フランスの徴兵制が復活した。
徴兵制は「国民奉仕制度」と呼び、昨年マクロン大統領が提唱して法制化されたものであり、今年は試験的に実施されるものである。対象年齢は15~16歳、訓練(教育)期間は2週間で、内容は制服で集団生活し、朝の国歌斉唱・国旗掲揚に始まり、武器を使用しない軍の野外訓練や救助訓練・福祉施設での奉仕活動に従事して夜は討論会に参加、携帯電話の使用は夜の自由時間に限定するというものと報じられている。今年は任意参加であるが2千人の募集に対して5千人が応募したとされ、来年は対象者を4万人に拡大し2026年以降は制度への参加を義務化する計画であり、その場合は80万人の若年者に1800億円の経費をかける大事業となる。制度は、集団生活を通じて国民の帰属意識を高めるとともに、テロや災害に対する危機対応力の涵養とされている。昨年、マクロン大統領が構想を発表した時にも書いたことであるが、一昨年に起きたテロの際、テロ現場に居合わせた若者が老幼・婦女子に手を差し伸べることなく我先に逃げ惑っていた映像を見た大統領が、フランスの将来に不安を感じたことが大きいと非公式な情報は伝えている。この若年者の教育(教化)に「集団行動の体得」「国家への従属意識の涵養」が必要とする趣旨は欧州各国で認識されており、ドイツ・スペインでも徴兵制の復活が議論される等、広がりを見せている。日本でも引き籠り等による社会生活不適合者が急増している現状に歯止めをかけるためにも、フランスと同程度の若年者教化は必要であると思うのだが、そこまで踏み込んだ議論はなされないのは残念である。日本では若年者のみならず、枝野氏・蓮舫氏・辻元氏などは教化対象者の資格十分ではないだろうか(笑)
日本では、徴兵制が議論される場合は必ず、憲法第18条「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」との規定に関連して議論されることが多い。国家存亡の危機に際して憲法を一時停止することを「国家緊急権」として、多くの国で憲法や法律で規定しているが日本の憲法や法律では何等の規定がない。憲法学者の間でも、憲法に国家緊急権が規定されていないことについて、憲法全体の趣旨から国家緊急権が否定されているとする否認説、憲法に明文化されていなくても行使できる「不文の原理」とする容認説、緊急権規定の不在を欠陥であるする欠缺説に分かれているが、政府の公式見解は、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法での規定で国家緊急権に準じる体制を整備しているとしているので容認説に当たると思う。それ以前に、防人を苦役として忌避し、日本の独立の一翼の任を果たしている自衛官に同等の視線を注ぐ風潮は是正されるべきであると考える。