安倍総理が、昭和53年の福田赳夫首相以来41ぶりのイラン訪問に出発する。
今回のイラン訪問に関しては、メディアを中心として険悪化しているアメリカとイラン関係修復の橋渡しとして期待する声が大きい。イラン訪問に先立ち、アメリカと電話会談を行って米イ対立の原因である核廃棄や経済制裁では同一歩調を採るものの、日本独自の何らかの提案を準備しての訪問であろうと推測する。アメリカも『対イラン政策で同盟国(日本)間に隔たりはなく、対話の用意はできている』として、安倍総理のイラン訪問が米国との協調に依ると表明している。しかしながら、米イ双方が何らかの譲歩をしてまで関係修復することを望んでいないこともあり、国連安保理決議の枠に縛られる日本が提案できるのは、イラン産原油の輸入量の現状維持の他には、対立緩和後にホルムズ海峡周辺海域にイランが設置したとされる機雷掃海・航路啓開支援くらいしかないのではと考えるが、ホルムズ海峡周辺海域の緊張状態は、サウジ等の周辺諸国との軋轢によって生じたものでるために米イ仲介のための提案としては疑問である。米朝の橋渡し役を自任していた韓国の文大統領が米朝双方から梯子を外されて立ち往生したように、安倍総理にも同様の危険が考えられるが、それでも”火中の栗を拾う”かのようにイランを訪問しなければならないのは、既に兆しを見せている日本経済の減速を止めるためであろう。長期の不安定な原油供給は、直接的に物流・電力コストを押し上げて経済減速に結び付き、アベノミクスも消費税も移民法による労働力確保も働き方改革も一挙に霧消させてしまいかねないので、安倍総理においても正念場のイラン訪問であろうと同情する一方で、我々も過度の期待を抱かないようにしたいものである。
最後に、安倍総理が提案するかもしれないと書いた日本の掃海能力について。湾岸戦争後に行われたペルシャ湾掃海において、海上自衛隊は多くの体験を積み重ねるとともに幾多の教訓を得たことと思う。木造の掃海艇はFRP製の掃海艦に大型化・近代化されて掃海能力と滞洋能力を向上させるとともに掃海母艦の指揮管制機能や医療・補給・居住設備を向上させて、それまで日本沿岸での航路啓開のためにのみ整備されていた掃海態勢を海外にも展開できる能力に発展・維持させているものと思う。万が一、掃海部隊の派遣が命ぜられる場合にあっては、大いなる活躍と奮闘を期待するところである。