もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

立命館大学の元准教授拘束と国際刑事裁判所を学ぶ

2019年06月07日 | 社会・政治問題

 立命館大学の元准教授がアメリカ軍に拘束されていることが報じられた。

 拘束されたのはモハマド・サイフラ・オザキ氏で、IS内部でも指導的立場にありアジア地域のテロネットワークの構築や2016年のダッカテロ事件を主導した疑いもあることから、米軍は氏の供述で最高幹部の所在特定や組織の全容解明に繋がる可能性があるとみて尋問に当たっているらしい。氏はバングラディシュのヒンズー教の家庭に生まれ、日本に留学した際に日本人と結婚して日本国籍を取得するとともにイスラムに改宗したとされる。日本国内ではISとの橋渡しや戦闘員のリクルート等を行っていたらしいが、2015年に妻子ともども出国して行方を断って以降、日本の大学に職を得るほどの学識をもってIS内部で重用されたと見られている。米軍の尋問の結果、氏の「人道に対する犯罪」の疑念が高まった場合に氏の裁判や量刑はどのようになるのかと思って勉強したが深く理解できるまでに至らなかった。自分はハーグの国際刑事裁判所で審理されるのだろうと思って、国際刑事裁判所ローマ規程なるものを読んでみたが、訴追する条件は①締約国が国際刑事裁判所の検察官に事態を付託する。②国連憲章第7章に基づいて行動する安全保障理事会が国際刑事裁判所の検察官に事態を付託する。③国際刑事裁判所の検察官が捜査を開始する。とされている。氏の犯罪容疑を締約国であるアメリカが訴追すれば問題ないが、アメリカが要件に該当する他国に訴追を求めた場合、主としてISが犯罪行為を行った中東地域ではヨルダンとパレスチナ以外は条約に加盟していないため出身国が訴追を行わなければならなくなる。その場合、氏は日本とバングラディシュの2重国籍者であるが、バングラディシュはダッカテロの被害者でありながら自国にはイスラムテロの支援組織やテロ犯罪者はいないとしており、訴追はおろか身柄さえ引き取りを拒否することは明白である。その場合は、日本国籍者の入国を拒否できる法制度を持たない日本が身柄を受け入れて当事者とならざるを得ないが、氏とISの関連を立証することは略々不可能であろうと思う。また、種々の障壁を乗り越えて氏が国際刑事裁判所で審理され、最高刑である終身禁固刑に該当するとして訴追国である日本で服役する場合には、国内法に依らない刑期の服役者を国内法の監獄法(刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律)に定める刑務所に収監することに問題はないだろうかとも考える。ナチの№2とされ終身刑とされたアドルフ・ヘスは釈放されることなく93歳で獄死したが、彼だけのために刑務所ひとつを運営して莫大な費用が掛かった例もある。

 移民法によって今後外国人労働者が増えるが、その中には日本国籍(2重国籍)を得るためだけの手段として入国して来るケースも予想される。カルロス・ゴーン氏の背任容疑でも明らかになったように、2重国籍者が犯罪を犯した場合は複雑な手続きが必要となる。臭いものに蓋の考えと非難されるであろうが、2重国籍者の身柄引き取りについては拒否できる法整備も必要ではないだろうか。アメリカとイギリスでは、自国に害をなしたとして自国籍のIS妻の引き取りさえ拒否したが、この辺りが国際基準ではないだろうか。