もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

経済至上主義の終焉とプーチンの真意

2022年04月03日 | ロシア

 ロシアのウクライナ侵攻は、経済至上主義を粉砕したとの主張を知った。

 アメリカの国際問題評論家の主張するところでは、《ソ連崩壊後の西側先進国では、「各国の経済が成長すれば国際関係も円滑に動き、地理的な国境までも意義を持たなくなる」という経済至上主義が主流となったが、ウクライナ事変は「指導者の政治的野望による軍事力行使」に対しては、経済活動による結びつきなど何ほどの抑止力として働かないことを世界に示した》としている。この「政治(軍事)が経済を打ち破る現実」に目覚めた国として、氏はカナダ、ドイツ、日本を挙げているそうである。
 云われてみれば、日本を始めとする3国は、いずれも「過度な平和主義の幻想から目覚めた」様子で防衛費の増額に転じ、対GDP比でドイツ2%超・日本1.24%・カナダ増額表明となっているが、3国以外でもNATO加盟国は軒並みに増額を表明している。トランプ氏が友邦に求めた対GDP国防費2%要求に対してはドイツを筆頭に総じて冷ややかであったが、この現実を見るとトランプ氏は感覚的に近未来を正確に予測していたかのようである。
 平和は経済の繁栄によってもたらされるという思想は、その拡大・延長として「自由競争を抑制して富の平滑化(格差是正)を目指す新自由主義排斥」に成長して左翼的識者から世界平和のアプローチとして魅力的に語られていたが、「命あっての物種」の現実を突きつけられると急速に輝きを失ったように思える。

 プーチンのウクライナ侵攻の真意はいろいろと分析されるが、今一つ納得できない。
 軍事的には、かって艦載砲の射程を領海幅とし3海里(約5㎞)から12海里(約18㎞)に拡幅したが、攻撃武器がミサイルとなった現在では、プーチンの主張するようにウクライナ全土を非武装・中立緩衝地帯としてもモスクワがミサイルの射程外となることはない。また、ベラルーシ側からキエフ(キーウ)を窺う行動と並行してマリウポリ等のアゾフ海回廊を攻撃しているが、この作戦が功を奏して回廊を手中にしたとしても、黒海はもとよりアゾフ海すらロシアの内海とすることはできない。
 識者から笑われるだろうが、ウクライナ市民をシベリアに強制移住させたとの報道から、豊かになった国民が都市に集中して生じたシベリア地域過疎化対策として大東亜戦争後の日本人強制労働を企図したもの、ウクライナという穀倉地帯を手中にして1930年代のホロドモール簒奪を企図した食料対策であるかも知れない。
 専門家であってもプーチンの真意は計り知れないものか、ここにきてプーチンの甲状腺機能障害による常軌を逸した攻撃症状なる説も語られるようになったが、打算的でない行動は狂人の行動と観るしかないのであろうか。