もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

安保に関する国是-3

2022年04月10日 | 防衛

 本日は、憲法についての自分の考えを纏めてみたい。

第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  ② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 第二章「戦争の放棄」は9条だけで構成されているが、憲法前文とともに日本の平和主義を象徴する項目とされている。
 大多数の国民は「平和主義」を国是と考えているが、国是とする内容は、軍事力の完全放棄から自衛力の保持許容までと幅が広く、現状は「国の防衛には自衛隊という戦力と日米安保という軍事同盟が不可欠」とする意見が大勢を占めており、関連法令もその趣旨に沿って整備されていると思っている。この現象は、偏に第②項の「前項の目的を達するため」をどのように解釈するかによって生まれているものであり、自衛隊は列国に比肩する装備を持ちながら、世界に貢献するためには活動できないという状態が続いている。閑話休題
 憲法に対する護憲派の意識は、9条を含む全ての条文は「神聖にして侵すべからず」存在であり、憲法改正を「悪」と考えているかのように思う。
 現在、世情で取り沙汰されて大学教育の無料化を例に考えると、憲法制定時には国民の大多数は義務教育の尋常小学校卒業であり、成績優秀で経済的に若干の余力がある人が高等小学校(現:中学)に進学できた。旧制中学(現:高校)や大学に進学出来たのは経済力に恵まれた、あるいは成績優秀であるために有力者の保護・援助を受けたごく一部であったように思われる。そんな時代を考えると、義務教育を無償とする憲法規定や中学校までを義務教育とする教育基本法は、夢のようであったと思う。それが今では、憲法に定める以上の高校教育を無償化し、さらに大学教育無償化を要求することにすら違和感を感じない時代になっている。
 また、憲法条文の「姓」をジェンダー概念に広めようとの主張も支持されつつあり、憲法に数字で規定されている国会議員の任期すら解釈変更で対処しようとする暴挙も報じられている。特に任期等を拡大解釈する手法は、憲法改正前のプーチンが採った手法であり、議会制民主主義の根幹をないがしろにしかねないものである。
 これらの事象は、憲法規定を時代背景に適応するように恣意的・我田引水に拡大解釈することに由来しており、憲法が時代に適合しなくなったら憲法を改正することを当然とする列国では起こり得ないものであると考える。
 自分は、憲法は厳格に順守すべきものであるが、時代にそぐわなくなったら改正に躊躇すべきではないと思っているので、護憲論者であるとともに改憲論者であると思っており、憲法を改正することなく解釈変更で対処する人は護憲ではなく「憲法無視」であると思っている。さらに、現代に生きる者の責務として、次代・後世の選択肢を狭めるべきでないとも思っている。9条を守る会の常套句に「コスタリカは軍隊を廃止した」があるが、コスタリカ憲法で軍隊を持つことを禁止したのではなく、行政手続きで常備軍を一時的に廃止したものであり、必要があればいつでも常備軍を編成できる余地を残している。これこそが憲法の神髄で、後世が「やりたいけれど憲法でやれない」ではなく「憲法ではやれるけれどもやらない」選択肢を残すべきであると思う。

 憲法9条に話を戻すと、憲法9条は独立国として不完全であると思う。条文を機械的に読めば、戦力(武力)の不保持は疑いようもなく、ましてや戦力に至らない武力など読み取ることは不可能である。さらに敵国が国際慣例に則った宣戦布告を伴う武力攻撃をしてきた場合にも、国権の発動は禁止されており宣戦布告はおろか、一切の戦闘行為は許されないと思う。
 さらに、国際的に自衛隊員は国際法上の軍人に該当しないとされていることや、外国人の救出・安全保護などの武器使用に制限があることも独立国としての世界基準に合致しないと思う。アフカ゛ン撤退作戦では、日本大使館員の同乗要請をイギリスから冷笑を以って拒絶されたこと、空港に蝟集する数多のアフガン人を尻目に日本人だけ輸送したこと等は、すべて9条に遠因があると思っている。
 自衛隊が、国内外にあって軍として存在できる憲法改正が必要と思う。
 自分の9条改正案は、九条第一項は平和規定として残し、九条二項は九条-二と条を改めて、自衛隊の存在を明確に規定することである。
 自衛権・自衛力に関する混乱の原因は、条文が国語として不完全であることに起因していると思う。もし、試験で同様の表現をすれば採点者は、恐らく「×」にするのではないだろうか。