国連難民高等弁務官事務所が、ベネズエラから難民や移民として国外脱出した国民が400万人に達したと発表した。
ベネズエラの人口は3200万人とされていたことから、国民の10%以上が出国したことになり、日本に例えれば東京都の人口が消失したことを意味する。ベネズエラ難民の多くは国境を接しているブラジル、コロンビア、ガイアナ(我々世代にはギアナ)に逃れたものと思うが、詳細を知ることはできなかった。また、国連機関が発表する数字は、ある意図をもって水増しされたものが多く、ソ連崩壊後にはロシアで数百万人の餓死者が出る可能性を示唆したり、今年の北朝鮮の食糧事情についても不足を140万トン(国連世界食糧計画:WFP)とするなど信憑性については疑問符を付けざるを得ないものである。ベネズエラ難民についてもブラジルやコロンビアから、国境地域の治安の悪化や食糧・医薬品の不足が伝えられるものの、両国でコントロール可能な規模とされているので、400万人は過大の推計としてもベネズエラ国民の流出は深刻であると思われる。更に、ベネズエラから脱出した人間は難民条約に規定(人種・宗教・国籍・政治的迫害)する難民には該当しない経済難民と捉えられているため国連機関の直接支援を受けられないことから、国際赤十字が独自の立場で半月後をめどに人道支援物資の配布を始める方針を明らかにしている。先にベネズエラ情勢については、独裁的な反米左派のマドゥロ政権と米国が後押しする反体制派のグアイド暫定大統領の対立が激化して、石油利権を巡る「米中露」代理経済戦争の様相に発展したと書いたが、ロシアが先に派遣した軍事顧問団を引き上げる等、事態は予想外の展開を見せており武力衝突・内戦突入は確実な情勢であると思う。
ベネズエラ国民の脱出は既に2013年に始まり、以後暫時増加して2016年以降急増したと推計されている。このことから国民の一般的な国外脱出を考えると、脱出は先ず少数の政治的敗者に始まり、次いで小規模の富裕層や反体制知識層がこれに続き、最終段階で一般国民が大量に脱出するものと考える。このうち、第2段階までの脱出については、国内体制の引き締めのために国家が黙認若しくは政策として行うことが多く、ベトナムやキューバで実際に採られた歴史がある。反対に全ての国民の脱出を阻止して彼等を教化しようとしたポルポト(ミャンマー)は必然的に粛清という道に進まざるを得ず国際社会から非難された。政権の統治能力欠如による最終段階の大量脱出は、国力減退と固有文化破壊を招いて、回復には長期間を要することになるのではないだろうか。