「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

出所者雇用で孤立防げ -- 罪と罰 (4)

2011年02月28日 21時19分01秒 | 罪,裁き,償い
 
 刑務所からの出所者は 生活保護申請もなかなか受け付けられず、

 福祉施設も受け入れに消極的です。

 刑務所へ行ったのは 自分の責任と見られ、

 福祉施設は 関わるのが怖いと思っています。

 その結果、 再犯するしかない状況まで 放置されてしまいます。

 出所者の多くは 我々と異質な存在ではありません。

 日本では 家族や地域の絆が崩れ、

 高齢者の孤立や、 児童虐待、 薬物依存などの 社会問題が噴き出しました。

 それに貧困が加わり、 止むを得ず盗みを繰り返すような 出所者も増えています。

 その解決は 福祉の仕事です。

 支援に甘えて 自立できない人も出てこないかという 意見がありますが、

 ホームレスの支援でも 半数近くが自立できています。

 罪の償いは 刑を受けたことで 区切りが付いたはずで、

 出所者を差別するべきではありません。

 欧州では、 ソーシャルファーム (社会的企業) が普及しています。

 地域住民と連携して 農業や食品製造、 レジャー施設経営などが行なわれ、

 障害者や高齢者、 出所者を雇用しています。

 生活が安定してこそ、 悔い改める気持ちを持続できます。

 ソーシャルファームのような 地域のつながりの中にいれば、

 正しい生き方を 学ぶこともできます。

 罪を犯した人だからこそ、 孤立させず、 更生への努力を 続けさせるべきなのです。

〔 読売新聞より 〕
 
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再犯防止へ家族支援を -- 罪と罰 (3)

2011年02月27日 19時23分30秒 | 罪,裁き,償い
 
 刑務所出所者の4割以上が、 5年以内に再犯を起こしています。

 刑事政策は、 裁判、 刑務所、 社会復帰の各段階が

 ぶつ切れになってしまっています。

 刑罰の目的は更生だ という共通意識がなく、

 再犯の問題を 自分の責任だと考えていません。

 刑務官が 受刑者の話を ただじっくり聞くだけで、

 反抗的態度がなくなることが よくあります。

 規律と監視で抑えるだけでなく、

 「同じ高さの 目線で働きかければ 受刑者は変わる」 と 考えるべきです。

 それには 刑務官の数を増やすなど、 現場に余裕を持たせることも 重要です。
 

 仮釈放が減って、 満期出所が年々増え、 出所者の半数を超えています。

 仮釈放したくても引き受け先がなく、 そのまま満期を 迎えてしまう人が多いのです。

 そうすると 保護観察や保護司が 関わることが困難で、 再犯の可能性が高まります。

 出所者を受け入れる基盤として 最も望ましいのは家族ですが、

 難しい場合が多いのです。

 今の更生保護は、 家族にまで 目が行き届いていません。

 家族が引き受け先として 機能するよう助言したり、

 福祉サービスにつなげたりする、 家族支援を専門にできる 部署が必要です。

〔 読売新聞より 〕
 
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被害者と向き合う教育を -- 罪と罰 (2)

2011年02月26日 22時01分10秒 | 罪,裁き,償い
 
 刑の厳罰化が 進んでいると言われますが、

 被害者学会理事の諸沢英道教授は、 刑の適正化だといいます。

 日本では従来、 被害者に対する責任が 重視されず、

 欧米に比べて 刑期が短かったが、 被害者の意見が 反映されるようになりました。

 加害者の償いは、 事件直後から 被害者への謝罪に努めるべきです。

 直後ほど被害感情は峻烈で、 そこを乗り越えることに 意味があります。

 被害者参加制度により、 加害者が直接、

 被害者に 真摯な償いの意思を 伝えれば、 量刑も考慮されるでしょう。

 特に裁判員は 被告の悔悟を重視します。

 刑務所では、 被害者感情を理解させる教育が 広く行なわれるようになりましたが、

 教育を担う人材が 不足しています。

 一部の被害者遺族が 被害体験を語っていますが、

 教育できる刑務官を育てるべきです。

 「刑務作業で 規律を身に付けさせれば 社会復帰につながる」と、

 刑務所は考えています。

 しかし、 罪に向き合うとは、

 被害者と向き合うことだと 理解させなければなりますせん。
 

 被害者に手厚くするからといって、

 加害者を社会から排除する 二者択一は間違っています。

 被害者の多くは、 「また被害に遭う人が出るのが 一番つらい」 と言います。

 加害者が中傷され、 精神的・ 経済的に追い込まれると、

 出所後の居場所がなくなり、 再犯の連鎖を生みかねません。

 加害者が 犯罪と無縁の生活を 送れることが、 被害者が望むことでもあるのです。

〔 読売新聞より 〕
 
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受刑者に応じ多様な刑を -- 罪と罰 (1)

2011年02月25日 21時56分13秒 | 罪,裁き,償い
 
 読売新聞の 「罪と罰」 のシリーズで、

 刑罰はどうあるべきか についての連載です。


 初犯で服役する人は、 最初は 「ちゃんとやり直そう」 と思っても、

 刑務所では 細かい規則で縛られており、

 決められた日課を こなすだけの日々が続きます。

 他者を思いやる社会性を 身に付ける環境では ないといいます。

 ぬるま湯的で、 真の更生につなげるのは 難しいようです。

 PFI (官民共同運営) 刑務所という 試みがあります。

 受刑者を 40~50人程度のユニットに分け、

 平日の夜に ミーティングを行ないます。

 そこで受刑者は 認知行動療法に基づく アドバイスを受けたり、

 集団生活のルールについて 互いに話し合ったりします。

 従来の刑務所では、 受刑者同士のコミュニケーションを 避けてきました。

 しかしそれでは 問題解決能力が身に付きません。

 刑務所の中にも 社会と同様の環境が 必要なのです。

 それには自らを律したり 自分を見つめ直したりしなければならず、

 かえって 受刑者に厳しい面もあります。

 刑についても 懲役だけでなく、 福祉的ケアを組み合わせるなど、

 被告の特性に応じた 多様なメニューを用意すべきです。

 それには 裁判の段階で、 被告にはどのような処遇が適切か、

 ソーシャル・ワーカーなどの専門家が 被告のアセスメント (評価) をして、

 刑に反映させる仕組みが 求められます。

 裁判、 刑務所、 出所後の働きかけ。

 3つの段階が結びついて、 贖罪や更生の意識を 養えるのです。

 法制審議会は、 刑期の終盤の一部について 執行を猶予し、

 その間、社会の中で更生させる 制度案をまとめました。

 これは薬物犯に有効です。

 刑務所内での薬物防止教育だけでなく、

 社会の中で 薬物の誘惑に打ち勝つ 訓練を積むのです。

〔 読売新聞より 〕
 
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障害者  実刑回避求める

2011年02月06日 21時43分50秒 | 罪,裁き,償い
 
〔 読売新聞より 〕

 知的障害や発達障害などを持つ 被告の刑事裁判で、 弁護人と福祉関係者が連携し、

 社会での具体的な 支援計画を示して、

 実刑の回避を求める 取り組みが進んでいるそうです。

 ある20代の男性が、 女性をカッターナイフで脅し、

 財布を出させるなどして 強盗傷害罪で起訴されました。

 職場でストレスが たまっていた上に、 厳しく叱られたことが きっかけと見られ、

 犯行時は 強いショックが原因で 意識障害が起こる 解離性障害の状態でした。

 兵庫県の 相談支援センターの社会福祉士は、 男性や両親に 何度も面接し、

 親族の会社で 無理せず働かせ、 相談支援センターが相談に乗るという

 「支援計画」 を 法廷に提出しました。

 懲役7年の求刑に対し、 判決は懲役3年、 保護観察付き執行猶予5年でした。

 男性は今、 落ち着いた状態で働いています。

 懲役刑で社会から離れるより、 社会でその人に合った 適切な支援をするほうが、

 更生に効果があります。

 障害が事件を 引き起こすわけではなく、

 障害を踏まえたケアをすれば 再犯も防げます。

 長崎の社会福祉法人では、 知的障害や発達障害を持つ 被告について、

 自立訓練施設での受け入れを前提に、 執行猶予を求める 取り組みを始めました。

 弁護士や精神科医らと作る  「判定委員会」 が、

 施設で更生可能と判断すれば、 法廷に意見書を提出するのです。

 障害がある人は、 規則的な刑務所生活に 順応しやすい面もありますが、

 社会に戻る時に戸惑い、 更生に繋がらない場合もあります。

 支援計画は、 彼らにふさわしい刑を 考える助けになり、

 裁判官や検察官も 障害への理解を深める 必要があります。
 
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厳罰化  教育は手薄に -- 明日の課題 (11)

2011年01月30日 19時04分04秒 | 罪,裁き,償い
 
 89年の宮崎勤による児童連続殺害事件、 95年の地下鉄サリン事件など、

 社会を揺るがす事件が続き、 00年ごろから 厳罰化の傾向が顕著になりました。

 理不尽な凶悪犯罪の増加と、 被害者の権利を 重視する動きが 背景にあります。

 05年には、 有期刑の上限を 20年から30年に引き上げる

 改正刑法が施行されました。

 その影響もあり、 受刑者の服役期間は延び、

 刑務所の収容率も 00年に100%を超えました。

 刑務官一人で 70人を監視することが 普通になり、

 受刑者一人一人に 更生を促す余裕はなくなりました。

 05年には 監獄法が改正され、

 被害者感情を理解させるなどの 教育が導入されました。

 しかし、 長期刑の刑務所では 過剰収容が続き、

 充分な教育は 行なわれにくいのが現状です。

 連続強姦事件で 服役している男 (30) は 訴えます。

 「作業ばかりで 教育が受けられない。

 反省のない人が そのまま出所している」

「長い刑になったことで、 根本から変わろうという 気持ちになれた。

 こんな自分でも 被害者の苦しみが 書かれた本に 心を動かされた。

 国は、 長期刑を利用して、 矯正の試みをし続けてほしい」
 

 裁判員制度では、 裁判員は6割が 被告の更生を思い起こすといいます。

 それを踏まえた 犯罪者処遇の改革も必要です。

 ある教誨師は語っています。

 「更生は簡単ではない。

 100人に会う中で、 真剣に向き合ってくれる人が 1人でもいればいい。

 その積み重ねしかありません」
 
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更生願い、 加害者と対話 -- 明日の課題 (10)

2011年01月29日 19時52分37秒 | 罪,裁き,償い
 
 少年院を出た少年 (19才) は、 まじめに働くからと 新聞配達を始めましたが、

 遊び仲間だった少年4人から 暴行を受け、 死亡してしまいます。

 少年の父親は、 加害者をこの手で 殺してやると思いました。

 加害者の審判を 担当した判事は、

 「反省の言葉を聞きたい」 という 遺族の希望を聞き、

 加害者と対面させる 異例の試みに踏み切ります。

 被害者の父親は、 加害者の姿に 息子が重なりました。

 「この子だって、 少年院に行けば 変われるのではないか……」

 「心から反省ができたら、 線香を上げに来てほしい」

 「申し訳ありませんでした」

 涙声が聞こえ、 父親は苦しみが 少し和らいだ気がしました。

 しかし 願いは裏切られます。

 少年院を出た後、 その男は 強盗致傷・ 恐喝事件を 3件起こしました。

 それを知った父親の 苦悩は深まります。

 この男の弁護士は、

 「遺族への対面を 続ける努力が必要だった」 と 悔やみました。

 事件の当事者同士の対面により、

 加害者の更生と、 被害者の精神的な回復を 目指すこの手法は、

 「修復的司法」 と呼ばれ、 北欧などで制度化されています。

 日本では、 千葉県で 少年事件を対象にした 取り組みがあります。

 関係修復は 地域の安全にも繋がり、 対面した場合の 満足度は高いのですが、

 普及はしていません。

 神戸連続児童殺傷事件でも、 裁判官は 修復的司法に期待をかけました。

 「(加害者の)元少年と 遺族がいつか対面し、

 一緒に社会貢献活動や 被害者をしのぶ 活動ができないか」

 しかし 遺族の中からは 反発も出ました。

 「会えば 嫌なことを思い出す。

 彼は一生 罪を背負い続けるべきで、

 被害者の許しを目的にするのは、 加害者の立場に立つものだ」

 「むしろ 被害者感情を理解する教育を 必修にするべきだ」
 
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再犯阻止へ科学の力 -- 明日の課題 (9)

2011年01月28日 20時43分34秒 | 罪,裁き,償い
 
 刑務所での 従来の薬物離脱指導は、

 薬物の害悪を強調し、 意志の力でやめるよう 諭すものでした。

 でも依存症が進行すると、 それだけでは離脱は困難です。

 ある服役囚は、 

 「刑務所での指導は形だけ。 やめられるわけがない」 と 思っていました。

 が、 週1回の薬物離脱プログラムに 3ヶ月間参加しました。

 教材には、 薬物を使う 引き金となるような状況が書かれており、

 当てはまるものに 「○」 を付けます。

 「家に一人でいるとき」 「食事中」 など 35項目のうち、

 20以上に○が付きました。

 
 「引き金なんて 考えたこともなかった」

 「出所したら、 引き金を可能な限り 遠ざけるようにしてみよう」

 初めて 依存症から抜け出せるかもしれないと 思ったそうです。

 ただし、 プログラムを終えた時が怖い

 ということを理解するのが 大事だといいます。

 06年、 受刑中の教育が義務づけられ、

 科学的な指導方法を検討し、  「認知行動療法」 が取り入れられました。

 犯罪に走る際の 行動パターンを分析し、 回避する方法を 本人に考えさせるのです。

 性犯罪や アルコール依存症からの離脱にも 応用されています。

 刑務所を出所した ある男性は、 薬物依存者の民間自助団体の 寮に入りました。

 薬を使いたい衝動があっても、

 なぜ欲しくなるのか、 冷静になることができる と話します。

 衝動をうまく回避できる 自信が付けば、 寮を出たいと思っています。

 出所後のケアがなければ 再犯の危険は高まります。

 認知行動療法を継続できる 医療機関と連携していくことを、

 国は検討すべきといわれています。
 
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薬物法廷  処罰より治療 -- 明日の課題 (8)

2011年01月27日 21時36分19秒 | 罪,裁き,償い
 
 1980年代、 レーガン政権は 薬物犯罪に厳罰で臨みました。

 薬物依存者を大量に 刑務所へ送りましたが、

 出所後 すぐ再犯に走る者が 後を絶ちませんでした。

 そこで89年に、  「ドラッグ・コート (薬物法廷)」 が設立されました。

 比較的軽い薬物犯罪が対象で、 治療プログラムを受けることを 選択できるものです。

 ただしプログラムは 1年以上かかるため、

 迅速な裁判を受ける権利を 放棄する書面にサインが必要です。

 ドラッグ・コートを担当する判事が、 プログラム参加者に治療経過を確認します。

 刑事事件では対立する 検事や弁護士が、 ここでは全員協力し、

 薬物中毒を乗り越える 方法を探すのです。

 プログラム参加者は 週6回カウンセリングを受けます。

 抜き打ちの尿検査もあり、 とても厳しい プログラムだと言われます。

 しかし ある参加者は、 明るい表情で話します。

 「刑務所は 慣れてしまえば楽だが、 ここでは自分自身の 努力が必要。

 だからこそ変われる」

 「判事は 俺たちの成功を願ってくれる。

 自分が 役立たずじゃないことが分かった」

 プログラム終了者の再犯率は 約30%。

 参加しなかった場合は 60~80%です。

 日本でも、 被害者のいない薬物犯罪は 刑罰の対象からはずし、

 治療に委ねるべきという 議論があります。

 一方、 刑罰も維持しないと 抑止力が薄れるという人もいます。

 薬物依存者の 刑期終盤の一定期間、 刑の執行を猶予し、

 治療プログラムを義務づける 制度が検討されています。

 日本独自の  “薬物法廷” が期待されます。
 
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子供への性犯罪  前歴者を訪問 (2)

2011年01月25日 22時41分01秒 | 罪,裁き,償い
 
(前の記事からの続き)

 05年には、 性犯罪の前歴者が 出所時に法務省へ住所を伝え、

 それが警察庁に伝達されるという、  「居住地情報提供制度」 が始まっています。

 ただし 社会復帰を妨げないため、

 居住地確認の際は 周囲への聞き込みは行ないません。

 前歴者への接触は 人権的見地から控えられていましたが、

 住所把握が不充分なため、 警察庁は積極策に乗り出しました。

 再犯の危険性が 高い場合は、

 面談して 指導警告や専門医の紹介なども 行なうということです。

 その背景には、 刑務所での矯正教育の限界があります。

 06年から実施されている 矯正プログラムは、 一定の効果を上げているものの、

 依存性が高い性犯罪者は 出所後も

 性衝動を抑える訓練を 続ける必要があるといいます。

 「幼い女の子を見ると 感情が抑えられず、 無意識に近寄ってしまう」

 刑務所で 「性犯罪者処遇プログラム」 を 受けた男は、 そう告白します。

 このプログラムは 全ての性犯罪者が対象で、

 互いに犯行内容を打ち明けたり、 被害者の手記を読んだりします。

 週数回のペースで 自省を促し、 感情抑制の方法を学んだり、

 仮釈放中も 受講が義務づけられます。

 3年間で千人あまりが受講し、 効果はありますが、 再犯防止に充分ではありません。

 出所後の社会生活で、 どのような状況で 性衝動が起きるかを体験しながら、

 自己抑制を学ぶ必要があります。

 満期出所者も含めて、 継続的に性犯罪者を見守る 公的機関が創設されるべきです。

 警察による自宅訪問や面談は、 前歴者に 「見られている」 という 感覚を持たせ、

 再犯防止に 効果があると期待されます。

 しかし 出所時に住所を申告されなければ、 法務省から警察庁に提供されません。

 実際、 制度開始から5年間で、 55人が 「未定」 や 「関東方面」 など

 曖昧な申告をしたまま 行方不明になっています。

 義務化を含め、 法改正の議論が求められています。

〔 読売新聞より 〕
 
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子供への性犯罪  前歴者を訪問(1)

2011年01月24日 21時11分34秒 | 罪,裁き,償い
 
 子供を狙った 暴力的性犯罪者の出所後、

 警察署が定期的に 自宅を訪問する 制度が始まったと、

 先日の読売新聞の記事にありました。

(ただし 本人の同意が必要です。)

 アメリカでは 性犯罪者の情報を一般公開したり、

 全地球測位システム (GPS) で監視したりし、

 イギリスや韓国では 出所後の住所届出を義務づけるなど、

 強硬な姿勢を取っているということです。

 なぜ 性犯罪者だけなのか、 という問題があります。

 性犯罪は 再犯率が高いと言われます。

 考えてみるに、

 一般の人間は 窃盗や傷害などを 起こしたいという欲求は、 普通ありません。

 それに対して、 性衝動は誰もが持っています。

 他の犯罪への衝動より、 性衝動は強くて 抑えるのが難しいかもしれません。

 ただし 実際には、 覚醒剤や窃盗のほうが 再犯率は高いということです。

 また 子供への性犯罪は、

 幼い子を支配する 優越感などが忘れられず、 依存性が高くなるそうです。

 薬物やアルコールの 依存症の回復が 非常に難しいと言われるように、

 依存的な性犯罪者は 再犯率が高くなるのではないでしょうか。

 性犯罪の被害者、 特に子供の傷は、 単なる傷害や 窃盗などより深刻ですし、

 殺人などの凶悪犯より 性犯罪者は数が多い。

 いつ誰が被害に 遭わないとも限りません。

 それらの理由が、 性犯罪者を服役後も監視する 必要性になっているのでしょうか。

 しかし 再犯可能性をどう判断するかなど、

 議論は慎重に 行なわれるべきだといいます。

 僕としては、 性犯罪者に対する 矯正プログラムの充実を、 切に望むものです。

 次の記事で、 読売新聞の記事から 要約・抜粋を書かせていただきます。

〔 参考文献: 読売新聞 〕

(次の記事に続く)
 
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複数機関で協力、 監視 -- 明日の課題 (7)

2011年01月23日 20時06分07秒 | 罪,裁き,償い
 
 イギリスでは、 性犯罪などの前歴者の 再犯防止について協議する、

 「MAPPA (マッパ)」 という制度があります。

 児童への強制わいせつで 服役する男性 (43) の 仮釈放を前に、

 マッパの会議が開かれ、 警察, 保護観察官, 精神科医, 自治体の住宅課職員,

 出所者支援の市民団体メンバーたちが 一堂に会しました。

 男性のリスク (危険度) を 「3」 と判定し、

 「性犯罪防止命令」 を 裁判所に申請しました。

 住宅課の助力で、 学校から離れた場所に 住まいを見つけられました。

 その後 男性は刑期を終えて、 保護観察が解かれてからも、

 警察官や看護師が 時折男性を尋ね、

 お茶を飲みながら 近況を尋ねたり、 アドバイスをしたりします。

 リスク評価が 「1」 に下がった 男性は言います。

「被害者の傷は 一生残る。

 再犯しないように 見守ってくれるのだから 感謝している。」

 マッパでは それぞれの出席者が 意見を出し合うことで、

 異なる立場からの 理解が得られます。

 再犯を恐れる出席者が、 医師から 症状や治療までの経過を 説明されることで、

 不安が解消されたりします。

 ただ、 重い性犯罪を犯した者は、 生涯にわたって マッパの対象になることがあり、

 厳しすぎる監視だと 反発する出所者もいるといいます。

〔 読売新聞より 〕
 
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性犯罪者監視  どこまで? -- 明日の課題 (6)

2011年01月22日 21時50分19秒 | 罪,裁き,償い
 
 1994年、 ニュージャージー州で 7才のメーガン・カンカちゃんが、

 性的暴行を受けて 殺害された事件を機に、  「メーガン法」 が制定されました。

 性犯罪者の再犯を防ぐため、

 出所した性犯罪者の個人情報を 一般市民に公開するものです。

「米国は 犯罪者にもチャンスを与える国。

 でも性犯罪者は、 改善が困難という点で 特別。

 メーガン法の反対者は 悪影響を主張するが、 子供たちの被害の方が はるかに深刻。

 両親が子供を 安全に育てる権利より 重要な権利はない。」

 強姦未遂罪で服役した男性 (54) が 刑期を終えて帰宅すると、

 「ここに住むな」 などの 看板や張り紙が 30もありました。

 この男性は語りました。

 「周辺の人が 自分たちを守るため、 それに 私たちが再犯をしないために、

 必要な仕組みだと思う。

 でも妻が 近所からひどい扱いをされるのは 嫌だった」

 アメリカの多くの州には、 性犯罪者を

 全地球測位システム (GPS) で監視する  「ジェシカ法」 もあります。

 元受刑者 (52) は、 足首にGPS装置を巻いていました。

 「これを付けていると、 仕事に就くのが 極めて難しい。

 何回も性犯罪を 繰り返す人間に 限るべきではないか」

 日本では05年から、

 子供に対して 暴力的性犯罪を犯した 元受刑者の居住地情報を、

 法務省が警察に 提供する制度が始まっています。

 09年末の登録者672人のうち、 性犯罪の再犯者は99人。

 このうち19件について、 この情報が活かされました。

 ニューヨークの被害者支援団体の設立者は、 こう言い切ります。

「性犯罪の再犯率の高さ、 被害者が負う傷の 大きさを考えれば、 メーガン法は必要。

 問題は、 情報を悪用したり、 偏見を抱いたりするほうにある」

〔 読売新聞より 〕
 
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刑務所の中 「普通の生活」 -- 明日の課題 (5)

2011年01月16日 21時36分04秒 | 罪,裁き,償い
 
 「世界で一番 ぜいたくな刑務所」 と 言われる刑務所が、 ノルウェーにあります。

 個室の他、 10人1組の 「ユニット」 ごとに キッチンとリビングがあり、

 食事は ワイヤーでつながれた包丁を使って、 自分たちで作ります。

 朝のミーティング後は、 各受刑者の経歴や問題点によって、

 仕事や勉強、 自制心を養うためのプログラムなどの 日課が組まれています。

 夜はユニットに戻り、 時には刑務官も交えて 皆で夕食を取ります。

 ある受刑者は語ります。

 「この刑務所では受刑者を、 一人の人間として 尊重してくれる。

 私も他人に対して そうしたいと思うようになった」

 この刑務所の処遇方針は、

 円滑な社会復帰のため、 極力普通の生活を 送らせることです。

 厳しくすれば犯罪が少なくなる というわけではありません。

 更生が認められれば、 社会生活準備のために、

 さらに自由度の高い 解放刑務所に移ることができます。

 最初から刑務所に送らず、 街の清掃など 社会奉仕活動をさせる

 「社会内命令」 を 言い渡すケースもあります。

 その後2年間に 再犯をしたのは約20%で、 北欧の中で 最も低いといいます。

(日本でも 保護観察の対象者に、

 更生を促す 社会貢献活動を義務づける法案が 提出される見通しです。

 けれども日本では 社会の理解はまだまだで、

 活動の場を提供してもらえるか 懸念もあります。)

 ノルウェーでは、 服役態度が良く、 安全と判断されれば、

 刑期途中でも 年間30日を上限に 外出が認められます。

 強姦殺人の加害者の男も、 すでに何度も帰宅しています。

 しかし この被害者遺族は、 加害者から 謝罪の手紙が来たこともありません。

 そういう人間が 出所しては困るという 被害者の声を、

 国は重く受け止めてほしいと 訴えています。

〔 読売新聞より 〕
 
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働いて社会とつながる -- 明日の課題 (4)

2011年01月15日 21時15分25秒 | 罪,裁き,償い
 
 法務省は2006年、

 受刑者を社会に慣れさせるため  「外部通勤制度」 を導入しました。

 服役中の受刑者を、 刑務所外の民間の職場に 通勤させる制度です。

 服役して9年目の男 (43) は この制度の対象になり、

 塀の外に 歩いて出ました。

 刑務官は付いてきません。

「まだ受刑者なのに 信じられない」

 朝から商品の検品をして 夕方に帰り、 昼食時には社長と雑談もします。

 社長は 受刑者の丁寧な仕事ぶりを 誉めました。

 一方 社長の妻は、 「罪名などが分からないのは怖い。

 女性従業員とは なるべく接触させないように 気を付ける」 と 不安を口にします。

 男はこの経験から、 「この人たちのようになりたい。

 早く 家族や被害者のために働きたい」 という 気持ちになったといいます。

 08年までの10年間に、 仮釈放者の中で、

 再犯をしたり、 仮釈放が取り消されたケースは、

 無職者の場合10%で、 有職者の6倍。

 再犯防止に 就労支援が必須なのは明白です。

 ある会社社長は 刑務所で受刑者と面接し、

 二人を出所後に 雇用することを決めました。

 そのうちの一人の元受刑者 (29) は、

 就職後、 ある時 店長から尋ねられました。

 「レジ閉めもやれるか」

 服役前は 盗みを繰り返していた自分に、

 売上金の管理を 任せてくれることに驚き、 感激しました。

 接客もし、 今の目標は 主任昇任試験です。

 各地の刑務所では ハローワークなどと連携して、

 出所前から 求職活動を始めるプログラムが 06年に始まりました。

 初めは 「職を探してもらえる」 と 考えていた受刑者たちが、

 自力で探そうという 気持ちに変わります。

 その意識を持ってこそ、 社会に出て 生き直せるのです。

〔 読売新聞より 〕
 
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