭めるよう、 死刑適用の基準を 明確にすることだ。

 日本の法律は、 例えば殺人罪なら

 「 死刑または無期、 もしくは5年以上の懲役 」 と刑の幅が広い。

 明確な基準なしに、

 裁判員裁判で 市民が死刑について 判断することは難しいだろう。

〔 読売新聞より 〕
 
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「償いの形」 思い巡らせ -- 読者の声 (2)

2009年07月02日 20時51分21秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

●制度の今後

 足利事件で釈放された 菅家さんのことに触れ、

「 冤罪にもかかわらず 処刑された人が、 皆無だとはどうしても思えない 」

 と書いた男性もいます。

 帝銀事件で死刑が確定し 95歳で獄死した 平沢貞通元死刑囚と、

 文通を続けた 経験を持つそうです。

「 誰もが真犯人だと 納得できる判決なら、

 社会秩序を守るためにも 死刑は必要だと思うが、

 わずかでも疑問があれば 積極的に 再審を開く制度に 変える必要がある 」

 と訴えます。

 熱海市のマンション管理人は、 終身刑導入を求めます。

「 被害者の苦しみに比べて、

 死刑囚を 簡単に死なせて良いのか と疑問に思ってきた。

 一生、 被害者に 懺悔させ続ける方が、

 罪滅ぼしになるのではないか 」 と記しました。

 これに対し、 強盗事件を起こして 刑務所に服役していたという 男性は、

 こう述べます。

「 無期懲役囚の仮釈放は 30年を過ぎても 認められにくくなっており、

 無期懲役囚の多くは 受刑者の雑談の輪にも 加わらずに 無気力化していた 」

「 終身刑を導入しても、 罪を償う気持ちに なりにくいのではないか 」

●情報公開

 愛知県の指圧師は、 

 インターネットで 死刑制度について議論する 機会がありました。

 「 日本の死刑囚の処遇は 非人道的だ 」 と主張する人に対し、

 「 情報不足による 誤解がある 」 と感じました。

「 執行の詳しい様子や 教誨師の役割を知ることも、

 日本の死刑の是非について 考えるうえで大切だ 」

 埼玉県の農業の男性も、

 死刑に関する 国の情報公開が 足りないと感じてきました。

「 刑が確定したら 速やかに執行し、 それを公表しなければ、

 死刑による犯罪抑止の 効果は期待できない 」 と考えています。

 東京の大学生は 死刑制度に関心を持ち、 東京地裁の傍聴席に座りました。

 強盗殺人事件の公判で、 求刑は死刑。

「 遺族も死刑を求めていたが、

 私が裁判員だったら 死刑という決断を下せるだろうか 」

 卒業論文テーマは裁判員制度を選びました。

〔 読売新聞より 〕

(次の記事に続く)
 
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「償いの形」 思い巡らせ -- 読者の声 (1)

2009年07月01日 20時58分47秒 | 死刑制度と癒し
 
 読売新聞の連載 「死刑」 に 読者から寄せられた反響です。

●被害者への思い

 被害者の感情を重視して 厳罰を求める声が 目立ったということです。

「 苦悩の遺族に 胸が締めつけられました 」

 茨城県の主婦のメールです。

「 被害者の家族は、 加害者を責めると同時に、

 自分をずっと 責め続けてしまうところがある。

 区切りをつけるためにも、 死刑制度は必要だと思った 」

 「愛知・闇サイト事件」 で 一人娘を殺害された 磯谷富美子さんが、

 死刑を求める 32万人の署名を集めた という記事をきっかけに、

 2週間余りで 新たに1277人の署名が 加わったそうです。

「 私も 一人娘を持つ 45才の父親ですが、

 本当にこの事件には 激しい怒りと 言いようない悲しさを覚えました。

 署名は、 親が子を愛する 心の一筆だと思います 」

 一方 さいたま市のヘルパーは、 署名活動の広がりに 懸念を示しました。

「 もし自分が 裁判員になった事件で、

 死刑を求める 何十万人もの署名を見たら、

 平常心でできるかどうか 自信がない 」

●執行する立場

 刑務官の息子を持つ 40歳代の女性は、

 息子が 刑務官試験に合格したとき、

 処刑場も見学したという 体験をつづりました。

 息子は 「 いずれ自分も 執行ボタンを押す日が 来るのかな 」

 と話したといいます。

「 死刑は必要だと思いますが、 ボタンを押す刑務官の 心の中についても、

 国民は知るべきではないでしょうか 」

 八王子の元刑務官は、

「 執行した 13人の死刑囚の顔は 今でも忘れられない 」と語った

 先輩の言葉を 思い出しました。

「 制度をどうすればいいのか、 なかなか結論が出ない 」と話します。

〔 読売新聞より 〕

(次の記事に続く)
 
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獄中からの手紙

2009年06月29日 21時34分45秒 | 死刑制度と癒し
 
 読売新聞の連載 「死刑」 に、 服役中の無期懲役囚や、

 死刑判決を受けて 上告中の被告から 手紙が送られてきたそうです。

 改めて 自分の罪と向き合う きっかけになったといいます。

「 人を殺してしまったとは どういうことなのかを、 考え直そうとしている 」

 宮城刑務所の長岡義宏受刑者 (50) からの 手紙にそうありました。

「 連載で取り上げられている死刑囚は 自分の姿でもあったのではないか 」

「 連載を読み、 改めて 『自分は殺人犯』 なのだという 自覚を新たにした 」


 梶原利行受刑者 (65) は、

「 犯人が 反省していようがいまいが、 気持ちに変化はない 」

 という 被害者の父親の心境を 記事で読み、

 事件から 30年近く経った今も 変わらぬ遺族の悲しみを 知りました。

「 被害者の悲しみや怒りは もっとものことです。

 事件について 改めて考える 時間を頂きました 」

 刑務所の運動場に咲く 桜を見て、 心を動かされたといいます。

「 春になると、 何があっても 花を咲かす草花に、

 本当に 頭が下がる思いです。

 外にいた時に、 今の気持ちが 少しでもあったらと 悔やんでいます 」


「 死刑か無期か、 究極の選択をする 裁判官の苦悩を知りました 」

 複数の命を奪った 60代の被告は、 そんな感想を寄せました。

 二審の判決日が 被害者の命日に指定され、

「 裁判官の心は 最初から被害者側にあったのではないか 」 と感じ、

 判決公判を欠席しました。

「 裁判官の顔を見たくない と思う前に、

 命日を判決日に 選んだ下さった、

 心から 遺族にお詫びできる 最後の機会を与えてくださった、

 と受け取っていたら……。

 自分の狭い心が 悲しくてなりません 」

「 大きな後悔をしている 」 とも書かれていました。

「 人様を何人も 殺した自分は、 死刑以外にないと思っています。

 でも、 生きて外に出て やりたいこともあります。

( 刑が確定していない自分は )

 まだ、 どこかで 甘えているんだと思います 」

〔 読売新聞より 〕
 
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