新聞に「独、脱平和主義」の見出しが躍った。
ドイツはこれまで、第二次大戦の後遺症から「紛争地域には殺傷兵器を送らない」という平和主義に徹してきたが、日本を除く多くの西側諸国がウクライナへの武器支援を行う現実を受けて、政策転換を余儀なくされたとされている。
国是と云っても過言ではない平和主義政策大転換の背景は、国是維持として武器供与に否定的であったシュルツ首相率いる第1与党「社会民主党」に対して、第2与党「緑の党」・第3与党「自由民主党」・最大野党「キリスト教民主同盟」が武器供与を主張、世論調査も55%が支援を肯定した結果とされている。最大野党「キリスト教民主同盟」の「首相のせいで、ドイツは国際社会で孤立している」との主張が紹介されているが、武器供与を肯定する側の共通的な認識であろうと思う。
25日にウクライナ外務省・国防省が公式ツイッターで各国からの支援に感謝する動画を公開したが、謝意を伝える31ヵ国に日本は含まれていなかった。日本は防弾チョッキや化学兵器対応用の防護マスクなどの防衛装備品の直接支援、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)・ICRC(赤十字国際委員会)を通じて総額1億ドルの生活必需品支援を行っているが、殺傷能力を持つ武器は供与していないことによるもので、日本国内の空気を読んだ在日ウクライナ大使館が「武器を提供してくれた国に対する感謝を示すためのもので、日本の支援や協力にはもちろん感謝している」とコメントしているが、30年前の湾岸戦争で戦費の大半を支払いながらクウェートから一片の謝辞も告げられなかったことの再来で、自らの手を汚さずに金で済ますことに各国は敬意を示さないということを改めて認識させられるものに思える。
今回ドイツが供与するのは「対空戦車」と通称されるゲパルト自走対空砲とされている。陸続きの欧州とは輸送や弾薬補給などの条件が異なるが、自衛隊も個人携行式の01式軽対戦車誘導弾(ATM-5:通称LMAT(ラット)&軽MAT)を約1,000セット保有しているので、方針変更すれば武器支援も可能であったと思う。
なぜに日本が武器支援できなかったかを考えると、偏に日本の平和憲法の神格化・神聖視に由来するものと思う。
日本が世界基準から離れて特異に進化することは「ガラパゴス化」と称され、携帯電話から炊飯器に至るまで本来の使用目的には不必要な付加機能で飾る文化が育っている。
憲法、特に前文の趣旨を絶対とする意識に基づく日本の外交基準・軍事常識が、世界の現状変化に顧慮することなく進化を止めていることも、ガラパゴス的と考えざるを得ないように思える。憲法前文と軌を一にする国連憲章を平然と踏みにじる常任理事国が出現した事態に対しても、ガラパゴス島から一歩も踏み出し得ない日本の政治家・知識人は、原始人的と評すべき存在ではないだろうか。
また、敗戦後の取り組みはドイツを手本とすべきとしていた一部の「ではの守」殿は、今回のドイツの方針転換を何と見ているのだろうか。