もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ホルムズ海峡・機雷・地雷

2019年06月15日 | 軍事

 ホルムズ海峡におけるタンカー攻撃の詳細が、徐々に明らかとなりつつある。

 その中で、攻撃に使用されたのがリムペットマインであることが判明した。昨日は「機雷」の可能性も報道されていたが、ノルウェー船火災の写真で喫水下の被害が見られないことからロケット弾等の経空武器と思っていた。本日判明した「リムペットマイン」とは『船底に磁力などで吸着・密着させ、時限ないしは遠隔操作によって爆発させるタイプのもので、「吸着爆弾」とも呼ばれる。使用目的は機雷に類似するが、機雷のカテゴリーには含めない(ウィキペディア)』とされており管制地雷の亜種とも呼ぶべきもので、イランが発表した残存(未発火)爆発物の除去作業写真でも、喫水上の乾舷(水面上の船腹を現す)で作業している。メディアは、外信に使用されている「mine」という単語を「機雷」と訳して報道したものであろうが、事実を正しく報道するためにも一応の軍事知識を持って欲しいものである。そこで、本日は専門外であるが「機雷」の講座である。機雷は機械水雷を短縮した表現で、特殊なものを除いて航行中の船舶の喫水線下に被害を与える武器である。一般的に機雷は、敷設形態によって、係維機雷(海底の錘と索で繋がっている)、沈底機雷(海底に横たわっている)、浮遊機雷(浮流機雷とも称され、クラゲのように海面を漂う)に分類される。また、発火機構によって、触発機雷(船舶が衝突した場合に爆発)、感応機雷(船舶の雑音や地磁気の乱れによって爆発)、管制機雷(陸上等からの指令で爆発)に分けられる。しかしながら、近年の機雷は長足の進歩を遂げており、沈底機雷も敷設位置を撹乱するために敷設場所を自分で設定する自走機雷や、船舶の接近を感知して魚雷化(ロケット化するものは未だ無いようであるが)する浮上機雷もある。さらには、発火機構を目覚めさせる機構も進化しており、船舶の通過回数をカウントして一定値以上で目を開くもの、商船には反応せず軍艦のみに反応するもの、既に判っている特定の艦船(特に空母)のみに反応するもの、等々複雑で、このことが機雷防護や機雷掃海を困難にしている原因でもある。船舶に被害を与えるためには機雷を50m程度以内で爆発させることが必要であることから、昭和40年頃までは水深50m以上の海域では浮遊機雷以外の機雷に対する脅威はないというのが一般的であったが、センサー精度向上と浮上機雷の出現で、現在では水深数百メートルでも機雷の脅威があるとされている。

 昨日以来の報道で、ほとんどの解説が「攻撃は日本を狙ったものではない。」という点で一致しているのも気懸りである。安倍総理の訪問中に行われたことと、具体的・直截的は反撃が予想される米露中の関連船舶を除外していることに加え、攻撃にイランの関与が濃厚とするポンペオ国務長官の発言で最初に「(攻撃は高度の)情報活動(に基づき)」を挙げるとともに「攻撃は日本に対する侮辱」とあることを併せ考えると、攻撃は紛れもなく日本に対する「米イ関係修復に日本の仲介を望まない」というメッセージと考えるべきではないだろうか。高い情報収集と分析力に裏付けされたポンペオ国務長官の発言はもっと注視されるべきではないだろうか。