台湾が現在配備している巡航ミサイル「雄風2E]の射程600㎞を1200㎞まで延伸することが報じられた。
射程600㎞は、自領の金門島に対する通常火砲攻撃に対処するために火砲部隊(前進基地)への攻撃・反撃を念頭に置いていたものと推測するが、上海までも射程内に収める新型ミサイルでは、後方の指揮管制機能(司令部)や火砲部隊への補給基地を含む「策源地」まで攻撃できることを中国に伝えるものの、射程を北京までは届かない1200㎞に留めるところに台湾の真意を込めているのだろうとも思っている。
新型ミサイル開発計画の情報は、台湾当局高官が新聞取材に回答し、立法院国防委員会所属の与党議員がフェイスブックで明らかにしたものとされるが、国防部はこれらの情報を公開していないことから、台湾の意図的・政治的なリークである可能性が高いものの、性能・要目・配備数に関する情報を公開することは、利敵行為であると云う軍事常識が共有されているものと思う。
自民党の安全保障調査会が、国家安保戦略(NSS)等戦略3文書に対する提言として「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と変更するとともに、攻撃対象についても(後方)司令部を含む「指揮統制機能等を含む」に変更することを求める内容を纏めたことも報じられた。残念ながらこちらの方は、これからの国会論戦の過程で順次明らかにされるとともに、反撃の詳細まで語り尽くされることになるのだろう。
過去には、戦闘機の増槽を撤去したり空中給油機能を取り外して航続距離を短縮した例があり、装備の全能発揮ができないようにすることが専守防衛にかなうという神話があった。また、国民の知る権利という名分から、配備の詳細・全容まで公表することが当然とされてきたので、敵国はスパイ活動などしなくても、国会中継を見るだけで自衛隊戦力の全貌と限界を知ることができ、作戦計画を作成することができただろうと思っている。
ウクライナの悲惨な戦闘の状態を見ると、敵基地攻撃(反撃)能力を持たない軍では国土の防衛に限界があることを示しているように思える。
古来「攻撃は最大の防御」とされているように、専守防衛ではあっても武力侵攻の意図を挫くためには効果的な反撃能力を保有することは必要であり、反撃能力の全てを公開することは敵を利するだけであるように思う。国民が「知らないと」+「ブレーキを踏まないと」=「軍(自衛隊)が暴走する」という数式は、60年以上もポリティカル・コントロールが機能し、定着した今では「お蔵入り」させるべきものと思っている。
自公政権であれ、立民政権であれ、政府と軍(自衛隊)を信頼し、軍機(軍事機密)維持を有り得べきものと尊重しない限り、効果的な防衛は成り立たないように思う。