もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

イスラエルの一面を知る

2022年04月26日 | 歴史

 数次にわたる中東戦争で近隣国に配備されたソ連(ロシア)製武器と対峙した経験を持つイスラエルが、ウクライナへの武器供与や経済制裁に消極的である原因の一端を知った。

 イスラエル・ウクライナ両国は共にユダヤ人が中核をなす国であるにも拘わらず、イスラエルがウクライナ事変に人道支援以上の行動に踏み切らないことを疑問に思っていたが、イスラエルには「傍観せざるを得ない事情」があるらしい。
 イスラエルには、ソ連崩壊前の1990年代以降にソ連(ロシア)政府のユダヤ人移住解禁を受けて移住し、ロシア語を(も)話す国民が全人口(900万)の15%近くを占めており、ロシアに親類縁者を持つ国民・政治家も多く、彼らに配慮するためにも人道支援以上には躊躇せざるを得ないらしい。
 また、隣国シリアに存在するシーア派軍事組織に対してイスラエルが行う報復爆撃についても、シリアの制空権を握るロシアが黙認しているという実情から、直ちに反ロシア&ウクライナ支援という西側には全面的に同調できないともされている。
 イスラエルの「アイアン・ドーム」迎撃システムを基幹とする防空能力は高い評価を受けており、近距離ミサイルに対しては90%超の撃墜率を示しているとされるので、ウクライナにとっては供与を渇望するシステムである。もしウクライナがアイアン・ドームを手にすることができれば、ロシアの攻撃力を半減若しくは無力化することが可能で、ゼレンスキー大統領もイスラエル国会に向けた演説で供与を迫ったが、イスラエルは供与の姿勢を見せていない。

 以前に、イスラエルの政党と議員構成を調べた時にパレスチナ支援・同化を主張する政党が議席を得ていること、コロナワクチンの接種を開発国の米英と同時に開始できたことから、イスラエルの不可思議さと全世界に張り巡らされているであろうユダヤ人ネットワークに驚いたが、イスラエル国内のロシア系ユダヤ人の比率とウクライナ事変対応を見ると、単純に「イスラエル=親米一色」という見方は改めなければならないようである。
 単一民族国家と捉えていたイスラエルも、国民の出自によって必ずしも一枚岩では無いことを念頭に置いてイスラエルの外交・軍事を見₉れば、「核保有」が核大国の思惑・利害で国土を失う恐れを予防する意味からであろうことが理解できる。
 独自外交・独自防衛は、核大国の恫喝に対しても反撃の核兵器を持たなければ達成できないのかもしれない。